ギルトの本拠地、エルドラド
す、すごい。
思わずため息が漏れる。
今遠目にも見える高い建築物の集合体。山のように建築物が連なって、てっぺんには一際目立つステンドグラスのような彩りのお城が立っていた。無機質な作りではなく、植物の緑も豊かに息づいた綺麗な国だった。
そんな山のように大きな国を、また大きな河がぐるりと取り囲んでいて、それは一つの島のようにそして幻想的な佇まいを見せていた。
ここがエルドラド。
ファンタジー色を強く感じる。
エルドラドへは、東と西に正門、北と南に勝手口のような門があり、それぞれに架けられた橋を渡って行き来するようだ。
門はそれぞれ、東の正門、西の正門、北口、南口と呼ばれているようで、ここに初めて入国する際は、どちらかの正門で受付をして、パスを作ってもらうようだ。
北口と南口は守衛さんがいて、パスを掲示するか、身分証明になるものを掲示してパスを作るようになっている。
リベルさんがエルドラドを指しながら話してくれる。
私は証明になるものを持っていないので、金貨一枚を払ってパスを作成することになるらしい。冒険者ギルトで登録ができれば、身分証明になるのでその時金貨が返金されるようだ。
詳しくはおいおい分かってくるだろうからと、説明は簡潔にしてもらった。
あと、金貨を数枚持っていると知って、リベルさんたちは驚いていたけど、深くは追求しないでくれた。
そろそろ底をつくという風に話してあるし。
「僕の家はあの真ん中あたりの階層にあるんだ。各門の周辺はギルトや市場とか、人の行き来が激しい地域になっているよ。」
「すごいです。ワクワクします。」
「がはは。嬉しい反応をしてくれるなあ。俺も好きな国なんだ。」
グレルさんがニカッと歯を見せながら満面の笑みを見せる。
鳥系のお肉を食べた時と同じ顔をしてる。好きなんだなあ。
西の正門に近づくにつれて、あたりも賑やかになってきた。馬車が何台も行き来していて、鎧を身につけた強そうな人達の姿も見える。
「あの人達は?」
「門番?」
「鎧を着ている人達が多く見えるけど、門番さん?」
「そう、それぞれの門に数人は必ずいるよ。門番は、どんな人にも魔物にも対応できるように訓練を受けた人だから、安全なんだ。」
「そっか。エルドラドを前線で守っているんですね。」
「睨みを利かせているとも言うけどね。」
カラカラと笑う。
正門に近づいて行くと、私たちに気づいた門番さんのうち一人が、グレルさんを見て『おう。』と手を挙げた。
グレルさんの知り合いかな?
「よう、お疲れさん。」
グレルさんもニカッと笑いながら手を挙げる。
「まな、あいつに頼みな。速やかにパスしてくれるぜ。」
「え?」
「おいおい、グレル。なんだこの嬢ちゃんは。隠し子か?」
「あほ。滅多なこと言うな。アリィに聞かれたら殺されるわ。」
アリィさん?
「グレルの、奥さんよお。」
オルテシアさんがそっと耳打ちしてくれた。
そっか、奥さん。
「えっ、奥さん?!」
ん? とグレルさんが振り向く。
「えーっ! グレルさん、結婚してたんですか!!」
「おいおい、まさか隠し子じゃなくて愛人か?」
「まな、なぜそこまで驚くんだ!」
「あははは。」
「甲斐性なしに見えるもんねえ。」
リベルさんとオルテシアさんが笑う。
「あっ、ごめんなさい。結婚しているようには見えなかったので。つい。」
「俺はこう見えても愛妻家なんだぞ。」
「愛妻家じゃなくて恐妻家な。」
門番さんも笑う。
「おい! それ以上言うな! マジで殺されるわ。」
グレルさんが眉をしかめる。
「いいから、この嬢ちゃん、まなにパスを作ってやってくれ。身元は保証する。」
グレルさんはやれやれと、この騒ぎを終わらせるべく話題を変える。
「身分証明はないのか。だと金貨一枚かかるが。」
「あ、はい。それでお願いします。」
「そうか、じゃあ、こっちへ来なよ。」
門番さんについて行くと、正門の近くに窓口のような、壁に穴を開けた場所があって、穴の向こう側には女の人が座っていた。
「マル、パスカード頼む。」
「あ、はい。お待ちください。」
マルと呼ばれた女の人は、頷いて、ちょっと厚みのあるトランプカードほどの大きさのカードを手渡した。
「これに触れて。」
門番さんがそう言って私にカードを向ける。
透明なガラスのように綺麗なカードだ。そっと手をカードに乗せてみた。
すると、透明だったカードがみるみる色づいて、緑とピンクの幾何学な模様が浮かび上がった。
「綺麗。」
そのカードを見た窓口の女の人が、にっこり笑って言った。
「うん、合格ですね。これはそのままあなたのパスカードとして使ってください。有効期限は三十日。継続するなら、切れる前に身分証明になるものを作るか、再申請をしてください。」
「合格?」
「ええ。初めてですか?」
頷いて肯定すると、門番さんが説明をしてくれた。
「そのカードは、その人の魔力を詠むんだ。犯罪歴がある奴や、良からぬことを考える奴はカードの中に必ず黒が入るんだ。黒の度合いが多いほど、中には入れない。」
「はあ。」
すごい技術。ビバ魔法。
「この国のギルドの技術なんだ。仕組みは俺にはよくわからんが。今のところ、この国にしか作れないから偽物はないぜ。」
「すごいです。」
「俺はバルザック。バルでいいよ。グレルの友達ならたまには遊んでやるぜ。」
そう言ってバルザック、バルさんは頭をなでなでしてきた。
私、子供って思われている?
撫でられた頭に手を置いて首を傾げていると、またオルテシアさんが耳打ちをしてきた。
「バルはあ、ああ見えてもうひ孫もいるのよお。バルにかかったらあたしらは子供みたいなものなの。気にしなくていいよお。」
ええっ?!
思わず目を見開いてオルテシアさんの顔をガン見した。そしてバルさんを改めて観察する。
グレルさんと同じくらいに見えるんですけど。
もうひ孫がいるって。孫じゃなくてひ孫!
今何歳なんでしょうか。
異世界だから、年の概念も違うのかも。
門を通る許可をいただいたので、みんなで中に入る。
大きな門をくぐると、それはもう綺麗な色合いの街並みにしばし目を奪われた。人ですごく賑わっている。
グレルさんが言っていた通り、本当に多種多様な人種が交わって暮らしている国だった。
そして、初めてお目にかかれました。獣人さん。
獣人のイメージは、猫耳の生えた女の子とかだったけど、服を着た猫さんがそのまま二足歩行しているみたいです。普通に隣の人間さんと話して歩いています。
人間っぽい獣人さんもいて、そちらは半獣って言うそうです。
同じ親族でも獣人が生まれたり半獣が生まれたりしているらしい。不思議だね。
なんか本当に、大きい人から小さい人までいる。
種族のことも勉強しなくちゃ。
本当に異世界だって思わざるを得ないね。
そんな私の様子に、グレルさんたちは暖かい目で見守ってくれていました。
リベルさんは一度家に顔を出すと一足先に家に戻り、グレルさんは門番の仕事の手続きに行った。
オルテシアさんが、おすすめの宿まで案内してくれることになり、一緒に肩を並べて、エルドラドの街並みを歩く。
お城もそうだけど、この街は小さなお店にもさり気なく店先に花が植えられていたり、看板などもイラストが一つ一つ個性的で綺麗だった。
すごくワクワクさせられる作りの街に興奮を覚える。
道の両脇にはステンドグラスのような色合いの街灯が並んでいる。
でもガラスじゃなくて石なんだって。ここには、パワーストーンのような石が豊富にあるのかな。
私たちは、エルドラドの街の中へ入っていった。
読んでいただきありがとうございます。
エルドラドに着きました。ワクワクします。




