ドローガ村に着きました。
「ドローガ村だね。」
「うむ。」
「思っていたより大きい。」
村の入り口の前に立って門を見上げた。
沼地を抜けてからドローガ村までは、草原が広がるチャロム地方をまっすぐ歩いてきた。
地図によると、この地方で一際大きい街がブライ。そして周りに、村や集落が点在しているようだ。
だからなのか、今までは人の気配がほとんどなかったけど、この辺りはそうでもなかった。
集落らしきものを見かけても話はしないで通り過ぎただけだけど。
チャロム地方も広くて、一日休んでから向かった。
エルドラドからトータルで五日かかった。馬車だともっと早いだろうけど、まずまずじゃない?
お昼前にドローガ村に着いてひとまずホッとする。
村全体が、木の柵で囲われている。
入り口にある受付で手続きを済ませ、深い溝が掘られている上の橋を渡ると、またさらに木の柵で囲われていた。
「二重になってるね。ちょっとエルドラドの作りと似てるかな。あっちは川になっていたけど、ここも魔物が簡単には侵入できないようになってる。」
見張り台も何台か突き出て見える。
デスが周りを見回して呟く。
「しっかり対策を取っているみたいだな。」
「うん。」
受付の近くに小屋があって、傭兵みたいな人が数人座って談笑していたから、滅多に危ないことはなさそうな緩さは感じた。
壁には槍が数本立てかけてある。
ドローガ村の中は、周りが畑や果樹園になっていて、村の真ん中に集落がある作りになっていた。
この畑がとにかく広大で、区画ごとに同じ野菜や果物が育てられているみたいだ。
日本の段々畑を思わせる。
中心部に近づくと意外と賑やかな街で、街道には野菜の木箱が積み上げられていたりした。
道ゆく人たちはおしゃれな服を着ている人もちらほらといるし、旅人や商人もいて人は多い。
村からブライまで数時間と近いため、ブライとの交流が盛んみたい。
ドローガ村の農民は、日が昇る前には起きて農作業をして、お昼前に終わらせるのがほとんどらしい。
今は農作業を終わらせて、遅いランチを始める頃。
ベンチで読書をする人。
槍を持って訓練に精を出す少年たち。
木の根元で、日陰に入って昼寝をする人までいた。
「幸せそう。農作業に明け暮れるイメージがあったけど、過ごしやすそうなところね。」
「うむ。」
「……とりあえずまず依頼を終わらせよっか。」
依頼品の魔石などを詰め合わせた木箱が今回の依頼品。
「依頼主の『農作物協会』代表のジャックさんに会いに行こう。」
依頼書を確認して、近くにいた女性に道を尋ねた。
「あたしらは今から仕事だから、農業チームなら今から休みだで、そっちに聞いてな。ミーシャお願い。」
「はいよ。」
へえ。
この村はチームで仕事してるのかな?
改めてミーシャさんに尋ねると、中心に近いところに協会の看板が出ているとのこと。
「この村、結構入り組んだところもあるけど、協会はわかりやすいと思う。とにかく、でっかい看板に野菜の絵が書いてあるからすぐにわかると思うわよ。」
「行ってみます。ありがとうございます。」
ミーシャさんに教えてもらった通りに歩いていく。
通りはどこも賑やかで、表通りでランチをしている人を多く見かける。
とにかく、子供が多い。
エルドラドよりも、子供の比率が多いね。
あちこちで賑やかに、子供達の歓声が響き渡っていた。
通りだけでなく脇道にもお店が結構出てるし、村っていうより、交易街って感じ。
でも外へ向かうと畑が広がって農地だし。
ギャップがすごいね。
ほとんどのお店が、お昼前から夕方まで開店しているみたい。
宿泊施設だけはずっと営業中か。
看板を見ながら村の設備をチェックしていく。
なぜなら今日はここに泊まる予定だから。
デスも興味深そうに辺りを見ながら肯く。
「あ。あのフルーツジュースのお店、きれい。美味しそう!」
赤と緑の液体が入ったウオーターサーバーみたいなものと、色々なフルーツがカゴに盛られて並んでいた。
「後で行くか。」
「行く行く。」
エルドラドはお店それぞれが、独立して運営されているけど、ここはなんというか、田舎特有の御近所さんという親しさがあふれていた。
「まな。あれだ。」
デスが顎指す方をみると、なるほど、野菜や果物のイラストが看板いっぱいに描かれていて、『農作物協会』と書かれていた。
木造の建物に、少し軋んだドアを開けて中に入ると、書類から顔を上げた女性が気づいた。
「何かご入用ですか?」
「エルドラドからギルドの依頼で来ました。ジャックさんに用があるのですが。」
「……ああ! あなた達が?」
少し驚いたような顔をしたけど、すぐに席を立って側に寄り頭を下げた。
「初めまして、私はここの協会で事務兼連絡担当のジルです。」
あ、はい。と頭を下げ返す。
「ジャックはあちらよ。」
見ると、荷物の山と奮闘していた若い男性がひょいと片手を上げる。
「いやいや、ありがとう。依頼品を持って来てくれたのかな?」
そう言って、テーブルのある場所まで誘導しながら言った。
「私が協会の代表ジャックです。村長の息子なもんで、こういう仕事をやらせてもらってます。」
ニカッと笑って握手を求めて来たので、返しながら私も答える。
「私はまなです。こちらが……」
「デス。」
「はい。まなさん。デスさんもよろしくお願いします。」
そう言ってデスとも握手する。
「じゃあ、これ。こちらが依頼書です。確認お願いします。」
「うん。……はい。間違いないよ。私の証明カードだ。」
手渡された証明カードに、ジャックさんの名前があるのを確認して、間違いないことを了承した。
バッグから依頼品の詰まった木箱を出そうとして止まった。
あ。
出しておけばよかったかな。
……ギルドから借りたことにすればいいや。
収納バッグから木箱を出してテーブルに置いた。
「では確かめさせていただきます。」
ジャックさんが木箱の蓋を開けて品物と納品書を照らし合わせていく。
あれ?
特に何も言われないね?
……ここではよくあるのかも。
「はい確かに。じゃあこちらが改めてエルドラドまで持っていってもらう分です。こちらの木箱より少し大きくなってしまいますが、入りますか?」
「……はい。大丈夫そうです。預かります。」
状況を瞬刻で理解して、これくらいの量なら入る収納バックという体を演じて収納した。
「こちらが受理書です。」
依頼品を受け取りましたよという『受理書』がないと、ギルドで依頼達成の報酬がもらえない。
それをしっかり受け取って、バッグに仕舞った。
良かったら村を楽しんで下さいと、この村の宿屋『マルマル亭』を無償で一泊できる食事付きの木札をもらった。
ありがたく受け取らせてもらい、村中を探索することにする。
エルドラドへ持ち帰る木箱の中身は、魔力が空になった魔石。
返却期限はエルドラドへ帰った時でいいとカルダさんに聞いていた。
半永久的に使える魔石は目が飛び出るほど高いから、ほとんどの人は使い切りの魔石を安く購入するそうだ。
空になった魔石を返却すると次買う時に安くしてもらえるらしい。
魔石に魔力を込める作業は、魔法学校の生徒達などプロになる前の人たちの、練習兼アルバイトのような収入源になっているとか。
じゃあ、リアさんにもらった魔道具の指輪、やっぱり高価なものなんだね。
リベルさんの庭にも水の魔石が設置してあったけど、お姉さんが水使いで、リベルさんの風魔法を詰めた魔石と交換したと聞いたことがある。
私の土魔法を魔石に詰めて、需要あるのかな……とちょっと考えがよぎった。
世の中、うまく立ち回ってるんだね。
先ほど目についたフルーツジュースのお店に向かう。
もう、頭の中はフレッシュジュースでいっぱい。
ベリーとリンゴとミルクのミックスジュースを頼んだ。
ドローガ村では牛も飼育していて新鮮なミルクが飲めるらしい!
エルドラドで食べるチーズも、この村で作られたものだと初めて知った。
初めて受けた荷物運搬の依頼、達成できて良かった!
ずいぶんと涼しくなって来ました。
体調管理には気をつけたいですね。
今日も読んでくださり、ありがとうございます。




