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八話 酒飲みは話が長い!

「ええと、ギルド、ギルド……。ああ、ここか」


 真理亜から手渡された街の地図を元にあっけなくギルドまで到着。

 ていうか俺の住む借家から歩いて二十分もかからなかったんだが……。


「あ、いちおう確認しておくけど、今の私は変装魔法ディスガイズで他の人から見たらお城の女兵士に見えてるからね。ギルドで私の名前を出したら駄目だよ」


「え? なんで? 堂々と勇者を名乗って三人を探しに来たって言えばいいじゃん」


 ギルドの門を潜る前にひと悶着。

 真理亜の言っている意味が理解できず、俺は困惑顔。


「だって王様との約束なんだもん。『勇者は一人で仲間を探さないといけない』っていう」


「……じゃあここまで来れたんだから、あとは真理姉ぇ一人で探せばいいんじゃ」


「竜くん。今ここで、はっきりと私の心の内を明かそうと思います。…………まったく自信が無いの!」


「……あそう」


 頭を抱えた俺は、少しだけ考え込む。


「じゃあ、真理姉ぇはここで待っていてくれ。俺が三人の所在を確認してくるから、見つけたら連絡する」


「うん」


「……それで上手いこと話を繋げて、三人を別の場所に誘導する。そこで一旦俺がその場を後にして、そこにたまたま・・・・真理姉ぇが勇者の姿で登場する」


「おお……! 完璧な作戦だね! それで行こう、竜くん!」


 満面の笑みを零す真理亜。


 俺は大きくため息を吐き、そのままギルドへの大扉を開いた。





「うっわ、すっげぇ……」


 外から見ても広いとは思っていたが。

 実際に中に入ってみると、これまためちゃくちゃ広い。

 それなのに所狭しと冒険者で犇めいていて、確かにこれじゃ真理亜では人探しなど無理だろう。

 というか確実に迷子になる……。


「……外に置いてきて正解だったな」


 こんな混雑して広い場所で迷子になられたら色々と面倒臭い……。

 俺一人のほうが遥かに効率が良いだろう。


「さあて……。ちゃっちゃと探すか」


 手元のメモに視線を落とし、人探し開始。

 目的の人物は『聖戦士ミレイ』、『神官アーレウス』、『呪術師ヴュセル』の三名。

 ミレイは勇者の姿の姉さんが着ているような白銀の大鎧に身を包んでる女戦士。

 アーレウスは眼鏡をかけていて薄い紺色の僧衣を着た、いかにもデキる系の女子。

 ヴュセルは……半分おっぱいが出てるようないやらしい服、だと?


「真理姉ぇめ…………はぁ」


 真理亜から手渡された手書きのメモを握りつぶし、俺はまず中央にあるギルドの総合受付へと足を運んだ。




「どうしてだ!」


 と、いきなり混雑する冒険者の中でひときわ大きな声を上げている人物を発見。

 なんだ……? いざこざに巻き込まれるのは勘弁だが……。


「何故、この私にこんなショボいクエストを用意するんだ! 説明しろ!」


「あ、あの……ミレイさん。それはミレイさんが他のクエストを途中破棄するから……」


 ざわつく野次馬達。

 ……ていうか今、受付の人が言った名前って……。


「途中破棄が三回で、次のクエストは自由に選べない決まりなの、ミレイさんもご存じですよね?」


「そ、それくらいは知っている! だが、あれは私が故意に破棄したわけではない! クエストのほうが、私を拒んだんだ!」


「そ、そんなこと言われても……」


 ヤバい……。

 何やら面倒臭そうな騎士さんだ……。

 でも『ミレイ』って名前、そんなにたくさん無いだろうし……。


「あのー。お取込み中、申し訳ないんですけど……」


「うん? 誰だ、お前は」


 肩を叩く俺に振り返るミレイ。

 長い白髪に、青い目のキレイ系女子。

 うん。髪色と鎧の色がマッチしてて、見た目的にはストライク……なんだけど。


「俺は永瀬竜己っていいます。貴女は『聖戦士パラディン』として名高いミレイさんですか?」


「名高い……! ああ、そうだ、そのとおりだ! 私はミレイ・ギルバート! 名高き『聖戦士』にして、この街のギルドの頂点を極める者……!」


 俺の言葉に気を良くしたのか。

 拳を高々とあげ、周囲から冷たい眼差しで見られているミレイ。

 ああ……こいつは、アレだ。

 やたらプライドばっかり高い、面倒な騎士様だ。

 真理亜の頼みでもなければ、一生関わり合いたくないタイプだ。


「あ、あの……クエストのほうは……」


「いらん! 他の者に回してやれ! ……そうかそうか、君は永瀬竜己というのか。どれ、そこの酒場で私と語り合わないか?」


「へ? あ、ええと、俺まだ未成年なんで酒とか――」


「おお、それはすまない。意外に歳がいってるかと思ったが、まだ未成年なのだな。ではジュースを驕るとしよう」


 そのまま強引に酒場へと連れて行かれる俺……。

 ていうか今ちょっと失礼なこと言っただろ、こいつ!


「(……まあいいか。少しだけこいつに付き合って、他の二人の情報もついでに引き出せば……)」


 そしてそのまま酒場に強制連行されました。





「私が聖戦士を目指したのは、今からかれこれ十年前のことだ。あの頃は今のように平和な世の中ではなくてな。魔王軍が何度も街に襲撃してきては金品を奪い去り、当時の男共はそのときにほぼ命を落として――」


 延々と続く自分語りと昔話。

 もうかれこれ二時間はぶっ通しで話してます。この騎士様。


「マスター! もう一杯!」


「へーい」


 次々とテーブルに積み上げられていく空き瓶。

 一体どんだけ飲んでんだよ……。


「永瀬竜己と言ったな。お前は今、どんな職に就いているのだ? その風貌では……『調合師アルケミスト』か『暗黒魔道士レイジマスター』あたりかな?」


 昔話がひと段落したのか。

 急に俺に話題を振ってきたミレイ。

 『その風貌』って……たぶん、この制服姿のことだよな。

 学生服って、こっちの世界だと魔法使い的な職業に映るのか……。


「あ、俺、『無能者ワースレス』なんで。なーんにも特技とか持っていないです」


「……無能者、だと?」


 あれ……?

 急に場の空気が変わっちゃいました。

 もしかして、言ったらマズいことでも言っちゃった……?


「…………えらいっ!」


「びくぅっ!」


 急にでかい声を出され、心臓が止まるかと思った……。


「この世知辛い世の中で、『無能者』というハンデを背負いながら、それでも前を向いて生きていこうとする、その精神が素晴らしい! 若者! 私は君を大いに気に入ったぞ!」


「あ、はい……。ありがとうございます……」


 何度も背中を叩かれ、頭をグシャグシャにされ。

 酒臭いし、話は長いし、もういい加減帰りたいんですけど……。


「で、君はこのギルドに何の用事があって来たのだ? 『無能者』であるならば、クエストは受けられまい。何か深い理由があるのだと、私は推察するのだが」


 お、ようやくきた。

 本日のメインイベント。


「そうなんです。実は人を探してまして」


「ほう……? 人探しのクエストか。それをギルドに依頼に来たというわけだな」


「あ、ええと、そうじゃなくて……。自分で探しに来たというか……」


「自分で、だと……?」


 またもや鋭い眼光を俺に向けたミレイ。

 もしかして、今度こそ俺は地雷を踏んだ……?


「…………えらいっ!」


「びくぅっ!」


 同じ罠に二度も掛かりました……。

 もうやだ、この人……。


「ギルドを頼ることなく、自分の力でどうにかしようとする、その精神! よし分かった! 出来る限り私も君に協力しよう! もちろん、報酬などはいらん!」


 何故か気を良くしたミレイは、再び俺の背中をバンバンと叩く。

 たぶん、もう出来上がってんじゃないかなこのひと……。


「ええと、じゃあ一応聞きますけど、アーレウスさんって人と、ヴュセルさんって人、ご存じですか?」


 知っていればギルドで聞く手間が省ける。

 知らなければここらへんでお暇させてもらうことにして……。


「ああ、もちろん知っているぞ。二人ともルームメイトだからな」


「……はい?」


「丁度いい。まだ私も飲み足りなかったから、酒飲み友達でも呼ぼうと思っていたところだ。アーレウスとヴュセルだったら、そろそろ牙竜種ギアロスの討伐クエストから戻ってくる頃だろう。マスター! ギルドの受付に連絡して、二人とも戻ったら酒場に来るように伝えてくれ!」


「へーい」


「…………マジか」


 思った以上にとんとん拍子に話が進んで、自分でも自分が怖い……。


 ――ということで。


 クエストを上がった二人が加わり、酒場で大宴会が始まってしまいました。


 俺、もう帰りたい……。




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