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34話目

少し胸くそ悪いぞ、注意しろ!

あ、長くなったので分割しまくります。

 このポイントは別にボスモンスターがいるとか、珍しいアイテムがあるとかそういった場所じゃない。それどころかプレイヤーにとってうまみが少なく、経験値効率も人が多すぎては悪い。諸々の理由とこの森の平均レベル的に、ここは大量のプレイヤーが一気に来れるようになる場所じゃない。あたしがここを狩場に選んだ理由もこれなんだけど。

 それなのにこの光景はなんだろうか?

 プレイヤーたちは楽しそうに雑談したり武器の手入れをしていたりと様々だが、1人のプレイヤーがこちらを見てニヤリと狂気の笑みを浮かべる。

 そしてそのプレイヤーの表情を見てすべてを察したプレイヤーたちは、一様に狂気に染まった笑みを浮かべるとこちらに武器(・・)を向けた。本当にどういう状況なんだろうか、これは。というか当たっちゃったよ、嫌な予感が。

 とりあえずあたしは新しい武器である《八百万のナイフ》を腰から抜く。

 抜き終わったタイミングで、どこか聞き覚えのある若い男(・・・)の声が聞こえた。


「よお、久しぶりだな。クソガキ」


 聞き覚えはあるのだが、思い出せない。

 誰だか知らないけど、とりあえず今の状況を説明してくれると嬉しいんですけど……? あたしが色々と訳が分からなくなってしまい首をかしげると、それを「思い出せなくて首をかしげている」と勘違いしたのか─いや、半分はそうなんだけど─若い男の声が怒りの感情多めで声を張り上げる。


「俺様を忘れてくれるとはいい度胸じゃねえか、チート野郎!」

「誰が野郎よ! あたしは女よ、お・ん・な! ってチート?」

「アァ!? やっと思い出したか、クソガキィ? それともガキじゃなくてババアだったか?」

「「「アハハハハッ!」」」


 チート? チートって……あ!?

 もしかして、初日のGMコール騒ぎの人!? えっ、まさかやめてやるとか言ってたけどやりたくなっちゃったの? ってこの状況でそんなわけないか。

 だってこの人たち明らかにあたしを殺しに来ている。それにあたしを貶した言葉に対して同調するように大声をあげて笑っている。しかも全員。せめて1人くらいそれは言いすぎじゃないかとか言ってくれる人はいないのか。いや、いないからこそのこの状況なんですね、判りかねます。

 あたしが貶されて何も反応しなかったのがイラッと来たのか、周りからもあたしに向かって罵詈雑言が放たれる。


「オイゴラァ! 反応しろや、クソアマ!」

「怖くなりすぎて声も出ないんでちゅかー?」

「ガキのくせに粋がってんじゃねーよ、バーカ!」

「PKプレイヤーのくせに人のこと舐めてんのか、ゴラァ!」

「反応しろって言ってんのよ! クソビ〇チ!」

「仕方ないよ、言葉も理解できない猿以下なのさ」


 あたしが反応しないだけで好き勝手言ってくれる。あたしは答えが返ってきてくれたらいいかな? くらいの気持ちで質問をした。


「どうして……」

「ん?」

「どうしてあたしがここに来るって分かったんですか」


 そう、それなのだ。この人たち明らかに待ち伏せをしていた。

 こんな大人数で待ち伏せなんて、来ることが分かっていないと絶対にできない。それなのにしていたってことは、あたしがここに来るのがバレていたということだ。

 なんの情報もなしにできるわけがない。絶対どうにかして情報を手に入れている。それを知りたかった。

 そしてその質問に親切にも、一番最初に声を出した若い男の声が答えてくれた。


「クソガキはこの森に洋館があるという噂を聞いて来たんだろ?」

「えっ、はい。そうですけど」

「その噂を流したのが俺様だ」

「は? いや、なんでその噂を流したんですか?」


 ちょっと呆けながらも質問を重ねる。

 声の感情を読み取るに自信ありげだったので、今ならどんな質問にも答えてくれそうだったから。そしてあたしの思惑通りに、ペラペラと若い男─名前は知らないけど一々若い男って言うのめんどうなのでとりあえずAで─は話してくれる。


「クソガキ──お前を罰するためだよ」

「え? 罰する?」

「そう、チートを使ってしかも上手く運営まで騙して今日までやって来たらしいがそれもこれでおしまいだ。俺様たちがお前を殺して、殺して、殺しまくってこのゲームをできないようにしてやる」

「で、でもあたしが噂を信じてここに来るとは限らないんじゃ……」

「チートを使うようなやつならかかると踏んだ。それに噂はお前が来るまで流し続けて、森に張り込み尾行をして今日のポイントを割り出したんだ。上手くひっかかってくれたな? ないものを探すクソガキは滑稽で最高に面白かったよ。アハハハッ!」


 つまり噂というエサをあたしがひっかかるまで撒き続けて、ストーカー行為までしてあたしを探し当てたと。簡単に言うとこんな感じかな? 普通に嫌悪感が走る話だね、これ。

 運営さーん、この人たちモニタリングしてないんですかー? 普通に犯罪行為してるんですけどー?

というか恨みを買ってるのってAさんだけだよね? 他の人たちは、どういう理由なの?


(あなた)があたしに執着する理由は分かるんですけど、他の人たちはどうしてなんですか?」

「アァ? チート行為してるやつがいるって言ったら、俺様についてきたんだよ! それにそれぞれ個人的にクソガキに恨みがあるらしいぜ?」

「てめえのせいでPKプレイヤーになっちまったろうが、賠償金を払えクソガキ!」

「「「あのとき奪ったセット装備を返しやがれ、クソガキ!」」」

「あぁ、なるほど」


 つまりあの大量PKの時の被害者さんとあのときの《メリーさんの電話》の対象者の人ね、それは自業自得かも。でも色々穴がありすぎる気が……。

 まずはその穴をついてみる。これで帰ってくれないかなー。


「でもあのとき運営から『チートはしていない』って言葉聞いてましたよね?」

「だからさっき言ったろうが! 運営を出し抜いているって!」

「いや、しっかりと確認してもらったじゃないですか。しかも、ゲームの運営を出し抜けるほどの知識があたしにあるわけないでしょ」

「ええい、運営を騙しきれても俺様たちは騙されねえぞ。これだけの数相手に勝てるわけねーんだからとっとと死ね!」


 ああ、話聞かないタイプの人なの忘れてた。しかもそれに加えて周りの人たちも話聞いてくれてない。

 放送できないような罵詈雑言が、あたしの周囲から幾度となく放たれる。これはもうあれを言うしかない。


「いいんですか? こんな犯罪行為して」

罵声たちの語彙が貧困すぎる。

クッ。俺のせいですまない、罵声たちよ……!

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