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炎の神との戦い

 体が熱い。

 さっきまで、国境の林の中で敵と戦っていたはずだ。なのに、今は荒野にぽつりと俺一人が立っていた。空は赤く、山々の多くから噴煙が噴き上げられていて、一部からは真っ赤な溶岩が流れ出している。

 俺は状況が分からず、目をこすってみた。しかし、俺の周りの光景に変化は無かった。

 俺は死んだのか?

 自分の体に視線を送って、俺は驚いた。今までに見た事もない金色に輝く鎧に身を包み、赤い空間の中、白く輝く巨大な剣を手にしていた。

 何なんだ?

 俺が戸惑っていると、近くの岩陰から何かが近づいてくるのを感じた。

 とっさに剣を構え、視線を向けた。

 少し黄色味を帯びた赤い炎を体中にまとい、上半身裸の巨大な生き物が、そこにはいた。


 「うん?お前か」


 その巨大な生き物はそう言うと、立ち止まって、俺を見下ろしている。

 これが火天なのか?


 「お前が火の神、火天か?」

 「は、俺が分からんとはな。

 もちろん、そうだが」

 「俺に力を貸してほしい」

 「すでに契約は終えていると言ってもいいはずだ。

 俺の力を望むなら、俺を倒してみせろ」


 何を言っているのか、よく分からないが、最後だけは予想通りの言葉だ。こう言うものはそれがお約束だ。そんな予感はしていた。


 「氷撃牢」


 勝てるなんて、自惚れは持ってやいない。このまま逃げれるとも思えない。だったら、なおさら覚悟を決めて、先手必勝作戦しかない。しかも、火には氷だろう。

 火天の体の周りから白い煙が立ち上った。


 「お前、何かしたか?」


 火天はそう言って、腹を抱えて笑い始めた。

 当然と言えば当然の結果なんだろうが、俺程度の氷系の魔法では、こいつを氷の牢獄に閉じ込める事などできなかった。奴の体にまとわりつく前に冷気と水滴は蒸発させられてしまったようだ。


 「炎撃弾」


 火に火なんて、無謀と言うか、効果なしと思えるかも知れないが、やってみなけりゃ分からない事もある。


 「は?お前、どうしたんだ。そんなちんけな炎撃で俺を倒すつもりか?

 炎撃とはこう言うもんだよ。

 炎撃弾!」


 俺は展開から言って、そうくるだろうと飛びのく用意をしていたので、紙一重で助かったが、俺が立っていた場所には巨大な穴があき、周囲の土を溶かしていた。

 あの竜並みの破壊力。だが、俺たちの炎撃弾とこいつの炎撃弾は似ているが、竜のものはどこかが違う。


 「炎撃弾!」


 俺がぽっかりとあいた穴を眺め、そんな事を思っている間に、次の攻撃を繰り出してきた。


 「氷撃嵐」


 呪文を唱えながら、俺は素早く場所を移動した。

 こぶし大の氷の粒が嵐のように、俺の前に展開している。

 奴の放った炎撃弾の弾道の周囲の氷の粒が蒸発し、白い靄を放っている。

 俺から少し離れた場所に弾は着弾し、やはり地面をえぐり取った。

 あんなもの、まともに食らえば体は熱で気体にされちまう。

 その時、俺に一つのアイデアが浮かんだ。


 「水撃牢」


 巨大な水流が火天を襲う。


 「かっかっか。何だ、今度は水か?

 こんなもの、すぐに気体に帰してやるわ」


 奴の高笑いが白い蒸気の向こうから聞こえてくる。

 そして、その巨体が放つ炎が白い壁のなかにぼんやりと浮かんでいる。

 奴はこの状況の意味に気づいていないはずだ。

 視界は白い闇に奪われ、奴は俺の位置を把握できない。

 奴はそれはお互い様だと思っているに違いない。

 が、強烈すぎる炎が俺に奴の居場所を見失わないようにしてくれている。

 体力の続く限り、大量の水を奴の周りに送り続けてやる。

 俺は気配を消しながら素早く移動し、奴の背後に回ると、剣を上段に構えた。

 このまま水蒸気の闇を突っ切れば、奴の背後をとれる。

 ちょっとダーティな手だが、そんな事言っていられない。


 「ふぅー」


 聞き取られない程度の強さで深呼吸すると、何だか力が湧いてくるじゃないか。

 膝を一度曲げ、蒸気の壁に向かって、力いっぱい蹴りだす。

 蒸気の熱が俺の体を包む。

 予想以上の速度で、蒸気の壁の中を潜り抜ける。

 白い蒸気の壁を突き抜けると、奴の姿が目に入ってきた。

 奴は俺の気配にようやく気付き、顔を向けようとしていたが、体は背中を向けたままだった。

 一気に迫ってきた奴の背中に剣で切り付ける。

 間近に迫る奴の炎が俺の剣を包み込むが、俺はその炎ごと、奴の背中を切り裂いた。

 黄色味を帯びた赤い炎の中に、少し黒みがかった赤い血しぶきが飛び散っては、水分を失って固形物となって、地上に落下していく。

 俺はそのまま、剣を奴の背中に突き刺した。


 「ぐはぁ」


 奴はなんとも言えないそんに言葉を発し、口から血吹き出した。


 「お前の勝ちだ」


 そう言うと、奴の姿はゆっくりと透明になって行き、俺の目の前から消え去って行った。

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