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48話目

分割の二つ目

話は変わるが、《本所七不思議》という都市伝説を知っているだろうか。

当時本所と呼ばれていた東京都墨田区で、江戸時代ころから伝承されてきた七不思議の1つだ。

七不思議と言うが、伝承によって話が変わるのでエピソード自体は8つ以上ある。

あたしはこの日本屋敷を見つけた日の夜に、読書感想文の課題として都市伝説を題材にした本を読んでいて、そこでこの話を見つけたわけだ。

……ここまで話せば分かると思うが、あたしはこの《本所七不思議》と思わしきものとこのゲーム内で何回か遭遇している。


まず一の怪、《送り提灯》。

これはここに来る原因になったあの灯りのことだ。

元ネタの方では提灯を持たずに夜道を行く男の前に、提灯の灯りが現れてそれを頼りにすれば迷わないと思った男が近づくと消えてまた現れてを繰り返して、結局追いつけないって話なんだけど。

見事にオマージュされていた。ただあたしの場合夜道じゃなくて路地だったし、なんならそのせいで迷子になったまであるんだけどね。


次に二の怪、《送り拍子木》。

これはここに来るときに聞こえてた拍子木のことだ。

元ネタの方がほとんど送り提灯と同じだったから、運営は1つにまとめてしまえばいいと思ったんだろうね。

でもこれってたしか後ろから聞こえるやつじゃないし、拍子木をあたしが叩かないと意味ないやつなんだけど?

まあ、そこら辺はゲームなんだなぁって思った。


お次は三の怪、《狸囃子》。

これはさっき庭に来る原因となった囃子かな。

元ネタは深夜にどこからともなく聞こえてくる囃子が気になって、その音を追いかけていたらいつのまにか知らない場所に居たってやつ。これは割りと有名どころだよね。

まあ、こいつに誘き出されてここに来てるんだけど。


はいはい。次は四の怪、《落葉なき椎》だね。

これはあたしの目の前にある何一つ周りに落ちていない椎のことだね。

元ネタは江戸時代に本所にあった平戸新田藩松浦家の屋敷の椎の木だったかな。落葉がなかったのを気味悪がって屋敷を使わなくなったって話。

まあ、これをオマージュしたのはいいとして今絶賛椎の木がワサワサと動いているのにはどうツッコミしたらいいんだろう?

オマージュした結果トレントにでもしたのかな?たしかにそれなら落葉なさそうだけど、なんか違うよねそれ。


まあ、それは置いといて。最後に五の怪、《片葉の葦》。

今フライングで中から登場しようとしてる女性がいる井戸の、周りの葦だね。

元ネタは本所に住んでいたお駒っていう美しい女性に恋をした男がお駒に言い寄って、結局お駒の片手と片足を切って駒止橋って言う両国橋の近くにあった橋から堀に投げた。それからその堀の付近で生える葦は片葉しかなかった、というものだ。

まあ、オマージュするときに水周り繋がりで……ってだからフライングしてこないで、お駒さん!左手と左足しかないのになんでそんな早く井戸から出てくるの!……うん、そういうことだよ。


これは後二つ出会うことが確定しているようなものなんだけど、それよりもまず、どういう原理か分からないけど片足で走ってくるお駒さんと葉が落ちないからってつきすぎてて少しワサワサするだけでうるさい椎の木トレントを、倒すことが先決かな。

まずはお駒さんからやろう。首があるから振り返らせるだけでいいし。

あたしは自身の後ろにナイフを投擲すると、《メリーさんの電話》を発動してお駒さんを対象にする。

そしてなんだか久しぶりな気がする《ワープ》を使って、お駒さんの後ろにワープして《メリーさんの電話》のデメリットで自身の居場所を知らせる。


《もしもし?あたしメリー。今あなたの後ろにいるの。》


それに応じてお駒さんは後ろを向いてあたしを見ると、そのまま首を落として倒れた。

それを見て椎の木トレントが怖がるようにワサワサとしている気がするけど、気のせいだと思いたいな!

それよりもだけど。


「えぇ…。強すぎない?《擬似人形生成》って…。」


まあ、気づいている人は気づいていたと思う。

ちょっとスキルの試し撃ちのつもりで所持スキルも《後ろの正面だーれ?》だけにしていたんだけど、これだけで十分な気がする…。

ま、まあ強い分には問題はないはず!

そ、そう!大丈夫だ、問題ない!ってそれじゃあ大問題じゃん!

そうやって心の中で一人ノリツッコミをしながら頭を抱えていると、ワッサワッサとうるさい椎の木トレント。

あれだね、友だちとの待ち合わせとかで真横にある木で鳴いているセミくらいうるさいね!セミの鳴き声に風情があるって言っても、あれはうるさすぎるの!

そうやってあたしが考えているのに、なおもうるさくワッサワッサする椎の木トレントを見てイラッと来てしまう。


「あーもう!うるさいな!なんなの!?そんなに死にたいの!?」


あたしの問いかけを否定するように枝を動かして、ワッサワッサとする椎の木トレント。

あ、言葉理解できるんだ……。

なら話は早いと、さっきからどうしてワッサワッサとしているのか聞いてみる。


聞いてみた結果分かりにくかったけど、どうやらあたしと友好関係を結びたいらしい。

あたしそんなスキル持ってない……こともないけど、この椎の木トレントってどういう扱いなの?

まあ、本人(人じゃなくて木だから本木?)が望むんだったら、できるんでしょう多分。

できなかったら倒してしまえばいいわけだし、ダメでもともと。

もうめんどくさくなってきてしまったので、適当に《百鬼夜行》を使うと普通にテイムされてしまった。

それでいいのか、本所七不思議が一つ…。

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