後編
「なるほど、つまりこちらの緋央さんと紫逢さん、黄翁さん、桃汪ちゃんは気がつけばここにいたと・・・。
確かに昨日は休みで、お前にはアリバイがない。非常に残念だよ。」
「まさか、とは思っていたよ。」
「そう、こんな普通の人間に僕たちがどうにか出来るけないってね・・・。」
「気がついたら全く知らない場所なんて驚いたよ。」
「まさか4人を同時に誘拐するなんてね。」
「陽菜、警察に行く準備は「だから違うってええぇええ!!」
喚くなうるさい。
陽菜というのは私の友達で、先ほどおかしな電話をかけてきた張本人である。
そして私の発言にのっかってくれたのは紫逢さんと緋央さん。
顔はとっつきにくそうな美形なのに意外とノリがいいらしい。気が合いそうだ、とても生き生きとした笑顔をしていらっしゃる。
「え!?ていうかなんでそんな紫逢と緋央は詩乃とそんな仲良さそうなの?旧知の仲なの?」
「面白かったから乗っかっとこうかなって。」
「なんとなくかな。」
「そんなとこで順応性発揮しなくていいよ!」
相変わらずツッコミに命かけてんのかと思うくらい煩いツッコミだ。
とりあえず進まないので巫山戯るのはやめにする。
「でまぁなんだっけ?ここの4人が逆トリしてきたって?その事、納得してるの?」
「昨日のうちに説明して納得してもらってるよ。」
自信満々に言ってるが、お前自分が騙されているとは思わんのか?
「あの・・・」
おずおずと話しかけてきたのは、桃汪ちゃん。
4人の中での唯一の女子。
ハニーブラウンの髪に蜂蜜色の瞳、控えめな可愛さのある女の子だ。
「ん?なに?」
「その・・・信じてもらえないかもしれないけど、本当のことなんです。」
「・・・・はぁ、いいよ。信じるから。」
こんな可愛い子に裾を握られ上目遣いで見られて、頷かない人がいたら見てみたいね!
まぁ口先だけで、心底信じるかって言ったらそうじゃないんだけど。
まぁ、こいつが変な事件に巻き込まれたり、私に実害がないならそこの真偽はどうでもいい。
ほっと息をついた桃汪ちゃんには悪いけど、そこまで人はよくないんだ。ごめんね。
「その、でさ・・・これからなんだけど。」
ここまで巻き込んでおいてなおも言いづらそうな陽菜に視線を戻す。
あからさまにため息をつけば、陽菜の肩がびくりと動いた。
「わかってるよ、手伝って欲しいんでしょ?」
「うっ・・・でも、迷惑じゃない?」
「何を今更。それに、迷惑だと思うんなら電話の時点で無視してるから。」
「うぅ、詩乃~。」
「はいはい。」
私抱きつかれるのあんまり好きじゃないんだってば。
と思いつつも空気を読んで抱きついてきた陽菜を抱きとめる。
面倒になりそうだな、とちらりと4人組を見た。
とりあえず、桃汪ちゃんが羨ましそうに見ていたのは見ないふりをした。
「まぁとりあえずは自己紹介かな、私は透野 詩乃。程々によろしくね。」
「程々って・・・まぁいいわ。わたしは紫逢 響希よ、よろしくね?詩乃ちゃん。」
ほぼ白に近い薄紫のハーフアップ、紫がかった赤い瞳の美形はオネエだった。
切れ長の目に薄いけど形の良い唇・・・とっつきにくそうな美形な分口を開けば残念だねってよく言われません?
「僕は緋央 時也、よろしく。」
深い緋色の髪に同色の瞳の美少年。
生意気そうな顔してるから先輩とかには好かれなさそうだね。
「黄翁 正貴・・・。」
金髪ではなく、黄色い髪に赤みがかった黄色の目は眠そうだ。
どんなにやる気あってもやる気あんのかって言われそうだね。
美形だから言われないか・・・。
「桃汪 茉莉です!よろしくお願いします、詩乃さん。」
良い子だ。
なんかそのまっすぐな目で見られるとこう、罪悪感が出てくるね!
なんにも悪いことしてないけど!
「ちなみに紫逢は吸血鬼で緋央は鬼、黄翁は夢魔だから!」
「・・・・はい?」
そんなファンタジーな世界なんだね。
「と、桃汪ちゃんは?」
なんか恐る恐る聞くと、とても可愛らしい笑顔を向けてきた。
その笑顔やめて、自分の汚さが浮き彫りになるからやめて!
「人間です!」
うん、ちょっと安心した。
まぁ、彼らが人外であることや逆トリに関して心底信じたわけじゃないけどね。
桃汪ちゃんの頭を笑顔でなでてる私を、紫逢さんが面白そうに微笑んでみていたのは知らないふりをした。
完結です。
気が向いたら続き書くかもです。
とりあえず乙ゲーから逆トリってのが書きたかったんです。
ちなみに『プリズム』の説明
乙女ゲーム プリズム。
主人公『桃汪 茉莉』(名前変更可能)が入学するところから始まる。
世界観は現実世界と大して変わらないが、吸血鬼や夢魔といった人外が多々混じった世界。
高校も普通の公立高校という背景や世界観は普通なのにそこに紛れるようにして存在している妖怪やモンスターがいるということで、なんか新しいようなそうでもないような設定が人気。
ちなみに攻略対象は全員ヤンデレという死亡フラグ満載な、主人公が好きじゃなさそうないらない設定まである。
あと桃汪ちゃんが主人公と陽菜と抱き合ってるのを羨ましそうに見ていたのは、そこまで親しい友人がいなかったから羨ましいなぁ・・・的なやつで、百合的なあれではないです。