飛行士は空に帰るのを躊躇った
ガレリア盗賊団は脳に銀色の電信管を差し込んでおり、それで仲間同士交信できるどころか、他船占領の際にはその角を使って船の制御を狂わせたり出来るのだ。
しかし、自分達の船の制御こそきっと彼らは乱してしまい、それでの不時着となったのだろう。
インテリな盗賊団は宇宙では好き勝手出来ただろうが、こんな電気も無い牧歌的な世界においては、家畜を盗んで食つなぐしか出来ない山賊に成り下がるしかないとは哀れな事だ。
全く、獣にまで性欲を持つとは!
ああ、本当に、全く、俺が間に合って良かった。
フィルに襲いかかった盗賊団二名が、こん棒程度の武器しか持っていなくて良かった。
俺と同じ電子銃を持っていたら、フィルはこの世に既にいなかった事であろう。
俺は報告を急いですますと、脅えて動かなくなった子供を抱き上げた。
俺が大丈夫かと声をかけると、彼は俺の首に縋りついて、俺の肩に頭を乗せて甘えてくるではないか!
ああ、子供を持ったら、こんな風になるのか。
獣も人間も同じだよな。
俺はフィルを愛おしいと思った気持ちのまま抱き締めた。
「おろして!」
「すごいな。君はもう元気なんだ。お父さんはまだ心配でガクガク膝が揺れていると言うのに。」
「でも、おろして!これじゃダメなんだよ!」
何が駄目なんだろうと彼を下ろすと、彼は……、……、脱皮された。
「お父さん!これが本当の僕なの!」
着ぐるみだったのかよ!
イーグスリーの原住民データ自体が無いぞこら。
本船と交信して俺が手に入れたイーグスリーについては、人間体がおらず、猫と狸が合体したような知的生命体が集団的社会生活を送っている人間が立ち入ってはいけない星指定だったんだぞ?
俺は何に対して怒っていいのかわからないが、とにかく呆気に取られていた。
自分をお父さんと呼び掛けていた子供は、獣どころか、俺が今まで見た内で一番可愛らしい外見の子供であったからである。
俺が呆然とするのは仕方がない。
そして、俺の頭の中で、俺のろくでもない意識が囁いた。
お母さんも美人なのかな?
俺は取りあえず、フィルを抱っこして、大きくなったな、と父親のような台詞を喋った。
それから、また来るよ、とフィルに伝えた。
「また来てくれるの?また、この星には鬼が来るの?」
「もう来ないようにお父さんが守るよ。それでね、お空の偉い星に頼んで、また、フィルの顔を見に俺は遊びに来たいなって思ったんだ。」
「お父さん!」
この二日後に、本船より仲間が俺を迎えに来た。
この時にはサーニャが俺にヘルメットを外すことを許してくれていたばかりか、また、また来ても良いとの約束もしてくれていた。
仲間は、巨大な猫狸にしか見えない住人と離れがたそうな俺に不信顔をして見せたが、彼らが美しすぎる人型生命体であると言う事はイーグスリーにおいては絶対な秘密なのだ。
家族ならば教えて貰える秘密。
「お父さん!すぐに戻って来てね!」
「もちろんだよ!」
俺は可愛い息子に手を振って、本船に戻ったら長期休暇を取らねばと心に決めた。
童話って難しい。
心が汚い大人には無理でした。
絵が書きたかったから、それだけなので後悔はしていない。