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氷の神獣 青の獣人  作者: ナツツバキ
外界育ちの獣人
5/5

肉〜

「サナ!そっち行ったぞ!」


今私達は木々の間を縫うようにしてシカを追いかけている。

こっちに向かってきたシカの前に立ちはだかり攻撃を仕掛けた。高く飛び上がり氷で長くした爪を振り下ろす。シカは立ち止まり前足で軽く地面を蹴った。

近くの地面から木が生えて爪をガードした。

そのまま地面に落ちて今度は首を狙う。シカは後ろ足で立ち上がり首を私から遠ざけた。

[レイ!]


レイが後ろから絡みつき後ろに体重をかけてシカを転ばせる。シカは暴れたが即座にレイが首を切ったために痙攣して動かなくなった。ふう、やっと捕まえた。

シカは地面から木を出したように普通のシカではない。オスにもメスにもある角にはツタが絡まり青々としげっている。背中には緑色のふかふかした苔が生えている。属性は草らしくて名前はそのまんまのシカらしい。


「くっ、ああぁぁ」

シカの上から降りたレイが伸びをしながら声を漏らした。

「やっと捕まえた〜」

私はそのまま転がって一息ついた。

朝から今までずっと追いかけていたのだ。もう日が暮れかかってオレンジ色の光が激戦を制した私達を暖かく照らしている。

レイが早速解体しようとシカに手を掛けた。



ジーーー


「?」

レイが訝しげに辺りを見回した。すると何本か離れた木の影に何かが隠れた。

[私が見てくるよ]

体を反転させて木の方を見つめながらレイに声を掛けた。

ソロソロ近づいてから、パッと木の後ろを見た。

[?]

あ、あれ?いない。



[私が見てくるよ]

そういってソロソロと木に近づいていくサナを見送った。まだサナ程足音を消して歩けないから奇襲とかするのはサナの役目だった。いちよう持っていたナイフを構える。

パッとサナが木の後ろを見た。するとサナに負けない速さで何かが反転して来た。つまりこっちから丸見え状態だ。

それは大型犬サイズのドラゴンだった。ビッタリと木にへばりついたその姿はトカゲのようだ。紫色の鱗が日の光でキラリとひかる。サナが再びソロソロと動き出してそれに合わせてドラゴンもソロソロと動く。

ずっとグルグル回っているのを見て、

「サナって天然なのかな。」

と思った。待つのもめんどくさいのでおもむろにドラゴンの側まで歩いて行き後ろから抱きついて木の幹から引っぺがした。


「ギャピッ!!」


「サナ、これだよ。」

ドラゴンを掲げてサナに見せた。

[へー、食べれるかな?ドラゴンってどんな味かな?食べたことないけどヘビみたいな感じかな?]

ドラゴンをさまざまな角度から眺めながらサナが言った言葉に手の中のドラゴンが固まるのがわかった。

「ドラゴンは外界の守護者だよ。食べちゃダメ。」

[はーい。でも子供のドラゴンがこんなところでどうしたんだろう。]

[おじいちゃんが落としちゃったの。]

固まっていたドラゴンがジタバタしながら答えた。パッと離すとコロンと転がる。

[あ、喋れたの。]

ドラゴンは羽をパタパタさせた。

[あのね、おじいちゃんが空飛んでね、私ちっちゃいから落としたのに気がつかなくてね、どうしようって思ってたら血の匂いがしたからね、来たの。]

今さらだけど僕にも耳のおかげで魔獣の言葉がわかる。

[そのおじいちゃんどこ行ったの?]

[知らなーい。ねえねえそのシカ食べていい?]

どうやら自分が迷子だと言うのに全然心配してないらしい。

「ねえ、おじいちゃん探さなくていいの?」

[むぐむぐ、大丈夫〜。森はおじいちゃんのお庭みたいなものだから・・・ごくっ、すーぐみつけてくれるよ!モグモグ。]

[ふーん、っておいこら!なに勝手に食べてんの!]

[ダメ〜?]

キュルンとした目で可愛らしく首を傾げてくる。

[グッ、だ・・だって一日頑張って追いかけて・・・]

「サナ、意地悪するなよ分けて上げてもいいだろ?」

レイが苦笑いしながら言ってくる。むうー、おかしい精神年齢は私の方が勝っているはずなのに・・・レイの方がよっぽど大人だ。

「って、ああっ!!」

レイの驚きとも落胆ともとれる声を聞いて振り返ると・・・もう骨しか残っていないシカがいた。

[ああぁぁ私の肉ぅ〜〜(ガクッ)]

クスン一日頑張ったのに、数分でチビドラゴン(私よりもでかいけど)に食べ尽くされた。

[あー美味しかったーー]

ふーと息を吐きながらドラゴンは骨に寄りかかった。おのれーーー!!

ガアアと吠えて飛びかかろうとすると・・・



バサァバサァ


激しい羽ばたきが聞こえたと思うと強い風圧に飛ばされそうになった。

ズウウン

と何かが着地する重たい音とともに風圧が来なくなった。

見上げると巨大なくすんだ灰色のドラゴンが佇んでいた。デカイ、デカすぎる。三階分くらいあるのでは無いだろうか。いや、建物が無いからわからないけども私からしたらそのくらいある。それ以上かもしれない。

[あー!おじいちゃん!!]

テトテトとチビドラゴンが走っていく。

[ヴァイオレット、どこにいっていたのだ。しんぱいしたのだぞ。]


風圧がなくなったおかげでやっと普通に立てるようになったのでこえをかけた。

[あのー?]

ドラゴンがむっ?と声を上げて周りをキョロキョロする。

[ものすごいプレッシャーを感じるがどこだ?]

ドラゴンがレイを見つけた。レイはドラゴンから発せられるプレッシャーに固まったままだった。

[おぬしか?いやしかし瑠璃オオカミのような匂いがするし、なんか人間っぽいな。]

うーむと考え込んでしまったドラゴンに気付いてもらえるように精一杯飛び跳ねた。

[はーい、はーいこっちです。私でーす。]

[む?馬鹿っぽい喋り方をしているおまえがそうか?]

やっと気付いてもらえた。って言うか馬鹿っぽいってひどくない‼︎?そんな本人に向かって・・・うん、いや、馬鹿なのは否定しないけどさ。いや取り敢えず、

[はいそうです。私です!お宅のお孫さんに私達のご飯を食べられたんですけど!!]

[それは食べさせたおぬしが悪い。]

!!!!。

即答ですか。


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