番外編 吸血鬼の過去
本編との関わりが薄いため、番外編に変更しました。
最強吸血鬼アルトゥーレ・ルシファー。
俺はかつて人間だった。
永遠の命を求めた人の果て。
あるいはその残骸。
それが自分であるらしい。
らしいというのも、自分にはすでに人だった頃の記憶はない。
だから、自分は最初に彼女のことを見たとき美しいとは思わなかった。比較対象が無いから。
全吸血鬼の真祖にしてルシファーの称号を持つ少女、雪姫・ルシファー。
自分を吸血鬼にした者。
「おはよう、うんん、はじめまして、だね、よろしく!
わたしは雪姫、ユキでいいよ」
彼女は俺に「アルトゥーレ」という名を与えた。
正直、発音しにくいし、どういうネーミングセンスしているのか彼女の感性を疑った。
だが不思議なもので、それでもしばらくその名を使っていると、自然と愛着がわいた。
吸血鬼には「吸血」という他の種族にはない能力があった。
これは相手の血を吸うことで、その魔力と魔法の知識を手に入れることができる能力である。
つまり、強い相手から吸えば吸うだけ強くなれるのだ。
暗黒騎士バロンの「魔剣創造」
大賢者セイロンの「超解析」
不死王ローゼの「瞬間再生」……
俺は次々に戦い、そのたびに強くなった。
その結果、彼女に挑んだのは当然の流れだと言えるだろう。
俺は自分の親にあたるはずの少女、雪姫・ルシファーに戦いを挑んだ。
彼女は一言、「やっぱり、こうなっちゃったか」とさびしそうにつぶやいた。
そして始まる激しい戦い。
やはり彼女は強かった。そして、美しかった。
俺はそのとき初めて彼女を美しいと感じた。
戦いは終わった。
俺の剣が彼女の白雪の肌を赤く染める。
その瞬間、俺は吸血鬼アルトゥーレから、最強吸血鬼アルトゥーレ・ルシファーになった。
元最強は、死にぎわに言った、
「強くなったね、
でも残念、わたしは最強になったあなたを見ることができないみたいごめんね、
――約束を果たせなくて」
彼女が最後に言った名がどうやら人間だった頃の俺の名であるらしい。
満たされない、最強になったというのに。
俺には最強という称号だけが残された。
そして俺はこの魔界の支配者、魔王に挑んだ。
俺は満たされぬこの餓えのような感情を捨てるために。
魔王は言った。
「いいぜ、相手してやるよ、
ただし、うちの娘、ドラグニアから1週間以内に『参った』と言わせてみろよ、
そしたら相手してやるぜ」
簡単な条件だった。
彼の前に現れた少女、ドラグニア・ランフォード。
それが、彼女との出会いだった。
戦いは彼の圧勝で終わった。
たしかに彼女は強かった。
魔力だけならこれまで戦ったなかでも1番だろう。
だが、雪姫には遠く及ばない。
彼が勝つのは当然の結果であった。
しかし、彼女は「参った」とは言わなかった。
彼女は一言「また来る」とだけ言って帰っていった。
次の日、その次の日も戦った。
そして日に日に彼女は強くなった。
俺はそれを楽しんでいる自分に気づいた。
それは雪姫を倒したあの日以来、久しい感情だった。
最終日、俺は少女に言った。
「この勝負はお前の勝ちだ。
俺は最後までお前から『参った』と言わせる事が出来なかった。
魔王との勝負は諦めよう」
すると彼女は、「あ、そういえばそんな事忘れてた」と言いたげな表情をした。
正直、自分も途中忘れていたのでお相子かも知れない。
去ろうとした俺に少女は言った。
「待て、勝ち逃げは許さん、
確かにワタシは『参った』とは言わなかったが、一度も勝てなかった。
ゆえに、この賭けは無効だ!」
俺は少し考えて、こう言った。
「では、こうしよう、
今回の勝負は引き分けであり、いずれお前が俺に勝てると思ったとき、再び俺に挑むといい。
そのとき、もし俺が勝てたら、お前から魔王に挑む許可をとってくれ」
「いいだろう、その勝負、受けて立つ!」
こうして、俺は彼女と戦う約束をした。
その後、魔王崩御の知らせがとどき、遺言により、俺は七候補になった。
俺は手に持った「鍵のかけら」を眺める。
「やれやれ、ずいぶんと待たせる姫様だ」
約束のときを思いながら俺は笑った。
補足説明
通常の吸血鬼の吸血能力では獲得効率は10パーセントくらいです。
100パーセントの獲得効率を持っているのはアルトゥーレの「完全吸血――ブラッド・オブ・ラーニング」だけです。




