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勇者一家の長男は暗殺者に職業転換したようで!?  作者: 黒嶺 夜
第2章〜地炎龍討伐〜
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第28話 : フェアルの心情

「さぁ!着いたわよ!」


3人が着いたのは街の東端、初心者が行けるレベルの洞窟ダンジョンなのだがもう魔物が弱過ぎて誰も行かなくなってしまい、次第に魔物もいなくなり(移動したと言われている)ほぼ稼働しているかどうか分からなくなっている所だ。


「まぁ...初戦にしては妥当な洞窟ダンジョンだよな。」


「我の力試しには足りなすぎるのだ」


「力試しじゃねぇよ。コンビネーションだ。...まぁ俺も最初はこーゆー洞窟ダンジョンが良かったな...。」


「同感...。」


うなだれる2人にフェアルは首を傾げる


「...まぁ!!気を取り直して!サクッと攻略して、連携攻撃とか練習しよーぜ!地炎龍イフリートと対峙まであと5日...!みっちり練習だぞ!」


「気合い入ってるのだ。まぁ、ここでそんな練習出来るかわからないのだ...。」


「うっせ!つべこべ言うなロリっ娘!入るぞ!」


「だ!れ!が!ロリっ娘だ!誰が!小僧こそ足を引っ張るな!なのだ!」


「撃つわよ?」


「「ごめんなさい。」」


会話のコンビネーションはしっかり上手くなった3人は戦闘のコンビネーションを鍛えるべく

初級の初級の洞窟ダンジョンに入ったのだった。



⑅ ◌ ⑅ ◌ ⑅ ◌ ⑅ ◌ ⑅ ◌ ⑅ ◌ ⑅ ◌ ⑅ ◌ ⑅ ◌ ⑅



「魔物!獣型だ!行くぞ!!」


「マホリープ!」

「スキル!投刀っ!」

「スキル!クロスショット!!」


俺が警戒網を張り、範囲に入った敵を感知したらフェアルがいきなり魔法で寝かせ、俺がナイフを足に投げ、動きを止めた所をレイが止めを刺す...

即興で考えたにしてはなかなかだと思う。

ぶっちゃけフェアルのマホリープで完全に寝てくれたら俺は要らないんだが、なんせあれは対人用...魔物に使うとほんの1、2秒寝るかどうか。

まぁその時にレイに撃ってもらえばいいんだが、俺のナイフは、まぁ保険って感じかな


「ふっふーん!どうなのだ!我のこの詠唱速度!検知に引っかかった瞬間撃てるのだ!」


ロリっ娘がまた何か言ってるのか。てかお前の魔法が対魔物ならそこで終わるのに何故無駄に対人用なのか。...まぁそんな事口に出したら結局レイに撃たれる未来しか見えないし言わないけど。俺、大人だし。


「...なんかナイルがムカつく顔してるのだ。」


まぁ俺は大人だからな。こんな子供の安い、見え透いた挑発には乗らない。大人だからな。


「何にニヤけてるのだ...はっ!まさか我の足を見て欲情を!?へ、変態なのだ...」


フェアルかスカートの裾を掴みその場に座り足を隠す


だれが、15歳とか5歳も離れた子供の足を見て興奮するかよ。そりゃまぁ15歳には見えないしスタイル良いけど俺のロリコンじゃないんだよロリっ娘。まぁこれも黙って聞き流してやるか...大人だしな。


「小僧の小僧がある場所なんか膨らんでないのだ?」


「膨らんでねぇよ!!ってかお前なんなんだよ!!!ちょいちょい喧嘩売ったり、イキナリ下ネタぶち込んできたり!?もしかしてロリっ娘、怖いのか!?この洞窟ダンジョンが怖いからか!?」


「なっ!怖いわけないのだ!!暗いし魔物出なくなって静かだからちょっと、こわ.....くはないのだ!!てか誰がロリっ娘なのだ!!」


「じゃあなんなんだよ。」


「そ、それは.....信用を...いや。何でもないのだ!うるさいのだロリコン!」


「...なんて...?ってロリコンっていつからだよ!いつから俺がロリコンになったんだよ!」


ガンガンッ!!

静かな洞窟に響く鈍い2つの音


「「...いっつぅ!!!?」」


「しっ!静かに2人とも。何かいるわ」


「いや、レイさん。そのおでこに当たり前のように撃つのやめてもらえませんかね!?てか静かにって銃声は静かだけど俺達に当たった時の音とか結構大きかったですけど!」


「そうなのだ!さっきのはこの小僧しか悪くないのだ!」


「どう解釈したらそうなるんだよ!」


フェアルとナイルはまたお決まりの口喧嘩を...するつもりだった。流れ的に始まると思っていた。


ーーが、それを遮る圧倒的殺気を肌で感じる。

初級の初級と言われる洞窟ダンジョンで感じるとてつもない殺気。それはかの魔猿を越える物だった。

3人は何を言うまでもなくその場に静かにしゃがむ。ナイルは流れるように2人に隠密スキルを施す。


「おい...。こりゃどういう事だ?場所に似つかないってレベルじゃねぇぞ。」


「...わかんないけどこの殺気は本物。何かこの洞窟にいるわ。」


「姿はまだ見えないのだ。小僧の検知にも引っかかって無いみたいなのだ...。結構な距離離れているのに、この殺気をこんなに感じる...。嫌な予感がするのだ。」


3人はそれぞれ持っている武器を握る手に力を入れる。


ナイルの首筋に冷たい汗が流れる。今まで経験したことの無い殺気に少し震える


「ナイル、大丈夫?暗殺職だけでキツそうなら2種職ドゥメティエの発動の準備お願いね」


「ふ、ふるるるえててているのか??こぞ、小僧!なさ、なさけないn...なっ!なのだ!」


「お前には言われたくねぇよ。」


いつもはうるさい挑発だが今は少し恐怖が薄れて助かる。戸惑っているのは俺だけじゃなさそうだ.......って.....


「レ、レイはあんまり怖がってる素振りないな? ...?もしかして結構無理してる??」


「ううん?怖いし、震えてる。.....けど」


「...けど?」


「魔猿の時みたいに1人じゃないし!今はナイルもフェアルちゃんもいる!少し安心してるんだよっ」


なんてレイは少し照れながら言う。

そう!これが女の子!これを可愛いって言うんだよな!

もう天使!神の使い...いや、神だよ!


.....まぁ魔王の娘なわけなんだけど。


ナイルがこの緊迫した状況で咲く一輪の花に気を紛らわせていると横から何か聞こえてくる。


「むむ!その魔猿というのは前話していたやつのことか!!小僧が助けてくれたという!」


「そうそう!あの時逃げずに崖を降りてきて助けてくれたの!」


おぉ!レイさんそんな嬉しそうに話してくれて...!いやー、もうその笑顔だけで助けたかいがあったってもんですよ!


「まぁ、我がその場にいたら崖の上から安全に倒せるのだ。」


「マジで何なんだよお前!!!?」


ガガンッッ!!


「「っっ!!!!!?」」


「静かにって言ったでしょ!ほら行くよ」


「お、隠密スキルかかってるからって少し強めに撃たないでよ...っー!いてぇ...!」


「ナ、ナイルのせいでおでこの防御ステータスだけ他より上がりそうなのだ!」


俺のせいなのかよ!?

...とまぁ言いはしないが心の中でツッコむ


「...っ!殺気が強まった!近付いてるぞ。なるべく物音を立てるなよ...行くぞ!」


3人は中腰で静かに洞窟ダンジョンを進む。

幸い魔物は全く出てこない。

もしかしたらこの殺気のせいで1体も居ないのではとナイルは考える。

なるべく早く検知にかけ、突然のハプニングに耐えれるよう警戒網を最大まで伸ばす。

殺気が一層濃くなる。3人は気を引き締め咄嗟の対応を取rーーーーーーー



ーー刹那、爆音と共に強烈な痛みが体に走る。

思考が追いつかない。理解ができない。

置かれている状況を把握できない。


ナイルは一瞬フェアルとレイの2人を捕捉する。

.....飛んでいる.....!!地面に足がついていない。

なぜ飛んでいるか分からないが、ナイルは咄嗟に2人に向かって叫ぶ。


「各自っ!防御壁を自分にかけろ!!!!.......っ!!!地面と激突するぞ!!!!!!」


横から聞こえる叫びに我に帰った2人は咄嗟に壁を張る。3人は地面に強く激突したが幸いそこまでのダメージを負ってはいない。


「っ!ケホッ...!なんなの!?何が起きたの!?」


「う...くっ!あと1秒でも壁を張るのが遅れていたら全身複雑骨折だったのだ...っ!」


「みんな、ギリ間に合ったみたいだな...!どうやら吹き飛ばされたみたいだ...!と、とりあえず状況を確認しy...」


確認しよう。一旦距離を取るぞ。

そう言おうとしてやめる。


確認はもうしなくても〝それ〟は目の前に居たから。

距離を取ろうとしても、もう〝それ〟は3人を完全に捕捉しており逃げれるような雰囲気ではなかったから。


「なに...あれ.....!?」


レイが驚き、目を見開く。

〝それ〟は黒く、禍々しい息を中央の大きな口から吐いている。

大きさは縦約4m強、横約8m位だろうか。

体色は濃い緑、体は透けており中で気泡のような物が浮いている。見た目は楕円形でゼリーような体をうねらせ移動している。体に触れた岩が音を立て溶けていく。


「あれは.....スライ...ム!!?」



スライム


・最弱種と言われる魔物の中の1種で個々の力が弱いのに単体で行動する知能の薄い魔物


・斬られると分裂し増えるという事もなく一撃で絶命する耐久力


・そのゼリーのような体は薬用に使われる事が多く経験値というより素材として狩られる事が多い。



「...俺の知ってる...スライムじゃねぇぞ。」


ナイルはその〝スライム〟に恐怖する。何故なら目の前にいる〝スライム〟は通常の、ごく一般的に見られるスライムと比べ体長、体積は数10倍。そして他の魔物より強い圧迫感に加え何に対してか凄まじい殺気。想像の範疇を超越していた。


「お、おい。今の所すぐに襲ってきそうな感じはしない、退いてから作戦を立てるぞ」


「そうね...ぶっつけ本番には分が悪すぎる相手ね...」


「よし。退くぞフェアル!お前も早く!」


ナイルが固まっているフェアルに声をかける。がフェアルは応答しない


「おい!何してる!ビビってんのか!?ここじゃ洒落になんねぇぞ!!」


ナイルが後ろに退かせようとフェアルに近づく。フェアルは震えていた。.....が。それは恐怖での震えではなくーー


「っ!フェアル.....?」


ーー殺気。フェアルは目の前の〝スライム〟に対して殺気を放っていた。しかしその殺気には恨み憎しみ、怒りが混ざっているような、酷く汚い気だった。


「おい、どうしたんだよ!おい!」


「.....うるさいのだ.....離れるのだ...。コイツは...コイツだけは我の手で葬るのだ...!!!」


フェアルは静かに、冷たく言い放つ。


「何言ってるんだ!どっちにしろ一旦逃げるぞ!体制を立て直すんだ!」


ナイルがフェアルの腕をつかみ引っ張ろうとする。


「はなっ!話すのだ!!お前達2人だけ逃げればいいのだ!じゃないtーー」


2人がもめている所に〝スライム〟が口から紫色のゼリー状の何かを飛ばす。

2人は瞬時に避け、武器を持つ手に力を入れる。


「攻撃...してきたのか。あれは...毒?酸?俺らがいた所が溶けてやがる...!」


「...っ!!攻撃してくるに決まってるのだ!あれは強力な酸なのだ!分かったらいいから逃げるのだ!!」


フェアルは突き放すようにそう言うと杖を握り〝スライム〟に向かって走る。


「お、おい!!?フェアル!!?待て!1人で行くな!!」


ナイルが止めようと声をかけるがフェアルは止まらない。殺気をもって〝スライム〟へ向かう


「マホリープ!マホリープ!マホリープ!」


フェアルは対人用睡眠魔法を連続で放つ。

しかし〝スライム〟は平然とそれを受け何事も無かったのように体をうねらせる。


「...っ!なら!スキル!ロックトラップ!」


スキルの放たれた範囲の岩が剣山のように鋭く何本も突き出る。その範囲は〝スライム〟の真下。

突き出した何本もの鋭い岩は〝スライム〟を貫通する。体の破片があたりに飛び散り、周りの岩を溶かしていく。〝スライム〟に元の大きさはもうない。飛び散った破片は地面にボトボトと落ちていく。


ーーーが。

生命反応は消えてはいなかった。普通のスライムならとっくに死んでいる。

生きているか死んでいるかなんて、別にそういうのが判断できるスキルなど無いが生きている事が確信できるほどの存在感が、飛び散った破片それぞれから滲み出ていた。


「まだ生きてるの!?...それなら!!」


フェアルは飛び散った破片にスキルを唱える


「スキルっ!クレーターハンプ!!」


スキルの放たれた場所、破片のある場所の岩が円筒状にくり抜かれ、そこに破片が落ちる。そして同じ形の岩が円筒状の穴の中に勢いよく入る。


「潰れて死ぬのだ。」


フェアルは冷たく言い放つ。

何かこの〝スライム〟と因縁でもあるのだろうか。他の魔物に対する反応とは違いすぎる。


「...他の破片もやっておくのだ...。」


フェアルはそう言うと散らばった破片に同じようにスキルを放っていく

すると突然破片から濃い紫色の煙が吹き出す。


「っ!?こんなの見た事ないのだ!」


「フェアル!離れてろ!レイ!頼んだ!」


「任せてっ!!」


レイはそう言うと銃を煙に向かって構え、スキルを放つ


「スキル!空弾撃エアーズショット!!」


無弾で空気を圧縮し、飛ばすスキル。

飛ばされた空気は煙を後方へと吹き飛ばす


「何なんだろうなあの煙は...」


「酸の煙とか?」


「でも、攻撃にしては狙ってこなかった気が.....ん?何か煙が集まってるのだ?」


「お?なんか潰れた破片とかが無くなってるぞ!?」


「凄く...嫌な予感がするのだ。」


「ど、同感よ」


濃い紫色の煙は破片から出ていたが次第にその破片すらも煙となって1ヶ所へ集まっていく。

潰れた破片も煙になり集まる。次第に全ての破片が濃い紫色の煙となり1ヶ所に密集する。

そしてーーー


「な...!?嘘だろ!」


「想像以上に面倒そうなのだ...。」


「きりがないわね...。」


ーー集まった煙は次第に個体になっていき、元の〝スライム〟へと変貌する。

切り刻んで、叩き潰しても破片は気体となりそして集まり個体に変わる。

スライムの生命力...否、魔物としての生命力を超越していた。


「触れば酸で溶け、かと言って斬るも打撃も撃つのも効かねぇ...。」


「ここはもう、フェアルちゃんの出番ね!」


任せたと言わんばかりにレイが明るく言う。


「おお!そうか!魔法で一掃するのか!初めて見るな!フェアルの属性魔法!」


2人は突破口が見つかったと喜ぶ。...がフェアルは重苦しい顔でポツリと一言こぼす。


「属性魔法は.....人前では使いたくないのだ。」


「「...............え?」」


目の前の現状にも今後の討伐にも、影響を及ぼすような問題が今、発生したのだった。

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