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43.最後にやらかしました!



はい、よく判りませんがとりあえず危機を脱したアーサー君です。

最近は影の薄いダリルさんって、実は凄い人だったみたいですね。



騎士団の訓練場を後にして、俺とミレイア様は何処だかよくわからない貴賓室みたいな所に移動しまして、いまはお茶してます。

謁見で疲れたのでできれば早く帰して欲しかったんですが、ここでミレイア様の機嫌を損ねると大変なので大人しく同行するのです。


権力者の胸先三寸で運命が決まってしまうような、吹けば飛ぶような弱小貴族の辛い所ですよ。


「それで、改めてさっきはごめんなさいね」



お茶とお菓子をごちそうになりながら、ミレイア様が謝罪してきます。

いや、気にしていませんのでもうやめてください。周囲から向けられる視線が痛いので。


「いえ、ミレイア様に非はありませんので」


俺はそんなことを言いながら、乾いた喉をお茶で潤します。

なんだか、ミレイア様の視線が先ほどまでとは別の意味で肉食系っぽくて、落ち着きませんね。


俺の呼び方が『姫様』から『ミレイア様』に変わったのも、ここまでの道すがら一悶着あったのです。


「あなたは私に勝ったんだから、ミレイアと呼びなさい!」


なんてムチャぶりしてくるんですよ!

すったもんだがあって、とりあえず『様』をつける所で妥協してもらったんですが、ディボあたりに知られたら、また何か言われそうです。


そんな冷や汗ものの冒頭から、ダリルさんのシゴキにつながって、そこから話題は俺のことに飛んできましたよ。



「それにしても貴方の剣術って、変わってるわよね。どこで覚えたの?」


っと、さらっと核心をついてきますね。この肉食系姫様は。


「いえ、生まれは判りませんが、流れの冒険者の方に一時習ったのです」


さすがに前世で剣術やってましたとか言ったら、修道院にでも入れられそうなので、前に考えてあったネタでごまかします。


っと、まあそんな会話がありまして、そろそろ陽も傾いてきたのでお暇しようと切り出します。

なにかこのままだと夕食まで付き合わされそうな気もしますし、そうなったらストレスで倒れちゃうかもしれません。


帰りは宿まで馬車を出してくれるそうですよ。良かった。歩くと結構距離があるんですよね。


そして帰ろうと入ってきた正面玄関まで行きまして、そこで預けていた脇差しなんかを受け取ります。

一応武器のたぐいは、騎士団の面々や許された一部の人達以外はここで預けるのですが……



わざわざ見送りに来てくれたミレイア様でしたが、俺の脇差しを見るなり目の色を変えて喰いついてきました。


「それって、もしかして…… いえ、もしかしなくても、セルウィン領の剣よね!」


近い、近い、距離が近い!


っていうか、両手で襟元をつかむんじゃない!首が締まってますから!


一昔前のヤンキーのカツアゲじゃないんだから、姫様はしたない!



「ひっ、姫様落ち着いて下さい。息が苦しい……」


そう言うと、ようやく俺にチョーク決めているのに気づいたのか、一歩下がってくれました。

ですが口調と目の輝きが、尋常ではありませんよ。


「それよりも、貴方の剣ちょっと見せて頂戴!」


何となくミレイア様に刃物持たせるのは、危険な気もしますがここで断ると後が怖そうなので、渋々手渡します。

一応、お付きの騎士であるアランさんに目線で確認を取りますが、わずかに頷いてくれましたので、問題ないでしょう。


「剃刀並みに切れますので、刃先には触らないで下さいね」


そう言って脇差しを渡してから、数歩下がります。

うん、抜身の刀持った戦闘狂の殺傷圏内には立ちたくないですよ。マジで。


ゆっくりと鯉口を切って刀身を透かすようにミレイア様が、脇差しを眺めています。

なんでしょう?うん、顔がイッちゃってますね。完全に恍惚としてますよ?あれ。



「すごく…… キレイ」


あー、うん。その気持はよく分かる。魔光銀とミスリルのコントラストが、凄い弾き込まれるんですよね。

ミレイア様はじっくりと刀身を眺めてから、周囲を確かめるように脇差しを構えて、そのバランスを確かめてるようです。


そして、ため息をひとつこぼしてから鞘に収めると、俺に返す…… さないで、胸にひっしと抱きしめました。


「アーサー、これ売っ……「ダメです」」



ええ、抱きしめた時点で何となく流れが読めましたので、会話にかぶせて拒否しましたよ。

せっかく苦労して作った愛刀を、権力を盾に取り上げられたらたまりません。


これだけは譲れない一線です。



「え~、いいじゃない。デレクの剣を見て、前から欲しいって思ってたの!

陛下おとうさまは、まだ剣は早いって言って持たせてくれないし、お金なら言い値で払うから!」



うん、こればっかりは陛下の言い分に賛成ですね。

そう言えば武器屋のおっちゃんが、騎士団長に剣を進呈してそこから火がついたんでした。

デレク団長が下げてた剣が、ウチの名産だったとは、いろいろと世の中狭いですね。


おっと、話がそれました。いくら王女様の頼みとはいえ、俺の愛刀は譲れませんよ。


「では、こうしましょう」


俺は、腰から下げていたナイフを外して、ミレイア様に渡します。

それと脇差しを交換するように押し付けて、無事に奪還完了です。


「このナイフは俺の自作で、ミスリル製の一品物です。

領地に戻り次第、ミレイア様の剣を打ってもらうように依頼しますので、それまでこれで我慢していて下さい」



そう言って腰の帯に脇差しを差し込みます。

うん、最近はこの重さがないと、どうも落ち着かないんですよね。


ん?なんか、ミレイア様が俺のナイフと俺の顔を交互に見て、なんだか顔を赤くしています。


何か様子がおかしいので、周囲をよく見れば門番さんは驚きの表情を浮かべ、女官さんはニヤニヤしていますよ?

お付のアランさんは、関心したように何かウンウン頷いてます。



まあ脇差しも取り返したので、良しとしましょう。

早く帰らないと、夕食が遅くなってしまいますからね。

ちょうどいい所に、馬車がやって来ましたので、俺はこれ以上引き止められないように、足早に乗り込みました。


「あっ、アーサー! 待って!」



何かミレイア様が言ってますが、軽く会釈をして御者さんに馬車を出すようにお願いしました。

「こんなナイフでだまされないんだから!」 とか言われて、脇差しを強奪されたらたまりませんからね。




そうしてようやく宿に到着した俺は、先に帰っていた父様と母様に夕食を摂りながら接見後の事を報告しました。

王家に少しでも縁ができたと思えば、今日のミレイア様との邂逅も、損ではないでしょうからね。



「それで、なんとか帰る事になったんですが、そこでも一悶着ありまして……」


俺は、最後に先ほどの玄関前での顛末を聞かせます。

少し長話になって、今は食後のお茶を楽しんでいます。


「……という訳で、僕の刀を奪われたくないので、代わりにナイフを渡して献上する剣を待ってもらったんですが」


「……ブフォ!」


「まあ! アーサー……」


それを聞いた瞬間、父様は盛大にお茶を吹き出し、母様は口に手を当てて目を見開いております。



おんや?もしかして、このパターンは……




父様はいまだにむせておりまして、深い溜息をついてから母様が代わりに説明してくれました。


「あのねぇ、アーサーにはまだ早いかと思って教えてなかったんだけど、女の人にナイフを贈るって事は、求婚の意味があるのよ?」



「……ブフォ!」



今度は俺が、お茶を吹き出す番でした。

ヤバイ、知らぬ事とはいえ盛大にやらかしてしまいました。


しかも、あのディボって小便小僧、確かハワーズ辺境伯の息子で、ミレイア様の婚約者とか言ってませんでしたっけ?


マズいなぁ…… タイマンなら負ける気はしませんが、家を巻き込むのは本気でマズいです。

盛り返してきたとはいえ、吹けば飛ぶような子爵家と辺境伯家では勝負にもなりませんよ!



なんとか、落ち着き対応策を考えていたのですが、思わぬ助け舟が横から出てきました。


「はぁ、あんまり気は乗らないけど、私が何とかするしかないわよね……」



何か物憂げな顔して、母様が深い溜息をこぼしております。



すみません。いつも心配ばっかりかけて……


体調回復(´・ω・`)


週末は野暮用があるので、再会は週明けの予定

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