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量産勇者、自由を掲げよ。  作者: 陶花ゆうの
4 お手をどうぞ、勇者さま
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プロローグ





 彼は――“彼”と呼称するのが正しければ、だが――、首を伸ばして、ゆっくりと写本の頁を捲る彼――これもまた、“彼”と呼称するのが正しければ――に、大きな頭を擦り寄せた。



 ――本当にそうやって進めるの、(めぐ)し子?



 尋ねるような意思の伝達に、彼の愛し子は面倒そうに肩を動かして応じた。



 ――そういうことじゃないよ。()()()()()()()()



 彼は不本意に唸った。

 賛成できないな、という意思表示ではあったが、およそ彼の意思とは無関係に物事が進むのだろうということは了解していた。



 彼がゆっくりと身体を伸ばすと、冬の陽光に、彼の黄金の鱗が光を弾いて眩しく照り映えた。

 反射した光がきらきらとそばの木の幹に映り、彼は我ながらうっとりする。


 愛し子がこの美しさを知ることがないのは可哀想だ、と思う一方で、彼の愛し子がそれ以上の美しさを彼に見ていることも知っている。



 燦々と降る陽光に、鋭利な光を弾く雪化粧の剣山の頂。

 冬に咲く凛とした花の匂いと、鉤爪で抉れば柔らかい、春を待つ黒い土の匂い。



 ――これら全てを、彼の愛し子は異なる側面から見ている。

 見て、理解している。


 何ものも及ばないほどに整然と。



 彼の愛し子は象牙色の写本を捲り、特定の頁で三つの関節がある指を止めた。


 そして、彼ら以外の何ものも知ることの出来ない、しかし彼らにとってはこの上なく明瞭な事実を、淡々と告げた。



 ――ね? そう書かれている。



 分からないな、と彼は唸る。


 彼の愛し子は、竜が笑みと呼ぶ感情を浮かべてみせる。



 ――ほら、こうしてきみらは救われる。






















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