全てを焼き尽くす炎
火天が姿を消すと、俺の視界には元の林の情景が浮かんできた。
俺も今のが現実に起きた事なのか、信じきれちゃいない。だが、おそらく俺は奴の力を手に入れたに違いない。こう言う話はそう言うものだ。今から、俺はここを敵ごと焼き払う。だが、この林の中には味方もいるはずだ。味方には撤退してもらう必要がある。
そのためには、俺はここで大見えをきらなければならない。
これは悩みどころである。俺も本当に力を手に入れたと言う確証は無い訳で、力が無ければ恥をかく訳だし、敵を勢いづかせる事になる。
少し迷ったが、俺は決めた。
「希未ちゃん。敵全てを焼き払うから、味方をこの林から撤退させてほしい」
一瞬、意味が分からないと言う表情をした希未ちゃんだったが、俺の真剣さに頷いてくれた。
「光幻像」
希未ちゃんが、呪文をとなえた。
「みなさん。ある作戦が発動されます。
今、すぐに撤退してください」
希未ちゃんは敵に悟られまいと、焼き払うと言う事は言わなかった。
「どう言うことだ?」
ずっとここで戦っていた兵士が希未ちゃんにたずねた。
「ある作戦によって、この林は焼き払われます。ここに止まっていては巻き添えに遭います」
「早く、俺たちを信じてください」
半信半疑の表情だった兵士だったが、俺の真剣な表情と言葉にうなずき、撤退を始めた。それに続いて、仲間の生徒たちも撤退を始めた。
「希未ちゃん」
ここから立ち退こうとしない、希未ちゃんに俺が焦り気味の声で言った。
「まーくんを信じてるから、一緒に戦うよ。
ね。いいでしょ?」
にこりとした希未ちゃんの笑顔に、俺は頷いて返した。その時、校長の光幻像が現れた。あの炎撃弾の実習をしていた時と同じく、校長の表情に動揺は全くない。
「さっきの光幻像は私の代理のメッセージである。
ただちに撤退しなさい。時間的猶予はない」
おそらく、希未ちゃんの光幻像を受けた校長が俺たちの意図を感じ取ってくれたんだろう。
「まーくん。校長先生も応援してくれてるよ」
俺は深呼吸して、心を落ち着かせ、ほんの一時だけの撤退のタイミングを見計らった。その間も敵の攻撃は激しく、一歩一歩、俺たちに近づいてきている。
「炎撃牢」
俺は全てを焼き尽くす場面を思い浮かべながら、呪文をとなえた。その時、俺の背後に火天の姿を感じた。
目の前が真っ赤な炎に染まる。
強烈な熱気が周囲を覆った。
熱気の上昇を補おうと、周囲の空気が炎に吸い込まれて発生した風が、俺の体を襲った。
予想以上の風の強さに、崩しそうになる体のバランスを必死に保つ。
俺のすぐ近くにいて、撤退せずに残っていた希未ちゃんも木で体を支えている。
すべてを焼き尽くす地獄の業火。
一瞬にして林を焼き尽くした。
木々が立っていたはずの場所には、炭になった木の幹すらなく、一面が無に帰っていた。
しかしだ。敵兵だけは立っていた。




