表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンマネ!  作者: SR9
第一章 インターハイ編
19/148

#18 新しい友達?

「平林さんいますか~?」

「……何の用?」


 その日の昼休み、俺は早速平林の元へと向かった。

 何をするにもまずは情報収集からだからな。


「単刀直入に聞くが、平林は今の部活をどう思ってる?」

「…別に。あれがキャプテンのやり方なら、それに従うだけ」

「お前なぁ…。あれじゃバスケ楽しくないだろ?」

「私は楽しいか楽しくないかより、勝てるか勝てないかの方が大切。今の練習で勝てるのなら文句は無い」

「……じゃあ、今のままで勝てると思うのか?」

「…………」


 怪訝な顔をして黙る平林。

 もしかしたらこいつは今の部活の危険度が分かっていないのかもしれない。


「あれ? 文香にお客さん?」


 そんな事をしていると、向こうからやってきた女子生徒が平林に声をかけてきた。

 『文香』と呼んでいる辺り、平林の友達なのだろうか。

 身長は低い。

 女子の中では高身長に入るであろう平林と並ぶとさらに目立つ。

 頭の右側やや高めで縛られた短いポニーテールが、小動物の尻尾のように落ち着きなく揺れている。

 勝気そうな顔立ちはやや幼く、その身長と相まって制服次第では中学生、下手をすれば小学生でも通用しそうだ。


「……あッ?!」


 と、その女子生徒は俺を見て突然声をあげた。

 おかしいな、俺の知り合いにはいなかったはずだが…


「何で女子バスケ部の変態マネージャーがここにいるの!」

「ファッ?!」


 彼女の叫びと俺の驚きの声に、周りにいた生徒が何事かとこちらを向く。


「……二人ともちょっと来て…!」


 突然の出来事に動きを止めた俺たちとは対照的に、平林はすぐに俺たちの手を掴むと、そのまま引き摺るように屋上へと向かった。




「…いったいどういう事なのか説明してもらおうか」


 屋上について、まず口を開いたのは俺から。

 人の事を見るなり変態呼ばわりした女子から事情を聴くことにする。


「…だって、本当の事じゃない」

「俺は変態じゃねぇ」

「嘘。今朝だって私たちの事見に来てたもん」

「俺はマネージャーだからであって…」

「そもそも、男子のくせに女子のマネージャーって、その時点で変態さんじゃん」

「それは…」


 悔しいが言い返せない。

 言い返せない、が、俺は断じて女子目当ての変態ではない、はずだ。


「とにかく、俺は別に体目当てって訳じゃなくてだな」

「体って言った! 今体目当てって言った!!」

「お前は……」

「…風花、ちょっと黙って。これじゃ話が進まない」


 まったく話の進まない俺たちに我慢できなくなったのか、平林が割り込んでくる。


「ハルも、きちんと最初から説明してあげて。何も知らない子たちがハルの事をどういう目で見ているか、分からない訳じゃないはず」

「そうか…」


 平林の言う事ももっともか。

 目の前で俺を威嚇している彼女は、何も知らないのだ。

 そんな彼女に俺がどんな風に見えているのか、そう思うと少し納得できた。

 …それでも、いきなり変態呼ばわりされた事には納得していないが。


「俺は木嶋遥斗。中学時代はバスケ部で、ポイントガードをやってた。もちろん高校でもバスケをしようと思ってたんだけど――」


 そこからは、もう何度目かの説明。

 ただ、今回は最後に今朝のやりとりも入れておいた。

 こちらの情報は全て知らせておかないと、どこかで誤解を生むかもしれないからな。

 最初は怪訝な表情で話を聞いていた女子も、だんだんと理解したのか、今度は憐れむような表情に変わり、話の最後にはなぜか怒りの表情に変わっていた。


「――と、いう訳なんだ」

「…じゃあ、今日の朝練が妙に厳しかったのはあんたが原因か!」

「え? そうなの?」

「そうだよ! あんたが天王寺先輩に変な事言わなきゃ、普段はもう少しまともな練習なんだから!」


 『変な事』とは恐らく今朝の練習前に俺が天王寺先輩に言った事だろう。

 あの時は何とか追い出されないように言葉を選んだので、彼女たちはそのとばっちりを受けたという所か。


「そこまでは考えてなかった……悪かったよ」

「私たち1年はまだ基礎練しかしていないから、あまり気にしなくても良い」

「そ、そうか…」


 平林が暴れる彼女を押さえながらフォローを入れてくれた。

 と、そこで俺はあることに気づく。


「あれ? じゃあお前もバスケ部員なの?」

「………」

「…………」

「あ、あれ? 俺、なんか変な事言った?」


 何故だろう。

 俺の言葉を聞いた二人が呆れたようにこちらを見ている。


「…あんたねぇ、今まで気づかなかったの?」

「…ハル、さすがにそれは無い」

「え~…」

「…まぁいいや。むしろ、今のでちょっと安心した。本当に私たちが目当てだったら、部員に気づかない訳ないもんね」


 何かを理解したのか、彼女はふっと息をつき、改めて俺に向き直る。


「あたしは竹内風花。文香と同じ9組で、バスケ部だよ。よろしく」


 もう俺に対する警戒は解けたのか、にっこり笑って手を出してくる竹内。


「よろしくな、竹内」

「風花で良いよ、ハル君」

「ハル君?」

「ん? だって文香がハルって呼んでたから。ダメ?」

「い、いや、別に大丈夫だけど」


 ついさっきまであんなに突っかかって来たのに、この反応の違いは何だろう。

 まぁ誤解も解けたみたいだし、これで納得してくれたのならそれで良い。

 俺は遠慮せずに風花の手を取り、がっちりと握手をした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ