13.サクヤのアカウント
「楽しかった?合コン」
「サクヤには関係ないでしょ」
瓶のキャップを開け、一気に飲み干した。
「あっそ」
――あれ?
でも、サクヤには合コンに行くなんて言ってない。
才加さんに聞いたのだろうか。
それとも……。
「シャワー、浴びてこいよ」
「は?」
な、なに、どういう意味?
思わず身構える。
「濡れたままだと風邪ひくぞ。オペレーターは喉が大事なんだろ?ガラガラ声で電話対応できんの?」
「――あ、そう、だけど」
酔ったのかな。
変な意味にとらえてしまった自分が恥ずかしい。
「クシュンッ!」
「ほら、行けよ」
「うん」
「スプライト、飲んでいい?」
勝手に冷蔵庫を開ける。
「どうぞ」
「ちゃんとメイクも落としてこいよ」
プシュッ!という音を後ろに、私はバスルームへ入った。
濡れた服を洗濯機に突っ込む。
――まったく、何しに来たんだろうか。
サクヤが私の部屋に来るのは、これで2回目だ。
このマンションに引っ越してすぐだった。
『引っ越しそば、持ってきた』
『そばじゃないじゃん』
『うるせ、だまって食え』
段ボールだらけの部屋。
フローリングの床に座って、カップ焼きそばを食べた。
――あのときも、ちゃんと桃太郎にもおやつを買ってきてたな。
言うこととやることが、いつもあべこべなんだから。
熱いシャワーを浴びて、バスルームから出る。
ノートパソコンのモニターが、薄暗い部屋を青白く照らしていた。
「あ、もう!勝手にPCいじらないでよ」
ステラ・ラクロスの世界が映っている。
昨夜、ログインしたままだったかもしれない。
サクヤは振り返ると、私の髪を見て呆れたように言った。
「ちゃんと乾かせよ。ほら、ドライヤー貸して」
「自分でできる」
「うるせ。じっとしてろ」
私をソファへ座らせると、ドライヤーを奪った。口調とは裏腹に、優しい手つきで髪を撫でられた。
なんだろう。なんか、変な感じ……。
「ねぇ、本当に何をしに来たの?」
「――だから……だろ」
ドライヤーの音が邪魔をする。
「え、聞こえなーい」
乾いていく髪の隙間から見える、ノートパソコンの画面。
そこには見慣れた、けれど決定的に違う光景が広がっていた。
「あれ?」
ぼやけてよく見えない。
「おい、まだ終わってない――」
ドライヤーの熱風から逃げるように、PCの画面に近づいた。
「これ、私のログインじゃない」
ダルマ遺跡の入り口。
私の豪傑なアバターはそこにいない。
「……サクヤのアカウント?」
「そうだけど」
いつもの、ぶっきらぼうな返答。
「え、これって――!」




