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第83話 桜が咲くたび、君に戻る

レンとノアールのコンサート当日。


ルミエールたちは、ノアールから用意されたチケットを手に会場へ向かいます。


華やかな桜のステージの中で、ルミエールはノアールの姿を見つめます。

コンサート会場の前は、開演前から多くの人でにぎわっていた。


「レン様、今日も絶対かっこいいよね」


「映画の曲、ライブで聴けるんだよね」


「レンとノアール、映画の中では本当にお似合いだったよね」


そんな声が、あちこちから聞こえてくる。


人の流れの中で、ルミエールとソレイユは、ブランシュとショコラの姿を見つけた。


「こんにちは」


「こんにちは。お久しぶり。元気にしていた?」


「はい」


短く言葉を交わし、四人はそのまま会場の中へ入った。


ノアールが用意してくれた席は、前の方ではあったが、通路側の端だった。


中央ではないが、ステージは十分によく見える。


席へ向かう途中、ルミエールは少し離れたところに海斗と凛の姿を見つけた。


二人は一緒に来ていた。


けれど、最初に会った時のような穏やかな空気ではなかった。


凛はドラマ撮影の時に見たような、少し機嫌の悪い顔つきをしている。


海斗もどこか気まずそうだった。


それでも二人は隣同士に座り、前を向いた。


ルミエールの胸に、またアンナの言葉が浮かぶ。


ノアール。


レン。


海斗。


凛。


ただの噂だと思いたい。


けれど、こうして名前の揃う場所に来ると、胸の奥の引っかかりは消えなかった。


やがて会場の照明が落ち、ざわめきが静まっていく。


背面の大きな液晶モニターに映し出されたのは、夕暮れの川沿いだった。


満開の桜が水辺を囲み、遠くには橋が見える。


花びらを思わせるコンピューターグラフィックがふわりと舞い、床にも淡い桜の光が広がっていく。


制作発表会の時より、ずっと豪華だった。


まるで映画の世界が、そのままステージの上に現れたようだった。


最初に響いたのは、ノアールの声だった。


“I knew that voice

before I knew your name

spring caught fire

nothing stayed the same”


透明なのに、まっすぐ届く声。


桜色の光の中で、その英語のフレーズが静かに広がっていく。


そのあと、レンが歌う。


「最初に好きになったのは

君の声だった」


少し低めの声が加わった瞬間、会場の空気が変わった。


ノアールが続ける。


「春の光より先に

心が動いた」


映画の中の二人が、そのまま目の前に立っているようだった。


背面モニターには、川沿いの桜、夕暮れの空、流れる花びら。


足元のプロジェクションマッピングも、曲に合わせて花びらの輪を描いていく。


二人の声が重なるたびに、会場は少しずつ引き込まれていった。


「桜が咲くたび

君が戻る

何度季節が巡っても

ここに戻る」


サビに入ると、花びらの光がいっそう強くなる。


レンとノアールは向かい合うように歌い、また並んで前を向く。


甘くなりすぎず、けれど距離の近さがはっきりと伝わる歌い方だった。


ルミエールは、ステージの上のノアールを見つめていた。


綺麗だった。


本当に、綺麗だった。


それでも胸の奥に残る小さな違和感だけは、消えなかった。


曲は、最後のフレーズまで美しく流れていった。


“under sakura light…”


“still choosing you…”


長めのインストが余韻を残し、会場は大きな拍手に包まれる。


レンとノアールが並んで一礼する。


そのあと、ノアールがステージ奥へ下がろうとした時だった。


ルミエールには、ノアールの足元で何かが淡く揺れたように見えた。


光の残り。


それとも、演出。


次の瞬間には、もう何もなかった。


気のせいかもしれない。


そう思った時、桜色だったステージの光が、ゆっくりと落ちていく。


会場の空気が、少しずつ変わり始めた。


次の曲が始まる。

レンとノアールのコンサート第一夜。


最初の曲は、映画の主題歌「桜が咲くたび、君に戻る」でした。


桜色の美しいステージの中で、ルミエールはノアールの歌を見つめます。


こちらの曲はMVも公開しています。


桜が咲くたび、君に戻る – Noir & Ren|黒猫ノアールのステラ☆シンフォニー MV

https://youtu.be/K7rL4IqX088


けれど、その美しさの奥に、小さな違和感が残りました。


次回は、空気が一変するもう一つのデュエット曲へ進みます。

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