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39話、40話連投ですので、お読みで無い方は39話からお読みください。

※残酷な描写有り


エベルネージュの王侯貴族達は、その立場が失われる事に成って、顔色を無くした。


しかし、ライトンの王族と貴族達の処罰を聞かされると、エベルネージュに攻めて来たのだから当然だと思いながらも、自身たちも此処で逆らったら、殺されてしまうのではないかと怖くなってしまい、不満を口にする事が出来なかった。


リュークが、「我が国の援助が無ければ、エベルネージュ国は、国として機能しないと判断しました。貴方がたの行いの所為で、民は疲弊していますし、隣国からの侵略に対する措置も講じられない現状は看過出来ないと、我が国の国王陛下が判断なさいました。貴方がたの処遇については、宰相である私と、副宰相に委任されました」

そう言って、副宰相であるフィリップの方を見た。それにフィリップも厳粛な雰囲気で頷いた。


「私達の暮らしは、どうなるのだろうか?」


エベルネージュの王が、不安げにリュークに問うて来た。


「現状では、この城からは出て頂きます。直ぐに民の暮らしが出来るとは思えませんので、当面は別荘地に移住して貰います。ですが、身分は無くなるのですから、今までと同じ暮らしは出来ません。レンビィア国の民として、他のエベルネージュの民と同じ様な救済は致しますが、自活して貰う必要が有りますので、農業や温室での薔薇作りの作業など、こちらでお教えする者を手配しますので、皆でそれに慣れていく努力をして頂きたい。それが無理なら、ローゼ領の鉱山が近くにあるので、そちらで働くのも良いでしょう。常に人手不足ですので、喜んでお迎え致します」


リュークが丁寧な対応でこれからの事を告げると、皆は悲壮な顔つきになった。文句を言おうと、何回か口を開こうとする者もいたが、エベルネージュの宰相が、「レンビィア国及びローゼ領のご助力に感謝いたします」とリュークに深く頭を下げた。エベルネージュの民を助けてくれる上に、貴族であった者に直ぐに自活しろと放り出さずに、指導者まで派遣してくれようとするリュークの思いやりが通じた様だった。


他の者達は、不安は有りながらも、急に野ざらしの場所に放られる訳では無いという事は理解出来たようで、宰相と共に頭を下げて、「どうかご助力をお願い致します」と取り縋った。


あまり期待を持たせても、とリュークが釘を刺した。

「重ねて申し上げますが、レンビィア国の一市民となっただけで、身分は王族であった方も平民となります。助力については、皆様の努力次第で、良いようにも悪いようにも転ぶとご理解頂きたい。それから謀反などについては、レンビィア国の法律が適用されますので、くれぐれも妙な考えを起こさないようになさって下さい。こちら側との窓口は、元宰相でいらしたハモンド殿にお願いしたいと思います」


「承りました。皆で、国を守って下さった恩を忘れることなく、自立していく道を模索していきたいと思います。住まいを与えて下さった事、誠に有難く、またご指導賜れる事に深くお礼を申し上げます」


そう答えたエベルネージュの元宰相の目は、本当に感謝の気持ちに溢れていた。他の元貴族であった者達もハモンドを頼りにしている者が多い様で、ハモンドに(なら)った方が良いとの考えから、リュークに逆らわない方が良いと判断した様だった。




♢♦♢

エベルネージュの城を空にして、リュークとフィリップとセフィールとリリアナで城を歩き回った。国力としては当然だが、ローゼ領の領主館の三分の一程度くらいの広さしかない。装飾品は、最近の苦境から売り払ってしまったようで、殆ど価値のあるものは置いて居なかった。


国の広さは、ローゼ領とアーデン領を合わせたくらいはあるのだが、王宮は、アーデン領の領主館よりも少し小さいくらいの質素な造りだった。


「此処は、どう活用して行くのが良いと思う?」


リュークがフィリップに聞くと、フィリップは難しい顔つきになった。


「考えていたよりもずっとエベルネージュの状態が悪いので、此処を治めるのは骨が折れそうですね。ここは、一番此処の民の力になれるローゼ家の分家の方の領として入って頂けたら、国としても安心出来ると思うのですが可能でしょうか?」


完全にお荷物状態の場所を、ローゼ家に任せたいと言うのは気が引けるが、地理的な面で、ランドールは金銭的な事しか助けられない為、統治して行く事が出来るのはローゼ領だけだと判断したのだった。


「国境付近の土地は、アンディの功績も鑑みて、ローゼ領に組み込みたいと宰相として思っているが、ローゼ領の肥大は、ランドール家や王家にも脅威に映るだろうから、分家を切り離して領地を引き渡すというのは良いと思う。リクソール家も分家に褒賞の領地を渡したらどうだろうか?」


最後の方は、セフィールに問い掛けたものだが、セフィールは、「ローゼ領の様に、領地が元々広い訳ではありませんので、リクソール家は分家の者に管理を任せても、主家からの切り離しをする必要は無いと考えています」と分家の派遣は考えていても、リクソール家の管理の元での話だとリュークの提案を跳ね()けた。


リュークは苦笑しながら、「セフィール殿がそう考えておられるのなら良いのだが、セフィール殿が思うよりも、リクソール家に対して、皆が脅威を感じていると思うのだがな」と言った。


「リューク兄様、セフィールに何と言っても無理ですわ。セフィールは分家が出来た事を殊の外喜んでいましたし、大事にしていますので、領地持ちの貴族になった方が良いと思えば考えたでしょうが、此処の状況では、リクソール家の庇護が有った方が良いと考えても無理はありません」


セフィールが素気無(すげな)く断ったのをフォローする様にリリアナが割って入った。


リュークとフィリップも成程と納得して、意外に分家に心を砕くセフィールに、特にフィリップは意外そうな顔を見せた。


それから四人で地図を広げて、国有地とする土地は、領主が今きちんと仕事をしている領を国の所有とすることに落ち着いた。領主を国からの委託の領主代理とし、国に税を治めるという事にした。


他は、こちらが側が助ける必要があるので、経済力のある領が、数年はマイナスを被る形になった。


そしてライトンは、半分がローゼ領で半分がリクソール領となった。もしもまた良からぬ人間が住み着いて、戦に成る事の無い様に盟友関係の二つの領で、牽制しつつライトンの農業事情にも手を入れて、ここも長い目で利益を確保するのと、ライトンの民を助ける必要があった。


ローゼ家とリクソール家は、褒美になるのか微妙な土地を手にしたが、一番欲しかった塩が手に入るので、両家ともそれで納得した。海産物も手に入るのも魅力的ではあった。


ただ助けなくてはいけない場所が多すぎて、一つの家では厳しいので、二家で援助を分散することになった。


リリアナが、ゼファーと伯爵家のパーシヴァル家は、公爵家や侯爵家のような微妙な褒美では気の毒だろうと言うと、リュークとフィリップも何が褒美になるのか考えだした。


「王家はクロフォード家から塩の利権を手に入れたのだから、それ程沿岸部を欲しいとは思わないだろうから、やはり領が消費する分くらいの塩や海産物等が手に入るのが理想だろう。塩の利権だけの方が、土地の管理が出来ないのならば、純粋に喜ぶ褒美となるだろうな」


「ですが、ローゼ領は元々輸入していたから良いとしても、あまり量が多いと国内の塩の値段が暴落します。純粋に金や宝石の類でもいいのではないでしょうか」


リュークとフィリップの攻防が続く。


リリアナはフィリップと、今まであまり関わって来なかったが、今迄のローゼ領が全て貰っても良さそうなところを、大分阻止している姿を見ると、流石エドワードが自分の代わりに送ってきただけの事は有ると、男性には不適当では有るが、才色兼備な人だなぁと感心しつつ、ランドールの人達は、そういう人たちばかりだとしたら、少し怖いと思ってしまった。



そして二人の攻防は結局のところ、両方とも伯爵領であるので、それ程消費量も多くなく、王家の管理が五割なのだから、王家が供給量の調節をすれば値段の操作は出来るとリュークが押し切り、両家とも今の領での消費量と同じだけの塩の利権を渡す事になった。


リュークは、大変だったが、自領だけで決めてしまっては、門下家にも贔屓とも取られかねないので、フィリップが来て色々と競り合ってくれるのは、正直言って助かると、ローゼ領に戻ってからリリアナにこぼした。



♢♦♢


翌日は、全員で立ち会ってライトンの王侯貴族達の処刑を行った。他国家の侵略行為はかなり重い罪なので、連座制が適用されるので、奥方や子供たちまでその対象となってしまう。


刑を執行する側にも、かなりきついものでは有るが、連座制は、その後家族たちが復讐しようと考えて実行されても困るので、苦しくとも必要な処置だった。


女性や子供たちは毒杯を渡したが、長く苦しむのを見ていられず、リリアナがリクソールの軍の者に、楽にさせてあげて欲しいと頼む結果になった。



♢♦♢


大仕事が終わったので、リュークとフィリップは国軍を連れてその日のうちに王都に戻った。宰相と副宰相が同時に王都を離れているので、王都の貴族達が騒ぎ出したりしない様にと、王への報告もあるので、騎馬で帰って行った。


セフィールは、軍の皆を労わりたいと、その夜は慰労会を離れで催した。

リリアナもローゼ領での馴染みの店からデリバリーさせたり、厨房にも良いワインと酒の肴差し入れたりと皆を労った。


「リクソール軍も、流石に連座制の処刑は初めてだったから、辛かったわね」


リリアナが沈痛な面持ちで言うと、セフィールは、だからこそローゼ領の軍では無理だろうと言った。


「国軍が来たが、目的は護衛なのだから、ローゼ領に国から委任されるのが通常だろうが、死刑制度も無い領で、連座制の処刑は完遂出来なかっただろう。だが、連座制も訳もなくある制度ではない。うちの者達も心は痛んだだろうが、その辺りの事については、血で血を洗う争いの時期も有ったから理解しているし、何より苦しませずに死なせてやれる」


「国軍に頼みたいのが本音だけど、仕方がないわよね…」


「死刑制度が無いのは、ローゼ領だけだから、遠い王都からわざわざ死刑執行人を連れて来るという発想自体がまず無いからな。リューク殿は思っても口に出せないだろうから、先にうちに頼んでくれていいと耳打ちしてあった。宰相殿に貸しをつくれたのだから、何を要求しようかと思ったが、エベルネージュだけではなく、ライトンを半分貰えたのは驚いた。土壌改良や品種改良などローゼ領と協力すれば、枯れた土地でもどうにかなるし、塩や海産物が手に入るのを思うと、殆どがローゼ家の手柄なのに随分と厚遇してくれるんで、これ以上要求出来ない」


リリアナも、援軍の後方支援をしただけにしては、リクソール家は貰いすぎだとは思う。だがマイナス部分も背負える家では有るので、ローゼ家だけで背負うのは辛いという理由も多く含んでいるのだろう。

王家は、あまり力を貸さないのに、良いとこ取りの印象だが、実際に税収が増えるのだから、かなり良い事尽くめではある。これは、あまりローゼ家に不満を持たせない為にした措置なので、まあ仕方がないといえる。


ライトンは、小麦は輸入し、造船などにお金をつぎ込んでいたので、平民からの王家への支持はかなり低く、暴力に物を言わせた成り上がりであったので、ローゼ家とリクソール家で共同統治とすれば、ライトンの民の生活は、今迄よりもかなり改善されるだろう。


そういう意味では統治しやすいライトンは、海も手に入るので、エベルネージュの土地を貰うよりもリクソール家としては、利が大きかった。


「アンディ殿はまだエベルネージュにおられるのか?」


「ええ。今は統治者不在の状態だから、混乱が無い様にレイモンドと手分けして軍で警備に当たっているわ。軍も無傷で戦闘を終えたのだから、ひと休みしたいところだろうけど、こういう時は火事場泥棒も出やすいから、軍で安全を確保するために、暫く交代で警備しているの。リクソール軍も出そうかと言ったのだけど、自領軍だけの方が統制が取りやすいからいいと言って来たの」


リリアナが甥の活躍をセフィールに自慢げに話すのが、セフィールは可笑しくて少しだけ口の端が上がった。



その翌日セフィールは、リリアナの護衛を残して、王都に戻る事になった。リリアナはローゼ領の軍の総指揮官を自称しているので、アンディ達が無事に戻るまでは帰れないとセフィールに言ったら、少し呆れた顔を一瞬見せたが、監査室として宰相にエベルネージュとライトンの復興支援としてリリアナをローゼ領に留め置くと報告してくれるらしい。


リリアナは、レティシアにアンディの無事を伝えて貰いたい事と、部下のルイスとマチルダ、そしてゼファーを(ねぎら)って欲しいと言うと、セフィールも、ルイスには戦果の褒賞が何も無かったので、給金を上げる様に申請してやろうと、雨が降りそうなくらい珍しく良い上司の様な事を言ったので、そっと軍のトップの責任者に『天候が悪くなったら、帰り道は急がず安全な道を選んで頂戴』と最後にそっと耳打ちする事になった。


アンディのヒーローの座すら怪しいのに、主人公のレティシアが出ていない状態です。親世代に大分食われた展開になっております。作者は続編だしとすっぱりと諦めておりますが、こちらしかご覧になっていない方からするとレティシアは??となっていないか心配です('◇')ゞ

しかし、話は続きます。

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