#83 本気の勝負(1)
『よろしくお願いします!』
試合開始を告げる号令が体育館に響く。
こちらのチームは俺,白山先輩,高野先輩,東堂先輩,大内先輩の5人。
対する天王寺先輩のチームは,天王寺先輩,大久保先輩,火野先輩,海野先輩,北川先輩の5人。
このメンバーは,俺が初日に一緒に戦ったチーム。
その中でも特に強力な精鋭部隊を出してきた形だ。
「光の奴,大人げなく本気で来たな」
「そうみたいですね」
ジャンプボールに向かう白山先輩に耳打ちされる。
先輩から見てもこのメンバーは強敵らしい。
「まぁ,こちらもそのつもりだから文句は無いがな」
「ですね」
だが,すぐにそう言って笑う。
そう,こちらも白山先輩を含めた本気のメンバーなのだ。
相手の事をどうこう言える立場ではない。
「ジャンプボール,負けないでくださいね」
「当たり前だ。お前はボールを受ける準備だけしておけば良い」
ジャンプボールの相手は北川先輩。
決して楽に勝てる相手ではないが,白山先輩は自信満々にそう言い残してセンターサークルへと入る。
結局,先輩もやる気十分だという事だろう。
「やっぱり,千夏を出して来たのね」
最初の位置に入ると,天王寺先輩が声をかけてきた。
「えぇ。そういう先輩も随分本気のメンバー構成のようで」
「最後はきっと千夏を出すと思っていたからね,このくらいのメンバーがいないと。ここで万が一にでも負けたくないもの」
言いながらにやりと笑う先輩。
先輩の言う通り,これまでの紅白戦は先輩のチームは全勝。
最後まで勝ちに拘るとは,天王寺先輩らしいというか。
「最後くらい,後輩に花持たせてくださいよ」
「嫌よ。特にあなたにだけは負けないわ」
「そうですか。じゃあ実力で勝ちに行きます!」
「やれるものならやってみなさい!」
先輩の言葉が終わると同時に審判係の手からボールが上がる。
ほぼ同時にジャンプする2人。
ぎりぎりの所だったが,先にボールに触れたのは白山先輩。
先輩は先ほどの言葉通り,そのまま俺の所へボールを弾く。
「狙い通りよ!」
だが,俺の前にいるのは天王寺先輩だ。
先輩もこうなる事を予測していたのだろう,ボールが上がった瞬間から俺の前に出て邪魔をしてくる。
しかしそんな天王寺先輩の考えを白山先輩も読んでいたらしい。
天王寺先輩が届かないように,かなり高い位置にボールを弾いてくれていた。
「うぇ?!」
と,思っていたら,俺も届くかどうかぎりぎりな高さにボールが飛んできた。
ジャンプして何とかボールを確保し,すぐに攻撃に移ろうとするが,ここでも前に立ちはだかるのは天王寺先輩だった。
着地と同時にぴったりと張り付き,俺に次の動きをさせない。
「こっち!」
動けない所に東堂先輩がボールを取りに来てくれる。
何とか俺は彼女にパスを出し、天王寺先輩を引きつけ逆サイドへ。
その隙に東堂先輩はドライブインで攻めに行く。
「逃がしませんよ!」
「ッ!」
だが、相手もそう簡単には行かせてくれない。
マークについている火野先輩がきっちりと先輩の進路を塞ぎ、ゴールに近づけない。
「こっち!」
「ッ…」
見かねた高野先輩がヘルプに回るが、東堂先輩はチラリと一瞥しただけで動かない。
そこからどうするのかと思っていたら、東堂先輩はそのまま飛び込むようなフェイントを1つ。
火野先輩がそれに反応し半歩程度後ろに下がったのを確認するや否や、すぐにシュートモーションに入った。
「……お前の助けなんて、こちらからお断りさせてもらう」
「な…」
唖然とする高野先輩の目の前で、東堂先輩の放ったシュートは一寸の狂いもなくリングの中央を射抜いた。
「さぁ、ディフェンスよ」
「あなたねぇ…」
「と、とにかく、ナイスシュートです」
ディフェンスに向かう先輩に声をかけ、俺も後に続く。
正直あのシュートは俺にも読めなかったが、ここは決まれば何でもいい。
「もう……次は見てなさいよ」
…それに、今の攻撃で火が付いた選手もいるみたいだし。
「さぁ、1本返すわよ!」
おっと、そんな事よりも集中しないとこちらがすぐに抜かれる。
天王寺先輩の声で俺は改めて気合を入れる。
――そう簡単には行かせないですよ!




