31話目
夏休み4日目。
昨日は早い時間に寝たので、今日は早起きしちゃいました。というわけで今朝風呂に入っております。
湯船に肩まで浸かり、足を伸ばし鼻歌を歌う。
「♪~♪~」
足が伸ばせるのはあたしが小さいからじゃなくて、湯船が大きいから。だから小さい訳じゃないんだからね!
と、ここでお母さんから携帯に電話が入っていると言われたので、お母さんに頼んでお風呂まで持ってきてもらった。
「もしもし?」
『もしもし、芽里?』
「どうしたの?」
『それはこっちが聞きたいんだけど? 芽里が朝風呂なんて珍しいね』
「あはは……昨日早めに寝ちゃったから今日は早起きさんだよ?」
『早めに寝るなんて珍しいこともあるもんだ。今日は午後から雪でも。いや、槍でも降るかもしれないねー。』
「彩はあたしのことなんだと思ってるの!?」
『極度の変人だけど?』
「えっ、あたし極道のイシヘ〇ジ〇だと思われてたの!?」
『ポケモ〇を出してくるな! あと極道のって枕詞はどういう意味なの!?』
『ハァ……』とどこか疲れたような溜め息が電話越しに聞こえる。
まだそんなにツッコミをいれていないのに、どうしたんだろう?
「彩、疲れてるの?」
『いやまあ、この時間まで起きてたわけですしそりゃあ』
「……もしかして昨日なにかあった?」
『ゲーム内とか掲示板とかで色々あったんだー』
なんで荒れているのか、あたしでも分かった。昨日のワールドログ関連で、なにかあったのだろう。
具体的になにがあったのか、掲示板を見ていないあたしには分からない。
なので掲示板をよく見ている彩に聞いてみることにした、疲れてるところ申し訳ないけど。
「昨日のワールドログのこと?」
『ッ!? 芽里でも分かるくらい有名なのかー、ワールドログ』
「そりゃあ流した本人が知らないのは不味いよねー」
『えっ?』
「あっ」
やべっ、口滑らせた。だがなにを勘違いしたのか、電話越しから怒りの感情を乗せて彩が声をかける。
『芽里、その冗談は流石に面白くないなー?』
「えー、そっちかー」
『そっちってどういうこと! 人の手柄を取るのは芽里でも許さないよ!』
感情を読み取るまでもなく完全に怒っていらっしゃるようで。
というか今はお風呂なので声を抑えてほしい。耳が痛いよ、なんかキーンってするし。とりあえず理由を聞く。
「そういうってことは、彩もダンジョン完全クリアしたの?」
『うん、パーティーでクリアして……待って、今完全クリアって言う謎の単語が聞こえたんだけど』
「えっ、だってワールドログには初めてダンジョンが完全クリアされたって……」
『ちゃんと読みなよ、まったく。ワールドログには『初めてダンジョンがクリアされたよ!』って書いてたんだよ? てか完全クリアってどういう意味……』
色々とありすぎて記憶が曖昧になってたのが、仇になったらしい。
もう隠すのもめんどくさいし、説明した方が納得もしてくれると思ったから、昨日のことを全部説明した。
昨日電話で洋館に興味を持ち森に行ったこと、結局一時間かけて見つからなかったのでレベルあげに専念しようと思った矢先に見つけたこと、その洋館がダンジョンだったこと、家食みを倒したこと、そのせいかクリアじゃなくて完全クリアになったこと、そして報酬のアイテムがぶっ壊れだったのでとりあえず保留して昨日は早く寝たこと、そして朝早く起きたので朝風呂に入っていたことを話した。
ちなみに報酬はぶっ壊れ性能だったことだけを言い、詳細は言わなかった。フッフッフッ、情報の大切さは知っているのだよ。多すぎてめんどくさくなったとも言う。
結局彩は話を聞いて、なにか呆れたようにもう一度溜め息をつく。
『つまりあれだ。芽里がダンジョンを完全クリアしたタイミングが、たまたま私のパーティーがダンジョンをクリアしたタイミングと重なってたわけだ』
「おっ、やっと信じた」
『ドラマ1話分の時間と濃さを話しといてよく言うよ……』
「うわっ、通話時間ヤバッ!?」
『それより今日は、昨日の洋館が悪質プレイヤーの流したガセネタだって言いたくて電話したんだけど』
えっ? いや、普通に洋館あったよね?
あたしが一人で混乱している間に、彩はどんどん話を進めていく。
『目的は知らないけど噂を流した張本人が、今日の明け方に掲示板でガセネタだって言ってたよ? まあ、芽里の話を聞く限り本当にあったらしいけど』
「つまりガセネタのつもりがガセではなくなったと?」
『そういうこと。ふぁーあ、ごめんもう限界だから寝るね。おやすみー』
「うん、おやすみ」
電話を切って割りと長かった朝風呂から出ると、あたしは髪を乾かしながら思った。
なんでそんな噂を流したんだろう? それにどうして今になってガセネタだって言ったんだろう?
どれだけ考えても答えは出ない。
そして、服を着て脱衣場から出ようとして、倒れてお母さんから怒られた。長風呂しすぎて逆上せちゃった……。
お母さん、ごめん。




