台頭する憎悪
ロキは満身創痍で自身の拠点である巨人の森へと戻ってきた。
最強吸血鬼の実力を測るつもりが、とんだ大失態だ。
「フェンリルだけでなく、まさかヘルまで使うことになるとはねぇ
まさかあんなところで『神々の黄昏』を使うわけにもいきませんし、まあ、仕方ないでしょうねぇ」
彼がアルトゥーレから無事に生還した理由、それは彼の最後の使役モンスター地獄女王ヘルの能力、生死反転。
これは一度だけ生死をヘルと入れ替えることができる究極の蘇生魔法。
ただし、使ってしまえばヘルを使いつぶすことになる、使い勝手が悪い魔法なのだ。
これでロキは使役獣すべてを失ったことになる。
戦況は良くない。
しかし、活路は見えた。
アルトゥーレ・ルシファー、やつをぶつければ今度こそあのドラグニアを殺すことができるだろう。
ドラグニア・ランフォード忌々しい魔王の娘。
ガイアスとの戦いの際、一瞬の隙をつき、彼女に精神系魔法「心層迷宮」をかけることに成功した。
「心層迷宮」とは、一生に一度しかかけられない精神系究極の魔法であり、かけられた相手は心の迷宮にとらわれ、精神的な死を迎えるはずなのだが……
驚いたことに、「心層迷宮」をかけられたにもかかわらず、彼女は平然とし、ガイアスを打ち破った。
それによって他の方法に頼ることになったのだ、本当、上手くいかないものである。
「しかし、そろそろ蒔いた種が芽吹くはずです」
ちょうどそのとき、連絡用の小水晶が光った。
「くくく、いよいよ始まるのですねぇ、
破滅の序曲が」
ロキは水晶に魔力を込め、連絡を聞いた。
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オジリアはここに至って、危機感を覚えた。
ガイアスに続き、シルフィーナまでもドラグニアの配下になろうとは。
もはや看過できん、だが、自分の戦力ではガイアスの軍を手中に収めたドラグニアに勝つのは難しいだろう。
あのような小僧に頼らざるをえないこの状況が腹立たしい。
小僧――ロキは言った、「僕はあなたの理解者です、あなたこそ次の魔王に相応しいでしょう」と。
うさんくさいが、所詮は低能な巨人。
偉大なる邪竜族たる自分を利用できるはずもない、むしろ逆にこちらが利用しつくしてやろう。
「待っておれよ、半端者ごときが、魔王を目指すことの愚かさを身をもって味わうがいい!!」




