十一話 ドブ腐れ外道神
……甘かった。
私は街の北に広がる森の入り口から空を見上げていた。
街を出た瞬間から猛烈な頭痛と吐き気が私を苛み、森に入った時には神経が焼き切れるかと思うほどの痛みが全身を突き抜けた。
街に体を向けると痛みも吐き気も嘘みたいに消え去った。
どうやら、あのドブ腐れ神の仕業らしい。
あれだけでは何一つ解決してないから神の目的が達成されていないのだろう。私に解決しろと命じているわけだ。
「独善的で甘ちゃんで、素敵に最悪な神様ね」
褒めてあげてるんだから姿現せよ。召還の呪文が違いましたか?
右手で太陽の光を遮る。
解決、するしかないのだろう。
ベリンダが思い出片手に街を出て、人と関わる。神が望むそんな結末に導くしかないのだろう。
「私には関係ないのに……。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
騎士団が現れるまで待つことにした。
気が狂いそうな痛みの中でひたすら魔力の制御を身につけ、魔物を傷つける。
五日もすれば魔物たちは私を見るだけで逃げ出すようになった。
騎士団は南の森にいることが分かった。逃げてきた知性体の魔物から聞いたのだ。
「いい迷惑だぜ。あいつら魔物と見れば片端から殺しやがる」
「人を食べてるんだから殺されても文句は言えないよ」
「……てめえはどっちの味方だ?」
さぁ、どっちだろうね。
「自分の味方かな」
私は肩を竦めて答えた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
……私は何もしていない。
教室で教師や同級生が睨んでいる。
私は何もしていない。
信じる者はいないけど、私は繰り返す。
財布なんか盗んでいない。
煙草なんか吸っていない。
援交なんかやっていない。
でも誰も信じない。
教師も同級生も友人も家族も、互いの証言を鵜呑みにするだけ。決して私の証言を聞かない。
みんなが言っているから間違いないって、それが噂でしかなくても間違いないの?
そんなに私は疑わしいのか。信じるに値しない存在なのか。嫌悪の視線を向ける相手なのか。無視してもいいのか蔑ろにしていいのか罵って嘲って殴って蹴って突き落として切って奪って愉しんでーーふざけんな。
「……あの外道神」
五日も連続で同じ夢見せるとは……。
どれだけキツいか分かってない。多分、わざとやっているんだろうけど。
発破をかけているつもりなら逆効果だ。
私は上半身を起こして手近な木にもたれ掛かった。
寝転がっていたら半日は虚脱感で動けなくなる。下手したら火魔法使って自分を骨まで焼き尽くしかねない。
あの外道神め。
「いつか本気で召還してやる」
やられたこと全部やり返すからね。覚悟しておきなさい。
暗い笑みを浮かべていると近くの茂みが揺れた。
間もなく現れたのは牛の頭を複数実らせた樹木だった。当然の如く魔物。
「見るたびに思うけどグロすぎて感覚が麻痺するね」
熟れた? 牛頭からは赤い果汁? が滴っているし。
イワシの頭程度の御利益があるかもね。
「騎士、来た」
この牛頭、何を隠そう知性体だったりする。
余り複雑なことは考えられないみたいだけど、牛頭を穫ってしまえば一見そこらに生えている木と変わらないので騎士団の様子を探らせるのに使っていた。
「ご苦労様。もう逃げて良いよ」
右手をひらひら振って別れの挨拶。
牛頭の目が一斉に私を見る。
「街、危ない」
魔物に心配されました。
順調に人から遠ざかってるなぁ。
「大丈夫。死ぬ前に終わらせて逃げるから」
そのための準備もした。
私の命は私の物だ。ドブ腐れ外道神の好きにさせるものか。
絶対に解決して生き残ってやる。




