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71.アーサー君の逆襲!

はい、なんというかミレイア様と仲良くなるって、こんなに命の危険を感じる事だったんですね。

今頃になって、少々後悔しているアーサー君です。



とりあえず俺は、ミレイア様に片手を握られた状況で、近くにいた騎士さんに伝言をお願いしまして、ミレーユを自室にれんこ…… 送ってもらうようにお願いしました。


「早く、稽古を始めるわよ!」


うん、まずはこのじゃじゃ馬を黙らせてからでないと、ミレーユをモフ……じゃなかった、報告を聞けません。


「わかりました。それでは、稽古を始めましょう」


俺が振り向いてそう言うと、ミレイア様は真剣な表情で頷いて木刀を手に、俺の言葉を待っています。

って、ミレイア様に握られていた腕が、青アザになってるんですけど!


「ああ、今日は木刀は使いませんので、置いてもらっていいですよ」


俺は回復魔法をそっと青アザにかけてから、説明を始めます。



「まず、無属性の魔力を出してもらって、それを……」



俺はそう言って、無属性の魔力を手に練って、昔行っていた練習方法を実際にやってみせました。



「こうして、棒状の無属性の魔力を作ってから、その棒で素振り100本!」



俺が創り出した棒を見て、ミレイア様はポカーンとした顔で、棒と俺の顔を交互に見まていますね。

そういう表情と表現は、もっと成長してからベッd……ゲフンゲフン


いけませんね、ここの所下ネタが続いて、俺も毒されて来たのでしょうか?それとも性徴的成長?



「ほら、ボーっとしてないで、集中!集中!」



俺が大声を出すと、我に返ったようでミレイア様は手のひらに無属性の魔力を集め出しました。


ゆっくりと時間をかけてですが、うっすらと半透明ぐらいの密度で、なんとか棒を作り出したミレイア様は、それを構えようとします。

ですが、体が違う動作をしようとして集中が乱れると、とたんに棒の形が歪になってしまいました。


俺は無言のまま、ミレイア様の魔力に自分の魔力棒をぶつけて、キレイに霧散させました。



「イメージと集中が甘いから、形が崩れるんです!それにそんな魔力量じゃ、小枝に当たっても消えてしまいますよ!」


「仕方ないじゃない!こんな練習初めて見たんだから!それに、魔力の量だってかなり込めてるのよ!」



「それならせめて、この小枝を折れるぐらいの魔力を込めた棒を出して下さい!

さあ! 最初は素振りよりも、目標があった方が、やりやすいですよね?」


「くぅっ……アーサー、見てらっしゃい! 必ずギャフンと言わせてやるんだから!」



そう言って額に汗を浮かべながら棒を出し、眉間にシワを寄せながらミレイア様は、ゆっくりと構えます。


そして振り下ろした棒は、いつものミレイア様の剣速から見れば、蚊が止まりそうなほど遅く、枝は揺れるだけで、残念ながら折れる気配すらありません。

しかし、相当消耗したのか、ミレイア様はそのままの勢いで両膝をついて、ガックリと前のめりに崩れ落ちます。


ダメですよ、練兵場では挫折禁止です!



「まって……もう…… 魔力が、限界に……」



ですが、俺も不肖ダリルさんの弟子です。そんな簡単に休ませるほど、甘くはありません。


「どうしました、ミレイア様? まさか、あれだけの大口を叩いておきながら、もうおしまいですか?」



俺はそう言いながらミレイア様の手をとって、強引に立たせます。


ついでにミレイア様の魔力に同調して、俺の魔力を強制的に流し込みました。

前に一度だけ、母様から魔力譲渡を経験していたんですが、親子などの似た波長なら問題ないのですが、他人の魔力はそうも行きません。


魔力の波長を確かめて、出来るかぎりそれに同調させて流さないと、神経を刺激されて痛みを伴ってしまいます。



「はっ……ぁっ……うぅっ……くっ!」


可能な限り同調させたとしても、ピリピリとした刺激が走るのでしょう。

ミレイア様がきわどい声を出しながら、俺の魔力を受け入れます。



「さあ、これで魔力は問題無いですよね?もう一度!」



顔を上気させながらも、ミレイア様はヨロヨロと動くと、再び魔力を練って無属性の魔力で棒を出現させます。

うん、さっきまでの魔力量より、幾らか多く込められていますね。棒がハッキリ見えるようになりました。


これなら集中を乱さなければ、枝くらいは折れるかもしれませんね。


コツを掴んだのか、ミレイア様の剣速は先程より少し早くなっています。

これなら蚊は止まれないかもしれませんね、ハエは止まるかもしれませんが……


枝をとらえたミレイア様の棒は、パチンという乾いた音を立てて枝をへし折りました。

肩を上下させて荒い呼吸を繰り返しながらも、ミレイア様は棒を振り下ろした状態のまま、こちらに視線を向けてきます。



「ど、どう? やって……みせたわよ?」


そう言って薄く笑みを浮かべ、褒めてと言わんばかりにドヤ顔を見せました。


ほう…… まだ笑うくらいの余裕がありますか。

顔の筋肉を動かす余裕があるなら、剣を振らせましょう。


瞳から、色が消えてからが本番です!




「誰が休んでいいと言いましたか?僕は、『最初に』と言いましたよね?魔力量を維持したまま、続けて素振り100本!」


「……っな!」



ミレイア様は絶望的な表情を浮かべて、棒の維持も忘れて立ち尽くします。


俺はミレイア様の背中に触れながら、ゆっくりと声をかけました。


「今日は初日ですから、魔力の量は気にしなくていいです。俺が随時送り込みますから……


ミレイア様は、素振りに集中して下さいね」



うん…… たぶん俺、すごくいい笑顔してたと思う。



「鬼!悪魔!鬼畜!変態!」


「なんとでも言いなさい!内容の変更を承諾したのは、他ならぬミレイア様なんですからね!」



まあ、ブラック営業職を経験している俺に、口で勝とうなんて、28年とプラス、8年ほど早いですね。

それに、勅旨の内容には、修行に関する業務指示書は、添付されてませんでしたから!


つまりは、現場判断が許されるんですよ!


恨むなら、契約書の瑕疵を恨むのですな!ハッハッハ!



この後、刻限の鐘が鳴るまで、ミレイア様は途中で変な声を上げながら、素振りを続けましたよ。

終わった頃には、ドサリと倒れ込みまして、なんかピクピク、イッてましたが大丈夫でしょうか?



俺は一応、ミレイア様に回復魔法をかけてから、ぐったりしているミレイア様を抱き上げて、お付の女官の人にバトンタッチします。


あっ、本物のお姫様を、お姫様抱っこしたんですね。よく考えると……


女官さんの顔が若干ひきつってましたが、多分気のせいでしょう。

ええ、決して強引に王都へ呼び出しされた事や、色々と面倒事に巻き込んでくれた意趣返しじゃないですよ!


純粋に、ミレイア様の成長を願っての、スパルタですからね!



……ああ、ちょっとだけスッキリした!





さて、部屋に戻ると、どういう訳か俺の部屋の前には、兵士さん×2が立っていまして、不機嫌そうに頬をさすっていました。



「えっと、すみません。どうかしましたか?」


「いえ、アーサー様に言われた通り、あの猫人族の方をこちらにお連れしようとしたのですが、暴れられましてその……」


余談ですが、ダリルさんと一緒に練兵場で暴れまわっているせいか、最近アーサー『君』から『様』に敬称がランクアップしました。


そう言われてよく見れば、おお!4本線のクッキリとした跡が、兵士さんの頬に走っていますね。

これは申し訳ない事をしてしました。そう言えばミレーユって、常識に疎かったり、人見知りな所もありましたね。


「これは、僕の奴隷が粗相をしてしまい、申し訳ありません」



俺はそう言ってから兵士さん達に、今日何回目か分からない回復魔法をかけて傷を消しました。

それから、銀貨を数枚出して握らせると、口止めをお願いします。


「アーサー様、このようなお金は頂けません!」


「いえ、奴隷の不始末は主人の不始末。

それに、兵士を傷つけたとあれば本来は牢獄行きのはず。


それを苦労して、部屋に押し込んでもらったのですから、お礼は当然です」



そう言って兵士達にお礼を言って、見張りを解除してもらい部屋に入ります。

うん、魔力探知にもそれらしい反応は見られませんね。


これで安心して報告を聞けるでしょう。


もし騎士団の人から会話を盗み聞きされて、獲物を横取りされたとあっては、彼らの身が心配ですからね。

ええ、荒ぶるダリルさんによって、騎士団が壊滅させられる恐れがありますからね……



部屋に入ってミレーユの姿を探すと……



よっぽど暴れたんでしょうね。猿轡をかまされ、グルグルと簀巻きにされて、ソファに転がされていました。




うん、暴れ疲れたのか、もうグッタリしていますよ……



ですが、俺が近づくと耳がピクッと反応し、こちらに気づいたようです。


俺はソファの空いたスペースに腰掛けて、猿轡をはずしてやりました。



「うぅ、ひどいニャ!みんなで寄ってたかって頑張ったあたしをふん縛って、いじめるニャ」



なんか、ミレーユがウルウルと涙目になりながらこっちを見て、そんな事をのたまいます。



「そうか、それは辛かったな……」



俺はミレーユの頭をなでてあげて、労をねぎらいます。



「早くこの縄を解いて欲しいニャ!」


「そうだな、ミレーユは頑張ったのに簀巻きはひどいな」


「そうニャ!もっと、まともな扱いを希望するニャ!」


「それで、情報はつかめたのか?」


「ニャ!あたし、頑張ったニャ!」



「おお、そうか!エライぞ!」



俺はくしゃくしゃと、手触りの良いショートカットのミレーユの頭を、ゆっくりとなでてやりました。



「うにゃ~っ、くすぐったいニャ!それより早く、この縄をほどいてほしいニャ!


……って、ご主人様。そのワキワキしている手は……なんなんだニャ?」



「うん?何の事だい?」




……うん、とりあえず報告を聞く前に、禁断症状が出ていた数日分、みっちりとモフり倒しておきました。



いや、縄をほどいた時に、ピクピクしてたのは、気のせいだと思いますよ?



「ひどいニャ…… 猫人権侵害だニャ……」





ああ、今日はいい1日ですね!





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