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晴れた日の話し  作者: ゆかわ どり
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ブレイクタイム

 朝食を済ませた後、私達は学校近くのカフェに行く事になった。お金が無い事を知っているはずなのに誘われてしまった。そして、誘われたら断われない私の性格。

 お店の名前はコーヒーの木。カフェは四角い二階建てのコンクリート造。屋根から木が飛び出しており、地面がら伸びているツタが壁を覆っている。中に入ると、お店の真ん中に、一本の木が見えた。その木はガラスの壁に囲まれている。ガラスの中は吹き抜けになっていて、上に青い空が見えた。外から見えた木はこの木だった様だ。よく見ると、所々の枝に赤や黄色、緑の小さな実が見えた。

「その実、コーヒーになる豆だよ。このお店のコーヒーはこの豆で作っているんだって」

「コーヒー豆が木になっているの初めて見た」

 ガラスに反射しているホラールの顔を見ながら答えた。

「注文しに行こ」

 ホラールが私の肩に腕をまわし、レジに向かう。昨日知り会ったばかりでこんなスキンシップが出来るなんて。外国人ってすごいな。昔の私だったら、私の事が好きなのかもって勘違いしていただろうな。自分の顔が熱くなるのを感じたが、なんて事ないような顔をして歩いた。

「いゆ、奢ってあげるよ。何がいい?」

 列に並びながらホラールが言った。

「大丈夫だよ。喉も乾いてないし」

「昨日、いゆが転んだ時に笑っちゃったし、俺の為だと思ってお詫びに奢らせてよ」

 ホラールが私の肩から腕を離し、レジの横にあるメニュー表に腕を伸ばした。「はい」と渡されたメニューを受け取ると、スワンとアムリが私の肩越しに覗き込む。

「僕は果肉入りマンゴージュース!の生クリームと冷凍マンゴートッピング!ホラールごちそうさま!」

「私は、ここのお茶は味が薄いのよね。うーん。ライチソーダのアロエ果肉トッピング。私もごちそうさま。二階にいるわね」

 二人は早口で言うと、ホラールの返事を待たずに二階へ続く螺旋階段を昇って行った。

「あの二人、カフェに来るといつも俺に奢らせるんだよ」

 と言いつつも怒っている様子のないホラール。

「だからいゆも遠慮しないで好きなの選んで」

 奢り方がとてもスマートだ。きっと生国で相当おもてになっていたに違いない。私はメニューの中で比較的安いアイスミルクティを選んだ。

「え。そんなのでいいの?二人みたいに何か追加したら?生クリームとか」

「ううん。大丈夫」

「そう?じゃあ、席に行ってていいよ」

「一緒にいるよ。持って行くの手伝う」

「ありがとう」

 正直に言うがこれは親切心からでも、奢ってもらうからでもなく、ホラールと一緒に居たいなと思う私の欲が出ただけ。

 私達の番になりホラールが注文をしてくれた。支払いは学生証に似ているカードを使っている。支払いもスマートだ。でもホラールならもし猫背になってお財布の小銭を探しても可愛いと思ってしまうかもしれない。

 注文した飲み物を受け取り(手伝うと言ったが、結局ホラールが四人分をトレーに乗せ持ってくれている)私達は二階に向かった。さほど広くはないお店なのに、二人が見当たらない。

「二人はこっちだよ」とホラールが先に歩いて行く。その後をついて行くと、奥にテラス席が見えてきた。

「俺達はいつもあそこに座るんだ」

 テラス席にはパラソルや屋根はなく、地面から壁をつたって伸びていたツタの葉っぱが太陽をいい感じに遮っている。

 二人は四人がけのテーブル席のラタンの椅子の上で気持ちよさそうにテーブルに腕を乗せて目をつぶっていた。

「今日はみんなよく眠るね」

チラリと私を見てイタズラっぽく笑うホラール。

「気持ちがいいんだもの」

 起き上がり、伸びをするスワンの隣に私は座った。

 ホラールはみんなの前に飲み物を置くと、近くの本棚から一冊の本を持ってきてアムリの隣に座る。本を片手にブラックコーヒーを飲ホラールはより一層かっこよく見える。

「ホラールは本当に本が好きだよね」

 起き上がらずに机に頬をつけたまま、アムリはホラールを見た。

「自分とは違う考えの人の頭の中をのぞいているみたいで楽しいよ」

「僕はあまり好きじゃない。本はその著者の考え方を押し付けてくるでしょ?僕の考えを誰かに否定されたくないし。むしろこっちが作者の考えを読んであげているんだから、感謝して欲しいくらい」

「それは俺の読んでた評論家の本を読んだからじゃない?フィクションの物語の本を読んでみたら?面白いと思うかも」

「嘘の話の何が面白いの?」

アムリは起き上がって、スプーンで生クリームとマンゴーをすくい、ぱくっと食べた。人が食べている物って何で美味しそうに見えるんだろう。私もアムリと同じ物を注文すればよかった。

「想像の世界の話って楽しいじゃない。たとえば、死国の一番偉い人が地獄の悪人と繋がっていて、どんどん違法入国をさせている物語とかわくわくしない?毎日平凡な日を過ごしているんだから、現実ではありえない話を本に期待するの楽しいわよ」

「僕は現実の毎日が楽しいもん!こうやって何気ない会話をするのも楽しいし。だからさ、ホラールも本ばかり読んでないで僕達と話そうよ」

 アムリがホラールの本を持っている腕をつかんで揺らす。ホラールは「わかったよ」と笑うと本を閉じて棚に戻した。

「アムリは何の話をしたいの?」

 私が聞くとアムリは「うーん」と言って少し考えている。

「特にこれと言ってしたい話はないよ」



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