すごい回復薬できちゃった。
デスが外出から戻って、出来上がった回復薬(大)の十本をさっそく納品しに行ってもらった。
お昼までまだ少し時間があったから、回復薬をもう一回作ってしまうことにしようとテーブルの上を一度綺麗にする。
材料を揃えて調合鍋に入れ、魔力を流しながら煮込む。
もう分量を量ったりすることにも慣れてきたね。
そういえば……。
ヒーラーの杖で回復魔力をかけながら煮込んだらどうなるんだろう。
「……。」
……やばいです。
気になり出したら止まらないです。
でもイケそうな気がする。
……ちょっとやってみる?
既に十本は納品したから余裕が出たというか、材料はまた買えばいいし、うん。
好奇心に負けました。
服の下からヒーラーの杖を出して、一瞬迷ったけど魔力を込めて鍋の中身にそれを向けた。
魔力を放ちながら、まぜまぜ。
ん?
仄かに鍋の中身が光ってる?
良さそうじゃない?
まぜまぜ。
鍋の中に投入した薬草の色が、鮮やかな新緑のように変化していく。
そして細かく分断していき水の中に消えていった。
かき混ぜるおたまの滑りが軽くなり、薬草による濁りも徐々に消えて、すごく澄んだ透明な液体に変化を遂げる。
「すごい、何これ。」
感動を覚えながらも、その手は休めずにかき混ぜ続ける。
「これ、完成していない?」
初めて作ったけど、こんなに綺麗な水初めて見た。
綺麗な水をさらに浄化したような透明感。
鑑定眼鏡で視てみる。
『回復薬(聖)ヨモ草、きれいな水、長命草のエキス、魔力まな、製作者まな』
「何これ。」
(大)じゃなくて(聖)になってる。
(聖)って確か……。
「オープン。」
カタログを召喚して、アイテムのところをチェックすると、回復アイテムがいくつか載っていた。
「……あった。」
よく似た感じの、見たことあったと思ったのだ。
『聖薬』
聖水って感じかな?
説明を読むと、『聖薬』気力、体力、魔力の完全回復。異常状態全般回復。一定時間攻撃力、防御力の上昇。ポイント五千。
「高い!」
何ですか五千ポイントって。
もう、いざという時の切り札みたいなアイテムだね。
でも私が作ったのは、回復薬(聖)なんだよね。聖薬じゃない。
うーん。どうしようか?
カルダさんに鑑定してもらう?
その時ドアが開いて、デスが入ってきた。
「あ、お帰りデス。そうだ。これなんだけど……。」
デスに説明をして、鍋を覗くように促す。
「ふむ。通常の回復薬より上位な感じはするが、鑑定眼鏡は効能まではわからないのか。」
鍋を覗きながら、匂いを嗅いだりしている。
「うん。鑑定眼鏡、効能も分かるものにすればよかったかも知れないね。」
「カルダなら、分かるだろう。聞けば早い。」
鍋から顔を離して、肩をすくめる。
「やっぱりその方がいいかな。へんな薬だったらどうしよう。」
「そんなアイテム名、店でも聞いたことがないしな。」
「だよね。」
そんな訳で、ギルドのミニ会議室にてカルダさんが鑑定中。
持ち込んだ『回復薬(聖)』を詰めた一本の瓶を、テーブルに置いた状態でガン見しています。
回復薬(聖)の残りは鍋の中にそのままある。
一度瓶から目を離して、目頭を片手で揉んで再度鑑定する。
さっきから何度も繰り返しているけど、カルダさん疲れているのかな。盗賊のことでバタバタしてるし。
そのうち、目を離して私の顔をジッと凝視してくる。
なんですか。
「まなさん、何度鑑定してもこれはまなさんが製作していますね。」
「??」
「回復薬(聖)は、気力、体力、魔力を回復して、さらに異常状態も回復してくれるんですよ。特に呪い系にはよく効くようです。まなさん、あなたは聖職者か何かなんですか?」
「聖職者?」
「はい。神に仕える方の事です。聖堂も王都にあります。(聖)と文字のつくアイテムは、神に祝福された、とされる者が作れると聞いています。」
「神に祝福された?」
神様には会っているけど、祝福はされていないよね?
「されてはないと思います。」
多分。
「ふむ……。普通ならば、幼少の頃に発見されて聖堂に召されるんですが、まなさんは余程の僻地にいたか、幼少の時には弱くて発見されなかったか……なんでしょうかね。」
へえ。異世界から来ましたとは言えないし、僻地ではあるわね。
「どうします?」
「どうしますって?」
「聖職者の資格ありなら、聖堂に行くこともできますよ。」
チラッとデスと顔を合わせる。
「聖堂って、どんなところなんですか?」
「神に仕えることになりますね。主に祈りや聖薬の作成、浄化奉仕、王宮との繋がりも近くなって、働きによっては王宮に上がることもありますよ。」
うわ。めんどくさそう。
「行きたくないです。冒険者としてのまなのままでいいです。」
「ふっ。」
「生活も保障されますよ?」
「それでも。」
「……わかりました。ギルドとしても冒険者でいてくれた方が、ありがたいですよ。ただ。」
「ただ?」
「この回復薬は販売できませんね。(大)の方が需要はありますよ。第一、高くて誰も買えません。」
「……ちなみにいくらになるんですか?」
「これくらいの量なら、一つで金貨百枚はしますね。」
「!?」
家にもまだありますよ。ヤバイやつ作っちゃった?
「まなさんが作れると知れると、聖堂が動きますから、冒険者でいたいなら隠しておいた方がいいと思いますね。」
「それでお願いします。」
ふう。とカルダさんがため息をつく。
「私も他言はしませんから。これはご自分で保管するか処分するか、判断はお任せしますよ。」
「はい。ありがとうございます。」
机の上の物をバッグにしまった。
カルダさんが、頷いてではまたと言って部屋を出て行った。
うわ。すごいの作っちゃったみたいね。
神様のカタログで買ったヒーラーの杖を使ったから、こうなったのかも知れない。
「デス、危なかったね。」
「ふ。聖堂へ行ったら自由はなさそうだしな。」
「私は今の生活が気に入っているから。カルダさんでよかったね。」
「うむ。」
「スモールハウスに残したやつも瓶に詰めてバッグにしまおう。一番安全だもの。」
デスがにっと笑って頷く。
それから私たちは、瓶に詰め替えた十本の回復薬(聖)をせっせとバッグにしまったのでした。
その後、懲りずに土魔法の魔力を込めながら、同じものを調合してみたら、素材に入れたヨモ草が鍋の水を全部吸って、ドーン! と成長しちゃいました。
ツヤツヤと輝くヨモ草を採取するのにかなりの時間を費やしたよ。
「何やってるんだ。」
デスの呆れ声が突き刺さりました。
でも良質なヨモ草をゲットです!
次の投稿は未定ですが、時間を作って投稿したいと思います。
読んでくださって、ありがとうございました。




