目的
お待たせしましたー。
投稿再開します!
辿り着いたのは職員寮。
案内を頼んだビビとルルチェはその中の1つのドアの前で立ち止まった。
「ここがそうです」
「人の気配ないねぇ~」
ビビがドアの前で首を捻る。確かに。俺が前を通った時も気配は感じなかった。
さて…どんなカラクリが…
「ちょちょいのちょーいっと」
パチン、という乾いた音が響く。見ればビビが鍵穴の前でクルクルと指先を回していた。お前…鍵開けの魔法…。
「そんな目で見ないでよー。どーせ開けるつもりだったでしょ?」
「そうだけどなぁ」
一応心構えというものがあったわけだが、まぁいいか。開けたものは開けちまったわけだし。お邪魔しまーす、と。
キィと音を立ててドアが開く。中はそう広くない1LDKみたいだな。家具は置かれているが…なんとうか。
「使ってないですね、コレ」
テコテコとルルチェはソファーに近づくとクンクンと匂いを嗅ぐ。子供の姿だからまだいいが…女性の部屋でそういうのは止めなさいというべきか…。
「先生ってここで暮らしてるわけじゃないの?あのエルフの先生何処いったんだろー訓練場の方行っちゃったかな?」
2人にはこの学園内でドッペルゲンガーが見つかったこと。他の被害者がいないか探していること。学園内の全員を訓練場に集めていることは伝えてある。
そして…ミリス先生がその長である可能性も。
「訓練場へ行った可能性は…低いな」
「だよねー」
「フンフン…こっち匂いが濃いです」
ひくひくと鼻を動かしながらルルチェが部屋の隅へと進む。そこには大きなクローゼットがある。……うむ。
「ビビ。調べてくれ」
「ええーっなんでアタシ?!」
「女性の部屋のクローゼットなんて勝手に開けていいのは勇者だけだ。俺は後ろ指刺される存在にはなりたくない」
「なにソレ?人間ってそんなこと気にするの?」
俺も結構生きてきたけど女性の冷たい目ほどキツイものはあんまりないと思ってる。ので、俺はビビに託す!頼んだ!
「別にいいけどー…ん?あ、コレ結界張ってあるよ。中空洞っぽい。えいっ」
ビビが軽くクローゼットの前で宙返りするとパキンと割れる音がして結界が消えた。流石妖精。鍵穴も結界も得意だからな。主にイタズラ方面で使いまくってるから。
「……いるみたいだな」
「いるっぽいけど…」
「い、いっぱいいるですよ、ね…?」
結界が解ければ、そこはクローゼットに見せかけていた扉へと早変わりだ。そこからは1人ではなく、沢山の気配がする。こりゃ面倒なことになってそうだな。
「…ビビとルルチェは誰も入ってこないように見張っててくれるか?」
「えー?!ヤだ、ついてく!こんなおもしろ…じゃない、大変な事態なんでしょ?力になるよ!」
今、面白そうって言いかけたよな?
やっぱ置いていこうかと思った所、ルルチェが俺の袖を掴んだ。見下ろせば、力の宿った丸い瞳がそこにある。
「レイトの仇を取るです。連れてってください」
「……まだ生きてるからな?」
ご主人想いの悪魔らしい。死んでないからな?
仕方ない、とばかりに小さな頭をポンポンと叩く。そしてビビを引っつかむとその頭の上に乗せた。セットにしておこう。その方が守りやすい。
「行くか」
扉は両開きになっており、力をこめれば簡単に開く。薄暗い空間に地下へと続く階段が続いていた。
地下部屋なんかないはずだが…古いが魔術の形跡がある。無断で作ったんだろうな。はぁ…学園の管理の徹底をさせないと駄目だなコリャ。
気前良くビビが光源を作り上げ、その光を先頭に俺達はゆっくりと階段を降りていく。カツンカツンと石を蹴る音とペタンペタンと叩く音が響く中、入ってきた時と同じような扉へと辿り着いた。
さて、どーする。
「おっじゃましまーすっ!」
「おいぃーっ?!」
頭を悩ませる前にビビの馬鹿が勢いよく扉を開けた。なんでさっきから特攻ばっかするんだよ?!
そして案の定襲い掛かってくる水の魔術。ビビを引っつかみルルチェを小脇に抱くとその場を飛んで部屋の中へと転がり込んだ。背後からゴシャという水から聞こえないはずの石を削るような音が聞こえた。
「流石ですね。ホードラーン先生」
静かな声がする。地下空間は巨大な部屋だった。
薄暗い中、均等に青白い光が並べられている。その光は魔術陣から発せられており。その陣の上には直径2メートルほどの水球がユラユラと浮いていた。そしてその水球の中に……まるで胎児のように体を丸くし目を閉ざした人の姿。それが部屋を埋め尽くしている。
そんな異常な光景を背に、杖を向けこちらを睨みつけているエルフの女性。
「…ミリス先生」
彼女はスーツのような服を着ていた。タイトスカートから伸びた足には、この部屋に描かれている魔術陣と同じような光を帯びた紋様がビッシリと描かれている。よく見れば、手の先や首元にも。日中はどうやってか知らないが、隠していたようだ。ああ、やっぱり…
「あなたがドッペルゲンガーの長ですか…」
「気づいたからここに来たのでしょう?」
気づいたというか気づかされたというか。
ビビとルルチェには感謝だ。ビビには若干殺意がわくが、我慢して掴んだままだった彼女をルルチェに投げ渡し腕を放す。地面に降りたルルチェを背に庇い、俺は口を開いた。
「その水の中にいるのは、この学園の生徒達のドッペルゲンガーですか?」
「ええ、そうよ。全員ではないけれど、半数の生徒は作られているわ」
半数。
それでも世界から集められた優秀な魔術師の卵である生徒達だ。その力は下手な軍より厄介かもしれない。
「何が目的なんだ?」
すぐ捕獲なり、消滅なりしたほうがいいんだろう。だが、聞いておきたかった。目的はなんなのか。
生徒を人質にとり世界征服…というのは無理があるし、あのデタラメな魔術陣を使って一気に魔力を一気に吸い上げ生徒と入れ替わりをしなかった謎もある。何故、この空間に他のドッペルゲンガーを留めている?分からない。
「目的…目的ね。なら答えは1つだわ」
向けられていた杖を静かに下ろす。だが、こちらを睨みつける彼女の目はまだギラギラと妖しい光を帯びている。
「生きるためよ」
ハッキリと告げたミリスに俺は意味が分からず目を瞬いた。
その表情を見て彼女は眉を吊り上げる。
理解されない目的に怒りを益々強めたようだ。
「そもそも私の体はドッペルゲンガーではあるけれど、意思はエルフであるミリスのままよ。ここまで辿り着いたことは褒めてあげるけど、退治される謂れは無いわ」
……んん?
どういうことだ?俺みたいに転生したってことか?
いや、ドッペルゲンガーは本人の記憶と能力を完全にコピーする。つまりは…
「ミリス先生。あんたは…わざと妖魔に、身を捧げたのか?」
俺の問いかけに、彼女はまるで出来の悪い生徒が正解を見つけたのを喜ぶかのように綺麗な笑みを浮かべてみせた。
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