ゼタ・ヒューム
謎の男の子との念話から数日経った。
あの男の子だ誰、もしくは何だったのかは未だに掴めていない。とにかく情報が少なすぎる。もしかしたらあれは本当に夢だったのかもしれない。少しリアルな夢で偶然その時に〖念話〗を獲得したのかもしれない。そんな事も考えたが、その可能性は非常に低い。それでも私はそうなのではないかと考え続けた。誰に話すわけでもないのに、あれが『リアルな夢』であった理由について淡々と心の中で語り始めた。私は転生したというこの状況で不安要素を増やしたくなかっただけなのかもしれない。私は逃げたかったのだ。この状況から。
しかし、私も一応は現代日本人の(多分)成人。ただ男の子の声から逃げる為の言い訳を考えていた訳ではない。この数日間私は顔を覗かせ、私の様子を見てくる使用人(?)みたいな人達のステータスをチェックし、身の回りの人のステータス平均値を確認していたのだ!!あとはミルク飲んだり、色々したり...とにかくベビーライフを楽しんでいた訳だ。
それはいいとして肝心の結果だが、流石にアルス(パパ?)みたいなステータスの持ち主は他にはいなかった。ほとんどの人がレイシアさんと同じ様なステータス値だったので、多分これが一般的なものなのだろう。
「レーナ(*@#@&(*@&#@」
私は一般人の半分も力がある化け物ベビーなのか?と疑問に思っていると、レイシアさんがミルク片手にその微笑ましい笑顔で私に何かを語りかけてくれた。
ミルクの時間か...この数日間の私の唯一の楽しみ...
私が立花麗奈時代の娯楽を思い出しながら、寂し気にミルクに吸い付いていると、ふとレイシアさんの事が気になってしまった。
一応もう一度だけ確認しとくか。レイシアさんのステータス確認したのは、私が初めて目を開けた時の一回だけだし。
私はほぼ無表情でミルクに吸い付きながらレイシアさんの方へと目を向け、〖ステータス閲覧〗を発動させた。
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名前:『レイシア・グレイス』
種族:ヒューム
状態:通常
年齢:22
LV:1/99
HP:14/14
MP:21/24
攻撃力:12(+10)
防御力:9(+5)
魔法力:11
速度:9
装備:〖公爵家のメイド服:価値D〗〖公爵家の護身用ナイフ:価値D-〗
通常スキル:
〖クリーン:Lv3〗〖ウォーターボール:Lv2〗〖スタブ:Lv2〗〖ヒート:Lv2〗〖カタルシス語:Lv6〗
耐性スキル:
〖電撃耐性:Lv1〗〖物理耐性:Lv1〗
特性スキル:
称号スキル:
〖公爵家のメイド:Lv--〗
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改めて見てみるとレイシアさんの最大MP値が少しだけ平均より高いなぁ。他のステータスは余り変わらないのに、MPを使う機会が他の人より多いのだろうか。
「^*&@&*^#&*。」
段々とミルクの量が無くなっていき、私はそれに応じて表情を緩めていく。
「うぱぱぁあ!」
ほんの少しだけレイシアさんに笑顔を向け、私は子猫のような声を上げながらお腹がいっぱいになったことをレイシアさんに伝えた。
私は一日の喜びであるミルクを終えると、少し疑問に思っていた事を思い出す。それは自分の種族である。私がこの数日間調べてきた使用人(?)みたいな人達は皆、種族『ヒューム』だった。しかし、私は『ゼタ・ヒューム』。お父様も確か『ヒューム』だったのにも関わらず、私だけ『ゼタ・ヒューム』だった。私はこれがあのトンデモスキルと何か関係があるのではと考え、少し前に〖鑑定〗を使い調べたのだ。
すると、〖鑑定〗のレベルが3に上がって、少し衝撃的な事実が突き付けられた。
【種族『ゼタ・ヒューム。』ヒュームの中で極々稀に生まれるという進化の可能性を秘めたヒューム。その魂はヒュームそのものだが、その性質からヒュームの社会ではモンスター扱いされる。1000年前、勇者として世界を危機から救った『ゼタ・ヒューム』が存在したが、すぐに危険モンスターとしてヒュームに討伐されたという。】
この鑑定結果を聞いた時、私は顔を青ざめた。得体の知れないこの自称レアスキルの鑑定が言う事を100%信じてるわけではないが、もしこれが本当なら私はヒュームの討伐対象であり、恐怖を振る舞う巨大ゴキブリと何ら変わらないモンスターだって事になる。
色んなチートっぽいスキルもってるのはいいけど、人間社会で生きていけないなら意味がない。前世でどうなったのかは知らないけど、私は人間として生きたい。普通の健康的な女の子として、この人生を生きていたい。最悪の場合魔物として森で生きていかなくてはならないかもしれない。そんな考えが頭をよぎった。
そう言えば、【1000年前、勇者として世界を危機から救った..】って何処かで聞いたことあるような...というより1000年前と言うキーワードを何処かで聞いた気がする。確か〖ステータス閲覧〗のスキルを鑑定してた時、気持ち悪いものと一緒に1000年前って言葉が入って来た気がする。もしそうなら勇者と〖ステータス閲覧〗は何か関係があるの?だとしても、なんでそんな1000年前の勇者に関係するようなトンデモスキルを私が持ってるの?
考えれば考えると程分からなくなっていった。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
私は自分が人間でないかもしれないと言う恐怖に、いくら考えても分からない1000年前の謎に耐えられなくなり、私はつい、大声で泣いてしまった。
すると直ぐにその様子に気づいたレイシアさんは私を両手で抱え、アルスが歌っていたのとよく似ている、子守唄を歌ってくれた。
アルスとは少し違ったその甘い声に私は包まれ、彼女の美しさと自分の肌で感じる彼女の贅肉に私は魅了されてしまった。
ずっと、こんな時間が続けばいいのに...
その夜、私は未だに〖鑑定〗を使い、調べていなかったスキルの確認をする事に決めた。先ずは自分のステータス確認からだ。私は意識を自分へと集中させた。
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名前:『レーナ・ヴォン・アルフォード』
種族:ゼタ・ヒューム
状態:通常
年齢:1週間
ランク:F-
LV:1/10
HP:8/8
MP:3/4
攻撃力:7
防御力:6
魔法力:3
速度:3
装備:〖公爵家のベビードレス:価値C-〗
ーースキル:
〖竜神:Lv1〗
通常スキル:
〖カタルシス語:Lv1〗
耐性スキル:
〖恐怖耐性:Lv1〗〖衰弱耐性:Lv1〗
特性スキル:
〖鑑定:Lv3〗〖ステータス閲覧:Lv2〗〖念話:Lv1〗
称号スキル:
〖神の卵:Lv--〗〖剣聖の娘:Lv--〗〖吞気なお嬢様:Lv2〗
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慣れた動作で私は一番気になっていた称号スキル、神の卵へと意識を集中させる。
【特性スキル〖鑑定:Lv3〗では取得できない情報です。】
【称号スキル〖神の卵:Lv--〗**************】
ううぅぅ...気持ち悪い...なにこのエラー...来るなら来るって言ってよね...
それにしてもスキル名に『神』ってあるからトンデモスキルって事だけは予想出来たけど、〖竜神〗と同じトンデモレベルだったとはね...まぁいいか、他のスキル確認が最優先だ。こんな得体の知れないスキルの詳細なんて知ろうとしたって分かりゃしない。分かりそうな物からコツコツとやるしかない。
私は再び意識を集中し、もう一つの称号スキルを鑑定した。
【称号スキル〖剣聖の娘:Lv--〗現代の最強の剣士『剣聖』の娘に与えられる称号。剣を使う物理攻撃系スキルが取得しやすくなり、スキルレベルの必要経験値が半減する。】
ってことは、私のパパは剣聖ってことか?最強の剣士と言えばやっぱりパパ(仮)しか思いつかない。やっぱりあの人パパ(仮)じゃなくてパパなんじゃないの!?今度からあの人のことはパパと呼ぶことにしよう...心の中でだけだけど。
私は今度からあの人の事を正式なパパと認識し、パパと呼ぶことを心に決めると、ゆっくりとドアが開かれる音が聞こえた。
「レーナ&^&*^#&*@^」
聞き覚えのある居心地のいい声、これはレイシアさんのものだ。聞き間違えるはずがない。
その予想は見事に的中し、レイシアさんはいつも以上の笑みで私に何かを見せてくれた。絵本だ。
「**(&@*#@^。」
彼女は何かを私に言い。両手て私を大事に抱え、何処へ腰かけた後、彼女は持ってきた絵本を手にし、私に見せながらそれを読み聞かせてくれた。
「*^(^(^&&。」
そこには空に浮いる黒い翼の生えた小柄な人と、その人と比べて二回りほど大きい人型の何かが描かれていた。
「(*&(*&(*@。」
次のページにはその人型の何かが、一人の男に手を差し伸べている姿が描かれていた。
勇者?
私はふと、『ゼタ・ヒューム』のことを思い出し、何故かその男が1000年前の勇者なのではないかと思ってしまった。
【通常スキル〖カタルシス語:Lv1〗が〖カタルシス語:Lv2〗にレベルアップしました。】
「**様は勇者様に力を***一人で**に立ち向かおうとしました。」
あれ?レイシアさん?なんでだろう...分からない言葉なのに、理解できる。
私はレイシアさんに抱えられながら絵本に目を通していると、いつもの謎声と共に、レイシアさんの言葉が少しだけ分かるようになってきた。
あ...やばい、また眠気が。何でいつもこんな肝心な時に来るかなぁ...
生後1週間の体が襲い来る睡魔に太刀打ちできるはずもなく、あっけなく私はその場で眠ってしまった。




