竜神を呼ぶ男の子
私が赤ちゃんとほぼ同じ大きさな事、それに未だ謎の多い〖ステータス〗と言う存在。これから考えてみると、多分私は異世界に転生したんじゃないのかと思う...いや、漫画やアニメの見過ぎかもしれないけど、自分が誰かも分からない私ができる現状の考察はこれが限界...
それに私が持ってたスキル、〖鑑定〗はかなりのレアスキルらしい、まぁその〖鑑定〗がくれた情報だから100%信じれるかと言われたらそうではないのだけれど。もし本当ならそんなレアスキルでも調べられなかった〖ステータス閲覧〗とは...これはチートスキルというやつなのかな?
他にもまだ調べてないチートスキル(?)っぽい物もあったし、取り敢えずこう言うスキルは『トンデモスキル』と呼ぶことにしよう(心の中で)。
早速、調べ物の続きでもしようかと思ったけど、何だか身体がだるい。せっかく手に入れた視界がぼやけてくる。もしかして風邪ひいたの!?噓でしょ..生後1日で風邪ひくとか命に関わるでしょそれ...せっかく異世界転生したみたいなのに1日で死にたくないよ...私..しかも風邪で...
「(&@^&^@&^$@&!!」
贅肉金髪美じ..じゃなくてレイシアさんが苦しそうにする私を見て異変に気づいたらしく、私の額に手を当てて声を荒げていた。私の意識が薄れていくと、彼女は大慌てで何処かへ行ってしまった。
レイシアさん...贅肉はあるけど、一緒にいると何故か落ち着くんだよね...どこ行っちゃったのかな...
レイシアさんがいなくなり、始めて彼女の『偉大さ』を思い知った私は少し寂しくなってしまった。
「レーナ&@*$@^*!!」
レイシアさんの慌てた声と共に、ドアが勢い良く開けられる音が聞こえた。私はレイシアさんが来た事を知り、モヤモヤしていた心が浄化されると一気に眠気がまし、そのまま眠ってしまった。
私が意識を戻すと、そこは良い思い出のない真っ暗な世界だった。また目を開けられないでいるのかと思ったが、不思議なことに、目と言う物が存在しないように感じた。そこにあるはずの物がない...これは夢でしかなかった。それもただの夢ではない、悪夢だ。
「君が竜神ちゃんだね、会えてうれしいよ!」
私がどうにかして悪夢から覚めようとしていると、まだ声変わりしてないような男の子の声が頭の中に直接流れてきた。この感覚は〖ステータス閲覧〗や〖鑑定〗によく似ていて、私は少し不快に感じた。
【特性スキル〖念話:Lv1〗を獲得しました。】
〖念話〗を獲得?新しいスキルを覚えたってこと?それも〖念話〗を...何故?しかもこのタイミングで。
「凄いね、想像以上だよ!僕と少し話しただけでもう念話覚えちゃうなんて!!」
さっきから誰ですか!?直接頭の中に語りかけてきて...もしかして、私おかしくなっちゃった?
「面白いね竜神ちゃんは、まぁいいや、少し話がしたかっただけだよ。」
おかしくなったわけではないのか...
それはいいとして、さっきから竜神ちゃんってなんですかそれは。それにいきなり話とか言われても、生後1日の私に何の用ですか...
「なーに、君は少し特殊みたいだからね、僕の邪魔をして欲しくなかったんだよ。それに、こっち側に来れば君は最後にしてあげるよ。」
あなたの邪魔?それにこっち側とか最後って、なんのことですか!?
「そのうち分かるよ。」
その言葉を最後に、男の子の声は聞こえなくなってしまった。
「うっ、うぅぅぅ。」
私は強い明かりを感じ取り、目を覚ました。
目を開けると見覚えのあるシャンデリアが光っていたが、あたりは少し暗くなっており、部屋の明かりはそのシャンデリア頼みとなっていた。
それにしても変な夢だったな、誰だったんだろうあの男の子。私が覚えていないだけで何かしら未練でもあるのかな?だったらあの男の子は私が立花麗奈だった頃の知り合い...?
「レーナ、@$@*&*$@*$&!!」
聞き覚えのある男性の声と共に、金髪の男性が顔をのぞかせた。
男性はその美しい金色の短髪にあった金色の瞳から涙を流し、その大きくて男性らしい手で私の頭を優しく撫でてくれた。よく見てみるとその男性は軍服のようなものを着ていて、胸元にはなんかの勲章らしきものもあった。
この声、多分私が始めてこの世界で意識を取り戻した時に近くにいた人だ。
取り敢えず〖ステータス〗を見せて頂きましょうか!私が今一番欲しいのは情報!!生後1日のベビーがいっちょ前に情報なんて知ってどうするんだって話だけど、精神年齢15歳以上(予想)の私にとってこの状況は不安でしかないのだ!
【特性スキル〖ステータス閲覧:Lv1〗が〖ステータス閲覧:Lv2〗にレベルアップしました。】
こんな簡単にレベルアップするもんなんだな。
ってダメだ、集中しないと。
【特性スキル〖ステータス閲覧:Lv2〗では正確に取得できない情報です。】
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名前:『アルス・ヴォン・アルフォード』
種族:ヒューム
状態:不安
年齢:19
LV:8*/99
HP:***/***
MP:***/***
攻撃力:****(+***)
防御力:*** (+***)
魔法力:*** (+***)
速度:*** (+**)
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うわぁぁぁぁぁぁぁ!き~も~い~!!
私の頭の中に流れて来た情報はとにかく意味不明であった。これが私が見てきた〖ステータス〗なのかも分からない。
なに...この人、〖ステータス閲覧〗以上のとんでもない人ってこと?
普通のステータスも全く読み取れないし、スキルに至っては全く情報が入ってこない。待って...この人の名前の『アルス・ヴォン・アルフォード』って。もしかしてパパ!?確か私の苗字もアルフォードだった気がする。この人がこうやって私に触れてる事から考えてパパである可能性は非常に高い。だとするとパパは軍人(?)で、メイドを雇えるだけの金を持ってるってことか。私の称号スキルにもあったけど、もしかして私ってそれなりのお嬢様なんじゃないの!?
そう言えばまだ調べきれてないスキルとかあったよね、まずはそっちから調べよう。パパは後でいいや、パパの〖ステータス〗めっちゃ気持ち悪かったし、もう調べたくないかなぁ。
私はパパの〖ステータス〗に結構本気に引きながら自分に意識を集中させた。
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名前:『レーナ・ヴォン・アルフォード』
種族:ゼタ・ヒューム
状態:衰弱(小)
年齢:1日
ランク:F-
LV:1/10
HP:8/8
MP:1/2
攻撃力:7
防御力:6(+15)
魔法力:3
速度:3
装備:〖公爵家のベビードレス:価値C-〗
ーースキル:
〖竜神:Lv1〗
通常スキル:
〖カタルシス語:Lv1〗
耐性スキル:
〖恐怖耐性:Lv1〗
特性スキル:
〖鑑定:Lv1〗〖ステータス閲覧:Lv2〗〖念話:Lv1〗
称号スキル:
〖神の卵Lv--〗〖剣聖の娘:Lv--〗〖吞気なお嬢様:Lv1〗
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あれれ?なんか最大MP値が増えてる気がするんだけど、それになんか嫌なスキルが増えてる...
私はゆっくりとそのスキルに意識を集中させ『鑑定』と、念じた。
【特性スキル〖念話:Lv1〗は使用した相手との意思疎通を可能性とするスキル。主に声を出すことのできないモンスターや、生後1日の吞気なお嬢様と対話をする時に使われる。】
何故ディスられてるかはもう考えないとして、このスキルは確か、悪夢の中で獲得したとか言ってたやつだよね。この世界では夢で獲得したスキルも覚えられるのか?流石にそんな事はないよね。だとするとあれは夢じゃなかったって事か?もしあれが現実なら彼が言ってた事って何なんだ?それに私の事を『竜神ちゃん』って呼んでた気がする。〖竜神〗と言ったらこれしかないよね。
私は再び意識を集中させ『鑑定』と、念じた。
【特性スキル〖鑑定:Lv1〗が〖鑑定:Lv2〗にレベルアップしました。】
【特性スキル〖鑑定:Lv2〗では取得できない情報です。】
【**スキル〖竜神:Lv1〗****************。】
流石にこの気持ち悪いのにも慣れてきたよ。まさかこれも『取得できない情報』だとはね...まぁ名前からしてトンデモスキルだって事は予想できてたけど...
それより気になるのが、あの男の子だよ。何故私に語りかけてきた?それに邪魔するとかって何?何故私の持ってるスキルを把握できてた?
最後のは私と同じ〖ステータス閲覧〗持ちだって事で納得できるけど、それなら私の名前も把握できてたはず、何故わざわざ私をスキル名で呼ぶ必要があった?それに〖ステータス閲覧〗を発動させるには対象と接触しないといけないはず、(私の僅かな経験値で分かった事だけど。)
私が謎の男の子の目的などに付いて考えていると、涙目のパパが両手で私を持ち上げ、その大きな腕で私を温かく包み込んでくれた。すると彼はゆっくりとしたテンポの歌を歌いだしてくれた。子守唄なのだろうか、その歌声はとても心地よく、段々眠たくなってくる。
さっき起きたばかりで、こんな大変なことがいっぱい起きてるのに、また眠くなるとか...
本当に吞気なお嬢様だな...
そう考えていると、私は自然と目をつむり、夢の中へと招かれていった。
【称号スキル〖吞気なお嬢様:Lv1〗が〖吞気なお嬢様:Lv2〗にレベルアップしました。】
【耐性スキル〖衰弱耐性:Lv1〗を獲得しました。】