2話
四時間目の終わり際、先生が黒板の端に試験範囲を書き足した。
「中間はここまで。宿題は金曜まで。ノートも見るから、出してないやつは忘れるなよ」
教室のあちこちで、面倒そうな声が上がる。
朝からの妙な視線とは別に、試験前の空気がちゃんとあった。そういう普通の学校の感じに、一瞬だけ意識がそっちへ持っていかれる。
チャイムが鳴って、昼休みになった。
椅子の音が一気に増えて、弁当箱を出す音や包みを開く音が重なる。その中で、水野が分かりやすくこっちを見ていた。
嫌な予感しかしなかった。
案の定、自分の弁当を持ったまま、当然みたいな顔で近くに来る。
「午後もやる気ゼロの顔してるな」
「うるさい」
「いや、今日は別件」
そう言って笑う顔が、もうそうだった。
僕は弁当箱を開けながら、水野を見た。
「……何」
「朝倉さんのこと好きなのか」
箸を持つ手が少し止まった。
でも、返事はすぐ出た。
「違うよ。それはない」
水野はすぐに続ける。
「これからも?」
「ない」
言ってから、自分で少しだけ変な感じがした。考えるより先に否定が出たせいかもしれない。けど、だからといって今さら言い直すことでもなかった。
水野はふうん、とだけ言って、弁当の唐揚げを一つ取った。
「じゃあ何なんだよ。朝倉さんと休日に二人で出かけるとか」
「たまたまだよ」
「もう、それはいいって」
水野はすぐに切った。
「お前が休日に朝倉さんと二人で出掛けるとか、どんな心境の変化だよ」
僕は白飯を一口入れて、少し間を作る。
「……僕、案外付き合いはいいから」
言いながら、自分でも苦しいと思った。
水野もそう思ったらしく、笑いを堪えもせずに言う。
「ふーん。じゃあ朝倉さんが誘ったのか」
そこで、さすがに返事が遅れた。
否定しきるのも変だったし、かといって説明する気もなかった。
「……まあ」
「へえ」
それだけで、水野は十分だったらしい。妙に満足した顔をする。
「そりゃ男子連中がざわつくわけだ」
「大袈裟だよ」
「人気者と休日に二人だぞ。お前が思ってるより、みんなそういうの好きだからな」
そう言われると、否定しきれなかった。
朝の視線の理由が、また別の角度から補強された気がしただけだった。
水野はそこで箸を止めて、少し肩をすくめる。
「まあ、今日はこのくらいでいいや」
「最初からしなくていい」
「でも今週から試験の話も増えるし、宿題だの提出だので、そのうち薄まるだろ。たぶん」
たぶん、がつくあたり、水野らしかった。
それでも、そこで話を切ってくれるのはありがたかった。
そのあとは、英語の宿題がだるいとか、数学の範囲が広すぎるとか、そういう普通の話に戻った。さっきまでの会話が急に軽くなるわけじゃないけど、昼休みとしてはそっちのほうが自然だった。
弁当を食べ終えて、僕は箸をしまった。
「トイレ行ってくる」
「逃げたな」
「違う」
そう返して席を立つ。
教室を出ると、廊下の空気は少しだけ薄かった。中より静かで、そのぶん足音がよく響く。
曲がり角の手前で、前から二人歩いてくるのが見えた。
朝倉と、別のクラスの女子だった。
肩につくくらいの黒髪がすっきり切り揃えられていて、動くたびに内側の色が少しだけ見える。目元ははっきりしているのに、きついというより、先に可愛いと思う顔立ちだった。
朝倉が先に僕に気づく。
その隣の女子も、遅れてこっちを見る。
ただ見るというより、確かめるみたいな目だった。視線が一度止まって、それから顎に指先を添える。品定め、とまではいかなくても、それに近いものはあった。
その横で、朝倉が少し困ったように言った。
「もう、美緒やめなよ」
強い言い方じゃなかった。止めるというより、軽くたしなめる感じだった。
僕は足を止めずに、二人に軽く会釈する。
朝倉も小さく返したのが見えた。
そのまま通り過ぎる。
背中に残ったのは、朝の教室とも、水野の軽口とも少し違う視線だった。
どうやら、見られているのは教室の中だけじゃないらしい。
プロンプトは1万文字くらいありますけど、どうも文字数の出力や描写が少ない気がします。
セッションによって多少生成時の方向性がずれてるんでしょうか。
う~ん中々難しいです。
リライトしても、物凄いよくなるわけでもないのでなかなか難しい。。。




