城南事件帳 2
ああ、またやっちゃった。朝子は己のドジさ加減に呆れた。
ダイヤモンドに目がくらみ、成金になびいたどっかのバカ女と己を重ね合わせた。よりによって、AV会社の男にひっかかるとは・・ 金時計、金のネックレス、金玉、それと光り輝くMIKIMOTO Pearl・・・
しかし、そうやって途方に暮れたってしかたない。モデルとして一旗揚げるんだからっ! そう意気込んで上京したんじゃないのよ。東京で勉強したい、大学に行きたい、という親への涙まじりの熱弁もそのための付け足しにすぎなかったし。絶対に有名になってやる。売れて、売れて、売れた挙句にいい男をゲットするんだから。男のほうからひざまずいてあたしのところに「結婚してくださいっ!」って哀願しにくるのよ。なにがなんでも付加価値のついた高嶺の花になってやる。プロ野球選手、芸能人、医者、会社社長、御曹司、東京の土地持ちの息子などなど。とにかく、あたしゃ、琵琶湖の周りにひっついた生活なんかで一生を終わる気なんてさらさらないんだ、まっぴら御免なんだもん。
上京当時の心境をもう一度頭の中でつとめて反芻することで、自分の判断が間違ってないのだと己を奮い立たせた。それで、吠えた。アダルトビデオなんか出るもんか! まったく、腹立たしい。あたしをなんだと思ってるのよ。地元で毎年観光と市民の親睦も兼ねて開催される美人コンテスト「ミスお市の方」のグランプリ受賞者だよ。それと、その年初めての審査員特別賞も同時受賞の快挙って、取材にも来たんだからね、マスコミ2社が家に。滋賀新聞と琵琶テレビが。と、ケツをまくってはみたものの、またそれまで世話になった事務所に出戻るわけにもいかない。
鬱々とした気分を一時でも吹っ飛ばすには・・ そうだ! ナニしかない、ナニに頼るしかない、何なら国産も外国産も関係ない! と思ったかどうかは本人しか知る由もないが、とにかく、六本木の西部劇にでも出てくるようなショットバー・ホブゴブリンに立ち寄った。
すると、週末で混んでいたが、止まり木に左肘をつき、右手でビールのジョッキを持ったガイジンと目が合った。なんとその男、ニコッと笑うではないか。いいや、景気づけに、スパンッ! とワンチャンしようかな。王貞治しようかな。




