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約束と契約  作者: オボロ
27/114

#27 再会


ルイーザは、自分の手の甲を愛しげに撫でることが、多くなった。

ルイーザには、突然現れた手の甲の痣が、夢に現れた美しい男からの贈り物であるように、思えてならない。


「あれは、夢ではなかったかもしれない………」


ルイーザは、夢見るように呟いた。


今日は、天気が良くて、暖かい。

先ほど、グリッティのピアノ教室に通っている女の子が訪ねて来て、つたないながらも、ピアノを弾く音が聞こえる。

エドナよりも幼い女の子だった。

でも、その年の頃のエドナは、もっと上手に弾いていた。

やはり、才能なのだろうか———と、ルイーザは思った。


グリッティの関心を得ることは、もう諦めた。

バーナードからの愛情も、もう得ることはないだろう。

ニコラス学園には、もう行かない。

ゴシップクラブの、あの面々とは、もう二度と会いたくない。


ルイーザに今ある希望は、ジャックだけだった。

ノーラの企てを阻止し、ジャックを守ることだけが全てで、それが出来るのは自分だけだと、ルイーザは思っている。


きっと大丈夫。

必ず成功する。


不思議と、そう思うことが出来て、心が穏やかなのは、あの夢のお陰だ。

今すぐに何かが出来るという訳でもないのに、大丈夫だと、成功すると、思うことが出来た。


「チャンスは、きっと来る。そうよね?」


ルイーザは、手の甲にある痣を、愛しげに撫でた。



<コツンッ!>



窓に小石が当たる音がした。


「………?」


不思議に思い、窓の外を窺い見る。


「———‼」


ルイーザは、我が目を疑った。


あの日から一度も会うことは無かった。

誰も見ていないと、存在を否定され続けていた。

名乗り出てくれることはなかった。

警察が探しても見つからなかった。


琥珀色の髪の、あの少年が、ルイーザの部屋の窓の下に居る。

ルイーザを見上げ、手を振り、笑っている。


ルイーザは、急いで窓を開けた。

すると、1羽のカラスが部屋の中に飛び込んで来て、ルイーザを驚かせた。


「きゃあ‼」


思わず、声を上げてしまい、慌てて口を押える。

グリッティに気付かれたら、大変だ。

ルイーザは、声を出さないように、両手で口を押さえ、部屋に飛び込んで来たカラスの姿を探した。

誰にも気付かれず、密かに部屋から追い出さなければならない。

だが、カラスを見つけたルイーザは、追い立てるどころか、愕然としてしまった。


カラスは、ロープを咥えていた。

ロープを咥え、ベッドのヘッドボードの上に止まり、器用にロープを絡ませようとしていた。

ロープの反対側の先は、部屋の外にあって、琥珀色の髪の少年の足元にまで届いている。

まるで、そのロープを使って逃げろと、言っているみたいに。


「………」


ルイーザは、カラスからロープを奪い、ヘッドボードにではなく、ベッドの足に、しっかりとロープを縛り付けた。

ピアノの音は、まだ聞こえている。

今なら、グリッティに気付かれることはないだろう。

ロープがしっかりと固定されていることを、何度も引っ張り確かめてから、ロープを掴んだまま、ルイーザは窓から外に飛び出した。









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