カタログがバージョンアップしてました。
翌朝、スッキリと目覚めることができた。起きて着替えを済ませてから窓を開けると、新鮮な朝の空気が部屋に入ってくる。
空気がとっても美味しい。
エルドラドは緑が多いだけあって、空気が本当にクリーン。
「気持ちいい。」
デスももう起きているようだったから、デスを抱えて窓による。
この空気、一緒に味わわなくちゃ!
「後で散歩も兼ねて、ギルドへ行こう。」
「うむ。」
デスも朝の空気にルンルン、としてるかは分からないけど、機嫌は良さそう。
朝食が来るまで、カタログでも見ようか。
バッグを堂々と使えるようにできる何かを探そうって思っていたのよ。
デスに火を沸かしてもらって、朝のテイ茶を楽しみつつ、カタログを召喚した。
ちょっと違和感を感じる。
あれ、何だろう。
ポイント?
ううん、たくさん溜まってて驚くけど、違和感の正体ではない。何だろう。
両手でカタログをチェックする。
「あ!」
「どうした?」
「カタログに、黒いページが増えてる?」
本を縦にたてて上から見ると、白い紙だけでできたカタログだったのに、黒いページが増えている。
こんな色無かったよね。
カタログの黒くなっているページを開いてみた。
黒いページの一番初めに、デスカタログと書いてあった。
「何だこれは。」
デスも怪訝な声を出す。
ページを進めてみると、『デスを色々いじっちゃおう♪レッツ、カスタム!』というタイトルが現れた。
「……。」
「……。」
「……神様だね。」
「……そうだな。」
このセリフの使い回し、神様だ。
めくっていくと、デス専用のページになっている。
デスの魔力を上げるよだとか、動く人形に進化だとか、着せ替えしちゃおうセットだとか。
いちいち神様のセリフのような名前になってて、引きそうになる。
でも。もしかしたら、あるかも。
ページをパラパラめくって探す。
あった!
デスを実体化しちゃう? どきどきポーション!
あ、怪しい。ものすごく怪しいんですけど。
必要ポイントは……え?
十ポイント。
すっごくポイント低いんですけど!
効果は一日だけとかかな。説明書きが全くない。
「こんな怪しいもの、私は飲まぬからな。」
デスが心底嫌だというような声で言う。
「一回全部目を通そう。ヒントがあるかも。」
カタログを最初に戻して、項目ごとにめくっていく。
『人形編デスコーナー』
デスに着せ替えしちゃおうセット。
デスのアクセサリー一覧。
デスの魔力を上げちゃうよ。
デスが動く人形に進化。
デスを実体化しちゃう? どきどきポーション!
『進化編デスコーナー』
デス専用魔法一覧。
デス専用装備品一覧。
スープセット(好きな味を選べるよー)。
お着替えセット。
ヘアリボン一覧。
死神の書。
死神の大ガマ。
時々突っ込みたくなるものもあったけど、デスのためだけにあるページになっていた。
特に最期のページにあった、死神の書と大ガマは高ポイントで、こんなポイント貯めるのに何年かかるのっていう数字だった。
何だろう、この死神の書って。カマは、元死神さんだから分かるけど。
「デス、どうする?」
「あの神だ。ロクでもないことを考えてるに決まっておる。私は遠慮する。」
「でも、人形編デスコーナーはどれも十ポイントなんだよ。試してみる価値はあるよ。私やってみたい。」
「なっ。」
「動く人形に進化はどう?これが怪しかったら他のは自制すればいいし。」
「……。」
「……だめ?」
「好きにしろ。」
「本当に? 無理してない?」
「……。」
「よ、よし。じゃあ、やってみるよ。」
「……。」
「デス、本当に大丈夫?」
「くどいっ!」
「ひゃっ、はいっ。じゃあ、やらせていただきます!」
久しぶりに怒られたよ。
「神様、動く人形に進化をお願いします。」
本の表紙をみると、ポイントが減った。
デスを見ると。
うつ伏せになった状態でバタバタ人形が暴れていた……。
「デ、デス?」
「ぬうっ、体が……。」
バタバタ。
ぬいぐるみが暴れていてちょっとホラーだったけど、うまく動けないのかな。デスを抱き起す。
「顔まで動いているよ。」
デスの顔がイライラした感情が読み取れるような表情をしていた。
「なんかちょっとリアルで怖いかも。」
「くっ。」
座らせてみると、バタッと倒れて、また暴れ出す。
「デス、大丈夫?」
「こ、この体、柔らかくて動きづらいぞ!」
「え?」
「軟体動物になったような気分だ。」
バタバタ!
「ぬいぐるみは基本中身は綿とかビーズとかだよね。だからなの?」
ちょっと私も焦ってきた。
大丈夫だろうか?
「元に戻せっ。」
「……。」
「どうしたっ。」
「どうやって元に戻すの?」
「……。」
「……。」
事態を悟ったデスの呪いの声が響き渡った。
「おのれえええええっ!」
バタバタバタ。
脱力してがっくりと両手をついてしまった。
デス、ごめんなさい。私が余計なことをしたせいで。
「デス。これじゃ、実体化の方がマシなんじゃない?」
「骨のない人になるのか。」
バタバタするのを諦めたデスが、ため息をつきながら反論する。
「そんな、いくらなんでもそこまでは神様もしないんじゃない……?」
「そんな自信のなさそうな声で言われてもな。」
「……ごめんね、デス。」
こんなことになっちゃって。
ジワっと涙が出そうになるけど、泣いちゃいけない!
どうしよう。
「神様お願いします。デスを元に戻してあげて。」
床についた両手に頭を乗せて必死で祈った。
私のせいでこんな思いをさせたくない。
「……お願い。デスはもう私の友達なの。こんな仕打ちは望んでいないわ。」
「……。」
「……。」
「……まな、実体化を試してやる。」
「えっ。」
顔を上げると目頭に溜まった涙がこぼれた。慌てて拭ってデスを見る。
「こんな人形を人に見られたら何と言われるか。実体の方がマシかもしれぬ。試してやる。」
「でも。」
「くどいっ!」
「でも!」
「心配するな。いくらなんでも神もそこまで悪魔ではないだろう。」
「……。分かった。もし骨がなかったら、私絶対に神様に文句を言って戻してもらうから。約束するから。」
「……分かっておる。」
カタログを開いて、実体化ポーションを見つける。息を整える。
「……神様、実体化ポーションをお願いします。絶対絶対普通に動けるようにしてください。変な風にしたら、絶対嫌です。お願い、神様。」
カタログをギュッと抱きしめて必死で祈る。
表紙のポイントが減った。
怖い。怖くて、デスの方を見れない。
お願いお願いお願い!
「まな。」
ドキッとする。
恐る恐るデスの方に顔を向ける。
そこには先ほどと変わらないデスの姿があった。
「そんな!」
「まな、違う。ポーション。」
「え?」
「ポーションをかけるんだ。」
バタバタと動いて、ある方に腕を指す。
小瓶に青い液体が入っているポーションらしきものが置いてあった。
「これをかけるの?」
「動けるだけで、ものを食べたりできる体にはなっておらぬのでな。」
「……分かった。」
小瓶を手に取り蓋をあける。
匂いはしない。少し逡巡したが、思い切ってデスに振りかけた。
不思議なことに、中の液体は瓶から出ると同時に細かい粒子のようになって、デスの体や顔をまんべんなく包み込んだ。
瓶の中身を使い切ると脇に置き、両手を合わせて祈った。
粒子が濃い霧のようになり、デスの姿が見えづらい。
「デス?」
霧がデスの体に吸い込まれていくと、そこにはデスが横たわっていた。
「……。」
「デス……。」
デスが片腕を上げる。手首をグリグリと動かす。指を開いたり閉じたりする。
「デス。」
もう片方の腕もあげて、同じように動かす。
「デス、動けている!」
「……。」
「それに! 人の姿になっているわ!」
「……。」
両手を下ろして体を起こした。
白い肌、ツンツンとしたような鋭い目、キリリとした眉。長い黒髪を編み込んで一つにまとめて垂らされた髪。頭部からは二センチほどの赤いツノのようなものが二本突き出ていた。
人形ではなく人と変わらない姿になっていた。
「すごい! デス、戻っているよ!」
感動して思わず神様にお礼を言った。
「元には戻っておらぬな。」
「……そうなの?」
やっぱりどこか不備があったのか。
「子供になっておるではないか。」
どこか諦めたような言い方で、ため息を落としたのだった。
読んでくださってありがとうございます。
もう一話続けて投稿しておりますので、よかったら読んでください。




