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異世界は勇者よりも種馬を求めていた  作者: たてみん
4.女神の呪い

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25/25

25.本職の人に色々聞いてみたけど

 俺の希望は聞き届けられたらしく、翌週から様々な職業の女性がやって来た。

 それは良いんだけど。


「道化師です」

「詐欺師です」

「墓掘り職人です」

「馬子です」


 いや頼んだのはこっちだけど、珍しい職業を並べれば良い訳じゃないんだが。

 詐欺師は職業なのか?

 実際に会って話をしてみると詐欺師というより噺家もしくは弁舌師だった。

 先日聞いた神話も内容は同じなのに面白おかしく話してくれた。

 更に神話には諸説色々あるらしいという解説までしてくれた。

 特に女神の真意について。

 ただ単に怒り狂い絶望したという説。

 逆にまだ一縷の望みを持っていて召喚された勇者に期待しているという説。

 他にもいろいろあるけどこの2つが代表的だとか。


「この場合、女神は何を期待しているんだ?」

「『真実の愛』です」

「それはまた」


 実に儚いものに期待しているものだ。

 愛が真実か嘘かを見極められる機会なんて殆ど無いのに。

 少なくとも子作りに来た女性達と俺の間に愛と呼べるものは無い。

 彼女らが求めているのは子宝であって情ではないし、むしろ後腐れなく別れる方が喜ばれる。

 だから敢えてそうしているところもある。

 モミジさん達屋敷で一緒に暮らしている人達についてもまだ愛というよりも信頼関係だと思う。

 あともう半年くらいすれば家族くらいの関係になれるだろうか。

 それでも『真実の愛』などと呼ぶ気はないが。


 問題の解決には至らない情報とちょっとした便利スキルを習得しながら日々は過ぎていく。

 そして。

 護衛を伴った女性が俺の元にやって来た。


「召喚士のバーバラです」

「守護騎士のラインと申します」


 召喚士とはつまり異世界から勇者を召喚する人だ。

 彼女1人で多数の勇者を召喚する関係上、勇者よりも彼女の方が尊重される立場にある。


「てっきり召喚士は子作り出来ないものだと思ってました」

「私も無理だと思っておりました」


 それは不妊だからと言う意味ではなく、彼女の身の安全を考えての話だ。

 召喚された勇者たちの悪行は耳にタコが出来るほど聞いてきたし、この世界の職業は遺伝しないらしいので危険を冒してまで彼女が子作りをする必要性はない。

 それでも彼女がここに来たという事は彼女自身が望んだからだ。

 朗らかに笑いあう俺達の横でラインさんが剣を片手にずずいと前に出た。


「子作りの儀は先に私と行って頂きます。

 その結果、問題ありと判断した場合はバーバラ様には即刻ご帰還して頂きます。

 また万に一つもバーバラ様を傷つけた場合、悲しませた場合は手足の5,6本頂きます」

「まったくラインはお堅いんだから」

「バーバラ様の守護騎士として当然のことです」


 信頼関係の窺える素敵な会話な気がしなくもないけど、一歩間違えば俺の手足が無くなるらしい。

 いや俺の手足は5本も無いが。

 元々彼女らを無下に扱う予定は全くないので大丈夫だと思いたい。

 その点はラインさんが身を持って確認するそうだから沙汰を待つとしよう。


「子作りの儀は夕食の後に行うとして、それまで話せる範囲で良いので勇者召喚について話を聞いても良いですか?」

「それは『元の世界に送り返すことが出来るかどうか』ですか?」

「いえ。それは最初から期待してないです」

「あら」


 当てが外れたと驚くバーバラさん。

 俺としてはこの世界に来た時に肉体が若返っていたので戻るのは無理だろうなと感じていた。

 仮に元の世界に戻れたとして肉体も老人に戻るのだとしたら、反動でショック死するんじゃないかな。

 どちらにしても無理して元の世界に戻る気はない。


「それよりも召喚先や召喚対象はどうやって決めているんですか?」

「何も」

「え?」

「勇者召喚において召喚士というのは門番のようなものなのです。

 いつどこで召喚の門を開けるかを決めるだけで、その門が何処に繋がっているのかまでは分かりません。

 召喚される勇者についても門の大きさで何人くらい召喚するかは調整できますが、誰が呼ばれるかは分かりません」

「神のみぞ知るってやつですか」

「はい」


 どうやらバーバラさんは召喚の原理とかは全く理解していない様子だ。

 それでも問題なく召喚出来るというのだから、神話にある『勇者召喚は神様が授けた救済措置だ』というのも間違いではないのかもしれない。

 こうやって聞くと召喚士って年に1回勇者召喚を行ったら後は他にすることがない暇な職業なんだろうか。

 羨ましいとは思わないが趣味とかないと退屈で死んでしまいそうだなぁ。

 そんな考えが顔に出てしまったのかバーバラさんはむっとしながら抗議した。


「私は勇者召喚以外にも出来ることはあるんですよ。

 見ててください。

 おいでませ『しばにゃん』!」


 手を前に差し出して呼びかければ光の門が出現し、そこから豆柴っぽい子犬が出てきた。

 柴にゃんと呼ばれた子犬は呼ばれるのは慣れているらしく、すぐさまバーバラさんを見つけてじゃれついていた。

 なるほど。

 『勇者』召喚は仕様は神様任せ、使うタイミングは国任せだけど、それ以外の召喚については制限はないようだ。


「その召喚は俺にも出来るんだろうか」

「無理ですね。これは召喚士特有のスキルで他の魔法などで似たような事が出来るという話は聞いたことがありません」

「そっか」

「……もしかしてどなたか召喚したい人が居たのですか?」

「人というか、神様か神様の遣いみたいな方を喚べないかなと思って」

「それは無理ですよ」


 無理2連発。

 俺もほぼ無理だとは思ってたから『やっぱりそうか』って気持ちが大きい。

 バーバラさんは通常の召喚について簡単に説明してくれた。


「通常の召喚は相手の承諾が必要ですし、見ず知らずの人を何処とも分からない場所から呼ぶのは、それこそ神業の領域です」


 ということだった。

 逆に考えると神様凄いな。何でもありじゃないか。


 その後、(ラインさんの承認を得てから)無事にバーバラさんも子供を授かって屋敷を去り、入れ替わるようにして神官の女性がやってきたりもしたけど色よい言葉は得られず。

 やっぱり神様に会ったり話をするのは難しいを通り越して無理な話のようだ。

 正攻法が無理なら何か裏道が無いかとも考えたけど、そう簡単に良い案が出てきたら苦労しないというものだ。



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