#27 再会
ルイーザは、自分の手の甲を愛しげに撫でることが、多くなった。
ルイーザには、突然現れた手の甲の痣が、夢に現れた美しい男からの贈り物であるように、思えてならない。
「あれは、夢ではなかったかもしれない………」
ルイーザは、夢見るように呟いた。
今日は、天気が良くて、暖かい。
先ほど、グリッティのピアノ教室に通っている女の子が訪ねて来て、拙いながらも、ピアノを弾く音が聞こえる。
エドナよりも幼い女の子だった。
でも、その年の頃のエドナは、もっと上手に弾いていた。
やはり、才能なのだろうか———と、ルイーザは思った。
グリッティの関心を得ることは、もう諦めた。
バーナードからの愛情も、もう得ることはないだろう。
ニコラス学園には、もう行かない。
ゴシップクラブの、あの面々とは、もう二度と会いたくない。
ルイーザに今ある希望は、ジャックだけだった。
ノーラの企てを阻止し、ジャックを守ることだけが全てで、それが出来るのは自分だけだと、ルイーザは思っている。
きっと大丈夫。
必ず成功する。
不思議と、そう思うことが出来て、心が穏やかなのは、あの夢のお陰だ。
今すぐに何かが出来るという訳でもないのに、大丈夫だと、成功すると、思うことが出来た。
「チャンスは、きっと来る。そうよね?」
ルイーザは、手の甲にある痣を、愛しげに撫でた。
<コツンッ!>
窓に小石が当たる音がした。
「………?」
不思議に思い、窓の外を窺い見る。
「———‼」
ルイーザは、我が目を疑った。
あの日から一度も会うことは無かった。
誰も見ていないと、存在を否定され続けていた。
名乗り出てくれることはなかった。
警察が探しても見つからなかった。
琥珀色の髪の、あの少年が、ルイーザの部屋の窓の下に居る。
ルイーザを見上げ、手を振り、笑っている。
ルイーザは、急いで窓を開けた。
すると、1羽のカラスが部屋の中に飛び込んで来て、ルイーザを驚かせた。
「きゃあ‼」
思わず、声を上げてしまい、慌てて口を押える。
グリッティに気付かれたら、大変だ。
ルイーザは、声を出さないように、両手で口を押さえ、部屋に飛び込んで来たカラスの姿を探した。
誰にも気付かれず、密かに部屋から追い出さなければならない。
だが、カラスを見つけたルイーザは、追い立てるどころか、愕然としてしまった。
カラスは、ロープを咥えていた。
ロープを咥え、ベッドのヘッドボードの上に止まり、器用にロープを絡ませようとしていた。
ロープの反対側の先は、部屋の外にあって、琥珀色の髪の少年の足元にまで届いている。
まるで、そのロープを使って逃げろと、言っているみたいに。
「………」
ルイーザは、カラスからロープを奪い、ヘッドボードにではなく、ベッドの足に、しっかりとロープを縛り付けた。
ピアノの音は、まだ聞こえている。
今なら、グリッティに気付かれることはないだろう。
ロープがしっかりと固定されていることを、何度も引っ張り確かめてから、ロープを掴んだまま、ルイーザは窓から外に飛び出した。




