地獄の業火を耐えた敵兵
陽光が地上に降り注ぐのを邪魔していた木々が無くなり、遠慮なく降り注ぐ陽光をきらきらとまぶしいほど反射する金属の鎧を頭のてっぺんから足の先まで、顔を含めて全身を覆った敵兵は歩みを止めようとはしていない。
その鎧は体にフィットするように造られているのか、ぶかぶかとした感じは受けない。
木々を一瞬の内に跡形も無く焼き尽くす炎の中でも、鎧の中の人間を守れると言うのか?
あれは魔具なのか?
俺が一瞬、呆然としている内に、敵は攻撃を再開してきた。
目の前の木の幹が敵の魔法の弾で傷ついて行く。
雷撃。俺の頭にそれが浮かんだ。
どうしてそうなったのか、よく分かっちゃいないが、火天を倒せたんだ、雷神だってたおせるはずだ。そんな変な自信が湧いてくる。これが、俺が持つMQ値と関係があるのかも知れない。それに、神山先生も以前、そんな事を言っていた。俺は再び決意した。
「雷の神。雷神。俺に力を貸してくれ」
俺を包み込む周囲の景色が一変した。やはり俺は金色の鎧に身を包み、白い輝きを放つ剣を手にしていた。足元は白い靄で覆い尽くされていて、その靄はずっとはるか先まで、続いていて他に何もない。上を見上げると、真っ青な空が広がっていて、雲が無い。
これは雲の世界?
「雷神、どこだぁ」
俺が大声で叫んでみた。遮蔽物のない空間、俺の声は一直線に進んで行き、どこか遠くで弱々しく消えて行った。その時、鼓膜を破かんばかりの轟音と視力を奪い、真っ白な世界に俺を追いやるほどの閃光が光った。
「呼んだか?」
視力が戻ってきた俺の前に、下半身に巻いている毛皮のようなもの以外は身につけておらず、のぞいている肌の色は緑色の巨人が立っていた。しかも、でっかいのは縦方向だけでなく、横にもでかい。はっきり言えば、でぶだ。
「俺に従え!」
俺は剣先を向けながら、命令口調で言った。
「かっかっか。ならば今一度、この俺を倒してみろ、」
これもお約束だ。今度は楽勝のはずだ。何しろ、俺には火天の力があるんだ。
「言われずとも、そうさせてもらうよ」
そう言うと俺は後方に飛びのき、すぐさま攻撃を開始した。
「炎撃弾!」
これで決まりだ。
その瞬間、目の前にまばゆい光が走った。
奴は平気な顔で立っていて、にやりとした。
俺は奴の余裕の表情に一瞬、恐怖した。
さらに下がると、もう一度呪文をとなえた。
「炎撃弾!」
俺はしっかり見定めようとし、奴の姿をじっと見ていた。
奴の前に雷光が現れ、そこに俺の炎撃弾は当たった。
おそらく、そこで消失しているのだろう。
神の力だと言うのにだ。
「火天の力か。だとしても、俺も神だ。
火天の力と言うだけで、この俺を倒せるとは思うなよ」
確かにそうだ。俺も調子に乗っていたかも知れない。
目の前にいるのは仮にも神だ。火天の力だけでは勝てやしない。
「雷撃槍」
その瞬間、俺は雷撃を食らってしまった。
真っ白に染まる視界。
鎧が熱を帯び、触れている肌が焼けるくらい熱い。
「ほぉ。その鎧はいま…強力な力を…てい…のか」
全身を包み込んでいる熱さで飛ばされそうな意識の中、奴の声が聞こえてきた。
鎧?鎧?鎧?
確かにこの鎧はあの雷撃にも持ちこたえたみたいだ。だが、中にいる生身の人間の俺は溶けちまいそうだ。もう一度、あの雷撃を食らったら、きっと意識がぶっ飛ぶに違いない。
だとすれば、攻撃だ。攻撃は最大の防御と言うじゃないか。
「炎撃渦」
俺の周囲に巨大な炎の渦が出来上がり、炎の城壁のように俺を包み込んだ。




