54話目
ヒッ!?()
「ところでメリーはなんで隠れてたんッスか?」
あたしたちは時間が来たら運営が勝手に転送してくれるということで、それまで公園にあるベンチに座ってお話をすることになったんだけど。
ベンチに座ると、アルちゃんにそう聞かれてしまった。
いやなんでって……なんでだろうねー?
あたし自身なんであのとき隠れたのか、謎すぎるくらいだ。だって事前にアヤに聞いてたんだよ? パーティーメンバーも一緒で待ってるって。あたしはそれにオッケーしたわけだし。うーん、強いて言うならそうだなー。
あたしは考えをまとめると、立てた人指し指をアゴにつけるようにして首をかしげながら言った。
「なんか、アヤが盗られちゃったような気がしたから、かなー?」
「メリー……大好きー!」
「グハァ……!?」
「くっ、これが尊いってやつなのかしら!」
「つまりメリーはアヤさんのことが好きなんッスね!」
答えた瞬間あたしはアヤに抱きしめられ、クータロさんは鼻血を噴き出しながら仰向けに倒れて、ユーリさんは口元を抑えてプルプルと震えていた。
アルちゃんが明るい声で、なにか言っているけどそれよりも気になった点があった。あたしはアヤに抱きしめられたまま、訊ねるように声を出す。
「アルちゃん? なんでアヤには、さん付けしてるのにあたしは呼び捨てなの? いや別に気にしてないんだけど、どうしてなのかなーって、ね?」
「だってメリーってボクより年下ッスよね?」
ピキッ。
あたしはちょっと声を低くして、笑みを浮かべながら更にアルちゃんに聞く。抱きついてきてたアヤは、いつの間にかあたしから離れていた。
顔が少し恐怖に染まっていて、ひきつっている。
「そうなのー? マナー違反だけど、アルちゃんって何歳?」
「昨日10になったッス!」
「ふぅーん? そうなんだー?」
「そうッスよ!」
ない胸を張ってそう豪語するアルちゃん。
そっかー、あたしってアルちゃんより年下に見えるのかー。一桁に見えるんだねー? これでも14歳なのに、一桁に見えるっていうんだねー?
いくら今のあたしのからだがアバターとはいえ、背はそこまで変わってないんだけど、そう見えちゃうかー。あたしが笑みを深くすると、アヤが焦ったように声を出した。
「あっ、まずい!? アルちゃん、謝って! メリーに謝って!」
「え? ボクなんか悪いことしちゃったッスか?」
「ふふふ……ねえ、アヤ」
「はっ、はい!」
あたしがアヤに話を振ると、アヤは背筋を伸ばして恐怖に染まった声で返事をする。
あたしはそんなアヤに向かって、質問した。
「オシオキ、していい?」
「あっ、もう手遅れな感じの……あぁ、どうぞ! やっちゃってください!」
「え? ど、どういうことッスか?」
アルちゃんは困惑したような声を出す。他の二人は今アヤに説明してもらっていて、納得したような顔をしている。
あたしはアルちゃんに笑顔を向けると、こう言い放つ。
「アルちゃん、正座」
「え?」
「正座!」
「は、はい!?」
アルちゃんは、なにがなんだか分からないまま正座をした。あたしは、ナイフを分身させて《ポルターガイスト》で何本も浮かせると、正座しているアルちゃんの周りにそのナイフを、アルちゃんの方に切っ先を向けて固定する。
ちなみにこのゲーム、街中だとダメージとかは入らないけどこうやって武器を構えたりすることはできる。
あ、あの日本屋敷は多分フィールドに出てたんじゃないかな? だからダメージが通ったんだと思うんだけど。もしくは路地は街中じゃありません的な感じだと思う。
閑話休題。
アルちゃんもダメージが入らないことは分かっているらしいが、刃物を何本も自分の方に向けられたらさすがに怖いのか、恐怖の表情を浮かべている。でもまだまだ怖がってもらうよ?
あたしはもう一本ナイフを作ると、それを手に持ってアルちゃんに近づく。そのときにちょっとばかし、語りながらだけど。
「ねえ、アルちゃんはアイアンメイデンって知ってる?」
「し、知らないッス」
「そう、なら説明してあげる。アイアンメイデンって言うのはね、鉄の処女とも呼ばれる拷問具なの。2メートルくらいで中が空洞になった大きなお人形さんなんだけど、ついてある扉を開けると扉の内側と背中の方に釘がいっぱいあるの」
「そ、それがどうしたんッスか?」
困惑の中に徐々に恐怖が混じり始めるアルちゃん。それも構わずあたしはアルちゃんに話しかける。
「まあまあ。それでその中に人を入れて扉を閉じるとどうなると思う?」
「だ、だから! それがどうだって言うんッスか!」
「分からない? 今の状況だけど」
「えっ?」
そんな呆けた声を出して、現状を確認するアルちゃん。
こっちの話にアルちゃんが集中してる間に周りのナイフはアルちゃんに迫っており、その様子は本当にアイアンメイデンの中のように見える。それが分かったのかアルちゃんは、恐怖一色に顔を染めた。
あたしはそんなアルちゃんの目の前に行くと、アルちゃんの顔にナイフの切っ先を向けて問う。
「アルちゃんはあたしのこと10歳以下だと思ったんだよねー? でもあたしってこれでもアヤと同じ14歳なんだよ?」
「そっ、そんな風には……ヒッ!?」
あたしはそんな風には見えないと言いそうになったアルちゃんの目に、ナイフを刺そうとして寸止めする。
そして念を押すように声を出す。
「あたしの年齢は?」
「じゅ、14歳ッス……」
「うん! 分かればいいの、分かれば! 怖がらせちゃってゴメンね?」
あたしは先ほどまでの雰囲気を取り払ったように明るい笑みを浮かべると、分身していたナイフを元に戻す。
そしてアルちゃんから離れると、怖がらせたことを謝る。
でもアルちゃんは腰が抜けたようで立ち上がることもできず、先ほどまでの恐怖と助かったことに対する安堵からか涙を浮かべた。それを耳にしながら、あたしはアヤの方に足を向けた。
「アヤ、ありがとっ!」
「まあ、あの子が悪かったから仕方ないけど。小学生によくやるね?」
「だってそこはハッキリさせとかないといけないじゃん?」
「だからってこれはやりすぎだろ。どっちが子どもなんだが……」
「あれ? クータロさん、あなたもやってほしかったなら言ってくれればよかったのに」
「すいませんでした!」
クータロさんが余計なことを言いそうになったので、ちょっと脅すとすぐにジャンピング土下座をした。あれってリアルでできる人いたんだ……。いやこれVRだけど。
その後泣き止んだアルちゃんと仲直りをして少しお話をしたら、転移が始まった。
ただ誤算だったのは、アルちゃんがあたしのことをメリー様って呼び始めたことかな。
……怖がりすぎて畏敬の念的ななにかに目覚めたの?メリーでもいいって言ったんだけどなぁ……。
メリー様w
あれ、なんか寒気が……。
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名前は自信だけはある白豚、そのまんまだな!
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