2人のモンスタースチューデント
基本、最近の有名なホラー作品をほとんど見てません。偶然似た作品があるのかないのか、それも分かりません。
ジュースの入ったグラスを、テーブルのみんなのグラスと次々に交わしながら、不思議な感覚に襲われて行く自分を感じていた。グループ単位の仲間意識でしか接していなかった様な元クラスメートが、今少し大人になって、みんな殻を破って接しているからだろうか?少し控え目に手を伸ばしている綾乃に対して、こちらから大きく手を伸ばしてグラスを合わせた時、あのいじめっ子が今は妙にはにかんでいる。思えば、あの頃が特別異常な空間の中で生活していたんだなと、改めてしみじみと感じた。
男女17人づつだった当時のクラスは、初め1人のモンスタースチューデントが支配していた。彼女の名前は、財前麗香。麗香は、空手部の主将で、段位も初段らしかった。その実力も結構あるのだが、彼女の場合は更に、リアルに喧嘩が強いという専らの評判で、暴走族とも繋がりがあると噂されていた。その上、親も教育委員会とかPTAとかに力を持っていて、かなりのモンスターファミリーぶりだったんだ。だから、その無法ぶりに、教師でさえ誰も逆らう者がいないという異常な独裁状態になっていた。息のかかった子分は学校中にいて、その側近的な女子が3人同じクラスにいた。まるで、クラス替えすら操作したんじゃないかと思うくらい、3人共麗香の云うことをよく聞く質の悪い人達が揃っていた。そのうちの1人が綾乃という訳だ。
綾乃は、左手でグラスを持ちながら、乾杯するのに立ち上がる為に、右手に持ったステッキで身体を支えていた。麗香が事故で死んだ翌日、自宅の階段を踏み外して大怪我をしたと聞いてから、結局1度も登校することがなかったから、怪我が相当酷いことは想像していたが、未だに足が不自由そうだ。麗香に命令されて、さえっちを足で引っ掛けて転ばせたり、茶巾したり、雑巾で顔拭いたり、散々酷いことしていたこの人も、今は必死でみんなの輪に入ろうとしている。
夏休みまでは、この人達もよそで酷いことをしていた様だけど、私達のグループに構うことなく、私達もどこ吹く風と、それはそれは楽しい毎日を過ごしていたんだ。勿論、さえっちだって、毎日の様に満面の笑顔を見せてくれていた。それがだ。歴史部だった男子3人が、夏休みに歴史探訪という名目で心霊スポット巡りを始め、肝試しをしたビデオを、2学期の始まったクラスに公開してから、このクラスはおかしくなった。
「A級戦犯の3人は、誰も来てねえんだな。」 榎戸君が、テーブルに用意されたランチを食べながら、苦々しそうに云った。
「結局、あいつらに乗せられて面白がってた俺達も同罪だよな。」 清水君が、山本君を見ながら云うと、
「そうだな。初めは全然寄ってなかった柏谷があの話するきっかけ作ったのは、確かに俺達だもんな。」 山本君が云うあの話とは、自宅で虐待されていたさえっちが、4歳の時にその加害者の父親を呪い殺したらしいという暴露話だ。その話をきっかけに、さえっちがクラスのホラーブームの的になって行き、暴露話をした柏谷君が急病で入院するに至り、さえっちがホラーの主人公になってしまった。やがて、それが気に入らなかった麗香は、自分色の世界を汚されたと怒り出し、綾乃達と一緒にさえっちを執拗に虐め、私達の楽しかった日々も友情をも滅茶苦茶にした。
後になっては、ある日を境に、麗香はいつもさえっちに挑戦的ともいえる挑発を繰り返していた様に思う。その麗香が、さえっちを学校中の晒し者にした文化祭の後、その打ち上げで自ら集めたクラスメートの前で事故死した。その時、麗香の血を1番たくさん浴びたのが、虐められてた親友を見殺しにしていた私だった。その直後、子分の2人にも相次いで不幸が降りかかり、さえっちは、私を含むクラス全員の真の恐怖の的になった。さえっちこそ、スーパーモンスタースチューデントとして、クラスに君臨した。でも、それはさえっち自身の意思とはかけ離れていたんだね。
ご愛読頂きまして、ありがとうございました。<m(__)m> 尚、財前麗香の名前は、独自に思い付きで付けた名前ですが、偶然某ドラマに同じ読みの登場人物が出ていたのを、後から知りました。勿論全く無関係で、又実在する人物とも何ら関係はありません。




