第2話 : 暗殺者
その日から国は色々と慌ただしくなった。
城壁の強化、門番の育成、増える戦闘職希望者や、防具、装備を買いあさる貴族、そして弟に当然始まった勇者になる為の育成トレーニング。どうせ俺のがなると思ってて鷹をくくってたんだろう。弟の腹は締りのないものになっている。今から勇者になる為には相当きつい思いをしなければならないだろう。ざまあみろ。
ナイルはと言うと、歩けるようになった時から無理矢理、剣を握らされ、武道、医療、学問をたたきこまれた。イキナリで変な知恵が無い分、体はおとなしくそれを吸収し自分のものにしていった。大体なんでもこなしたが魔法だけがどうしても使えなかった。使えると言っても火焔弾を手から出すくらいで魔力切れでヘタレこんでしまう位でこれは訓練してもどうにもならなかった。
まぁ、そんなもの今はどうでもいい。
俺は暗殺者なんだ。魔法の技もあるが別にそこまで魔力必要としないものなので大丈夫だ。成長してから何故か魔力だけは凄い増えた。ただ魔法はコントロール出来ないので撃てないのだが。例えるなら、水中で長い時間息を止めれても泳げないようなものだ。
基本、暗殺者はナイフ、弓を使ったり場合によっては剣も使う。俺は小さい頃から剣を降ってきたのでそこら辺の騎士よりは腕はたつ。最初は勇者職から転換したからLv1の暗殺者。故に国周辺の魔物を寝る間も惜しんで狩りまくっていた。
途中通りすがりの国民に石などを投げられたが暗殺者は防御より回避に優れているため全て避け瞬時に詰め寄り剣を首元につきつけたりしてたらちょっかいを出してこなくなった。腰抜け共め。
しかし腹が立つ。俺が生まれた時には次代の勇者だと適正最高値だのと、はやし立てたくせに。
まぁ、当然そんな事をしているナイルを父親は許すはずも無く家には入れない。(そんな事をしなくても毛頭入れてくれそうな雰囲気では無かったのだが。)よって野宿するのだが魔物が襲ってくる。結果寝たくても朝まで魔物を討伐するハメになるので嫌でもレベルは上がっていく。食事は魔物の肉。風呂は貯めた雨水。昼夜ほぼ休むこと無く魔物を狩り続ける。そんな生活をナイルは16歳から4年間。続けたのだった。
それは酷く。〝苦しい〟の3文字で終わらそうにも終わらせないような苦痛。国の中で呑気に飯を食っているやつらには分からない苦痛。...憎い。
ーードクンーー
この時ナイルの心臓が一際大きく鳴ったのだがナイルは気付かないのであった。
そして迎えた成人式。国王からの直々に挨拶の元就いた職が完全に決まる。
成長して適正値が75%を越えていたらその職を続けれる事が出来る。しかし越えていないと強制的に一般職になってしまうのである。
国王の横にいる現勇者(父親)はこちらを鋭く睨んだがすぐに何故かニヤリと口角を上げた。
ま、おおかた予想は付くのだが。
そして適正値検査は俺の番。すると待っていたかのように立ち上がる父親
「ふふふ。ナイルよ。お前は知らなかっただろう。」
父親が王の許可を得て話し出す。
「お前は小さい頃から剣をやってきた...故に魔物も正面から剣で斬り伏せて来たんだろう!?これはだがこれは暗殺職!!そんな方法では適正値は下がっていく一方なのだ!!影から忍び寄り、時には影になり、相手に気付かれないまま倒す。非道な手を使い倒していかないとなれないのだ!!」
頑張って数少ない資料を探したのだろう。暗殺職はほぼ、世に出回らない。しかも暗殺者自体も滅多に姿を現さない。そんな中で調べあげた父親が得意げに言う。
『ピピ...ナイルーー適正値ー測定しますー』
「ふはは!!お前は一生農家暮らしだ!!」
『勇者職ーー適正値ーー12%』
「ふはh.......え?。」
『暗殺職ーー適正値ーー99%』
「.............!!??」
予想通りである。
「ん〜よーし、決まったな!...んなもん知ってるに決まってるだろ?剣で斬り伏せてたのは最初の1年の経験値稼ぐ時だけ。あらかたスキルを取ったらあとは暗殺者としての技を鍛えまくったよ。影に潜ったり、わざわざ正面から倒せる魔物を裏から刺したり。苦行だったなぁ」
父親は膝から崩れ落ちる。
「ばか...な...。」
「んじゃ、俺は別の国に拠点作って魔物狩りに行ってくるわ!この国にはもう戻らないだろうな、今までありがとな!勇者は弟に頑張れって言っといてくれ!んじゃ!!」
〝ありがとう〟なんて全く思ってはいないけど。
産まれた瞬間に一生を決めつけた親など慕ってすらいない。でも上辺だけでも言っておく。相手を少しでも油断させるのも暗殺者の嗜みだと思うし。
そしてナイルは黒いローブを大袈裟にばさつかせそのまま闇に消えていったのだった。
適正値99%
Lv.87
勇者を生み出す国から恐らくこの世界の、どの暗殺者より優れている暗殺者が魔王を倒す旅に出たのだった。




