#19 今後の方針(1)
「で,ハル君はどうして突然私たちに話をしに来たの?」
誤解が解けてすぐに打ち解けた様子の風花が改めて口を開く。
「さっきも話した通り,俺は水瀬先生から女子バスケ部の事を色々聞いて,部活の為に出来る限りの事をしたいと思った」
俺は今朝の水瀬先生との会話を思い出す。
マネージャーとは何をするべきなのか,という俺の問いへの答えだ。
「でも,先生は俺に言った。『君がマネージャーというのは肩書きみたいなものだ。その言葉に囚われず,君は君の思った事をしてくれ』って。だから,俺はまず今の部活を部員がどう思っているのか聞こうとしたんだ。天王寺先輩の理想とする部活と,現実の部員との間にどれくらい差があるのか聞きたかったんだよ」
「それで,まずは話しやすい文香の所へ来たって訳ね」
「あぁ,そうだよ。ちょうど良いから風花にも聞きたい。今の部活,どう思う?」
「え~っと…」
俺の質問に,額に手を当てて考える風花。
そのまま少し悩んでから,彼女は絞り出すように答えた。
「…今日みたいのが続くと,ちょっと厳しいかな。1年生には初心者もいる訳だし,ハル君が言ったみたいに,すぐにやめちゃう子も多いと思う。……でも,個人的には負けるよりはマシ。勝つための練習なら,あたしは我慢できる…と,思う……」
「…ほぅ……」
風花も平林と同じタイプの人間か。
でも,まだ悩んでいるみたいだ。
無理もないか。
風花の話を信じるのなら,今日の練習は特に厳しいものだったみたいだし。
そもそもまだ入部して一週間程度,今の段階じゃ部活がどうとか判断しろという方が無茶なのかもしれない。
「…まだ私たちは仮入部も終わったばかりで,ハルの言っている事も正直よく分からない。その事も,分かって欲しい」
平林も同じことを考えていたらしい。
「そうだよなぁ…」
俺は言葉を濁して考える。
そう,分かってはいるものの,俺にはその選択肢しかない事も確かなのだ。
平林の言うように,きっと女子部員の多くは俺を良く思っていない。
そんな俺が他の部員の所にいきなり話を聞きに行ったところで,風花のようになるのは明らかだ。
今回は平林がいたから何とかなったが,俺一人では絶対に無理だろう。
ましてや,2年や3年の先輩なんてもってのほかだ。
「…あ,それならさ」
悩む俺をよそに,風花は名案を思い付いたように手を叩き,明るい表情で言った。
「白山先輩に聞けば良いんじゃない? 天王寺先輩や部活の事だったら,きっと先輩が一番分かってるよ」
――それが出来たら苦労はしないって!




