不採用
五月十六日。晴れた日の午後。
一人の男の子が前の席の女の子にちょっかいを出している頃、一人の少女が先生の話をまじめに聞いている頃、一人の男が仕事をさぼっている頃、一人の女がトラックに撥ねられた。
事故の原因は、運転中のスマートフォンの使用による前方不注意だった。
船仂 いゆ様
誠に勝手ながら今回の採用は・・・、誠に勝手ながらの手紙、これで十九通目。
大学を卒業して、実家のある福島に戻ってきてから二カ月が経った。今日もカンカン照りで、もう夏の様な暑さだ。そして毎年思う。昨年の今頃ってこんなに暑かったっけ?今こんなに暑いなら、真夏はもっと暑いんだろうな。夏嫌いな人間にとっては辛すぎる。
私は今仕事をしていない。今日は仕事が休みだとか、仕事を辞めたという訳ではない。十九通目の手紙でご察しの通り、在学中に内定の二文字を貰えなかったのだ。一言で表すとニート。
不採用十通目くらいの手紙を受け取った時には、この世界には自分が就職出来る会社が存在しないんだなと思うようになった。次第に就職活動が億劫になり、今では次の日を迎えるために夜眠ることさえ憂鬱である。
小学生の頃、大人は明日の時間割をせず、宿題もせず、テレビを見ながらお菓子を食べられるなんて最高じゃん、と思っていたが、職を見つける事がこんなにも難しい事だったなんて…小学生の時の自分に一言物申したい。
もしかしたら、このままずっと就職出来ずに親と一緒に暮らしていかなければならならないかも。
何で私って昔からこんな風に物事が上手く進まないんだろう。生きるのって辛い。どうせ死ぬなら、今死んで楽になりたい。
「お腹すいた」
手紙をゴミ箱に投げ入れ、台所へと向かった。
冷蔵庫の扉を開けると、瓶同士がぶつかる音。その中には直ぐに食べられる様な物は何も無い。ただ流れてくる冷気が気持ち良く、扉を開けっぱなしにしたまま時間を確認する。
姉が生まれる前から存在しているという、コアラの親子が描かれた赤いアナログの壁掛け時計。時刻は午後二時五十分を示していた。コンビニに行きたいけど、近所の人に会ったらニートだとばれてしまう。冷蔵庫の扉を片手で閉め、両手を組んで背伸びをした。
しょうがない、今日は仕事が休みという事にしよう。平日休みって事は大手企業じゃないって思われるけど、まあ良いか。
少し綺麗な服に着替えてから、麻のトートバッグにお財布を入れ、スカートのポケットにスマートフォンを入れて家を出た。




