↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
9/85

9話 上司ガチャ△、職場ガチャ〇

ここで問題です。


今、私の目の前に私と変わらないくらいの女性、ラーゼと呼ばれる人がいます。その人は精神年齢が一見低く、大胆不敵です。あまり責任能力や監督能力がないように見受けられます。では、この人は上司ガチャで当たりなのでしょうか?


5段階評価した場合、答えは2です。


まず一つ目、かなりのあっけらかんとした性格。


「お前、鋼鉄入り安全靴履くのはいいけど、タイル割らないでくれ。しかも傷他にもあるし、絶対さっきの始めてじゃないでしょ」


階段近くの床のタイルは目を凝らすと、複数の何か物を落としたような傷がある。それを中心にタイルがひび割れていた。


「まあ……どうせまたやるし、交換年末でいいっしょ」


「見栄え悪くなるからやめてよ……」


ヒンベルはラーゼさんの態度に呆れていた。多分この反応は、つい最近一度や二度彼女が過失を起こしたことじゃない。長い付き合いでヒンベル側が、諦めた結果があれなのだろう。


二つ目、ヒンベルの言動。


「にしても総統、心変わりした? 昔『絶対お前に部下つけない』って言ってたのに」


「最後の教育、温情だよ」


なんで私が温情で部下にさせられるんですかね。しかも今まで部下を持ったことない人に。


三つ目、これからやる仕事。


「んで、コントーレ各地の伯爵に書類取り次いだ?」


「あ、やってなかったぁ〜! ずっとローレたちとゲームしてた」


ラーゼさんは手を後頭部に当ててアッハッハと笑った。こいつギリ健じゃん。自身の仕事に対してこの態度。


「エマさんどうした?」


「赤城の点検に行ってた」


「あのさぁ……」


これにはヒンベルも苦言をこぼす。


文脈からエマさんというのは、ラーゼさんの上司にあたる人だろう。鬼の居ぬ間に洗濯とはこのこと。


「……豊川、研修済んだら早急に仕事分担して手紙送ってあげて」


ヒンベルは申し訳ないって見て取れるほど、呆れて弱々しい声色で私に頼んだ。


「えぇ……」


明らか、どう考えても新入社員にやることじゃない。


以上のことから上司ガチャは、大ハズレと言わずともハズレであることが証明されました。


そもそも、部下を持つ器じゃない人が、上司である時点でハズレな部類。加えて他人はおろか自分でさえの管理能力がない。終わったな。


加点すべき点としてほうれん草に臭みがなくて良かった。食べ手が試される一杯。




ヒンベルは用事があるからもうどっか行った。ちなみに、ラーゼさんが破壊したタイルは、後で彼女の罰金で直されるらしい。


「さて、あらためてようこそ、リバタール大使館へ!」


「ああ、よろしくお願いします……」


初っ端からラーゼさんのテンションについていけない。これほんとに部下を迎える上司のテンションなの?


「じゃあまず研修からやろうか、手ぇ出して」


言われた通り、右手をラーゼさんが出した右手にかざす。


すると通知が来た。ダウンロードファイル、「外交官用研修データ」「コントーレ大使館館内データ」


ファイルに視点を合わせると「脳内書き込み」というタグが出た。


「『脳内書き込み』押して」


タグを押すとロードが始まった。


すぐに100%に達し、ダウンロード完了。


「豊川さん、ここのポータルハブは何階?」


「え?」


急に質問された。ここに来たばかりで何も知らないはずなのは分かっているだろうに。


たとえ質問の答えを知っていなくても、思考をめぐらす。本当に解を知っていなければ、このプロセスは終わる。「わからない」という答えを出して。


しかし、私が導き出した答えは「地下四階」。突発的に脳が答えを出した。まるで最初から知っているように。でも私はこの建物に地下があることは知らない。


「……地下四階……?」


「正解、じゃあ次元間憲章での外交官に関する行文、第29条は?」


さっきのはまぐれでも答えれた。今回は行文を丸々引用しないと答えられない。


でも、なぜか知ってる。文字が頭に浮かぶようにつらつらと文章が脳内に羅列される。


「……『外交官の身体は、不可侵とする。外交官は、いかなる方法によつても抑留し又は拘禁することができない。接受国は、相応な敬意をもつて外交官を待遇し、かつ、外交官の身体、自由又は尊厳に対するいかなる侵害をも防止するためすべての適当な措置を執らなければならない』……?」


恐る恐る私は答えた。


ラーゼさんは「どう? すごいでしょ?」って言わんばかりのドヤ顔。


「いや知らないって! なんで答えられるの私……!?」


「でしょ? これが『脳内書き込み』、電子データを脳のシナプスに変換してるの」


すご……学生時代、英単語とか語句を苦心して覚えてたのに、これあれば一発でかつ膨大に覚えられる。今までの努力は何だったのか。


「これあれば覚え放題……」


「あ、でも容量に限りがあるから気をつけてね」


つまりオツムが足りないと使いこなせないと。多分ラーゼさんは足りないからあの体たらくなのだろう。


「よぉーし、これで研修終わったし、早速手伝って貰おうか」


早速こき使われるのか……。


まあ、誰にだって下積み時代はある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。