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※レティシアが出て来ません。


査察メンバー紹介です。今回はこういう人たちが、監査室でリリアナと一緒に働いているんだなぁ…くらいの感じで見て下さい。査察団導入回です。

リリアナは、自身の直属の部下である、ルイス・レイノルズとマチルダ・パーシヴァルとセフィールの子飼いだと監査室では認識されているゼファー・ミュールズと四人で馬車に揺られていた。



ルイスはレイノルズ伯爵家次男で、年齢は二十五歳と、このメンバーでは一番年若で経験値も浅いが、よく気が利いていて人の感情の機微に敏い為、人を蹴落とすのが日常化している監査室においても、全員と上手く話が出来るという超人的な対人スキルの持ち主だった。


その能力は犯罪捜査などにも遺憾なく発揮されており、非常に重宝がられていた。しかし、人には苦手分野というものがやはりあるものだな、とリリアナ達は思っているのだが、ルイスは、壊滅的に罪人の拷問などの荒業が苦手だった。


これが得意だというのは人としてはどうかと思うが、監査室の人間は、皆が揃って大得意な者達ばかりなので、ルイスは大変異色な存在だった。まあ、かなりお育ちが良いのか、元来の性格か、はたまたそのどちらもなのだろうという感じなのだが、レイノルズ伯爵家はローゼ門下家である為、リリアナに対して非常に敬意のこもった態度で接して来ていた。


二人目のマチルダ・パーシヴァルもローゼ門下家の伯爵夫人なのだが、このマチルダの夫は、セフィールの従弟で、エインズワース伯爵ユアンの弟のセドリックである。二人の間には、一男一女が設けられており、年齢は三十二歳とリリアナよりも五歳下になる。ちなみにセドリックはリリアナと同じ歳だ。


マチルダは、パーシヴァル伯爵家の一人娘で、そこにセドリックが婿入りすることになった。マチルダが十七歳でセドリックが二十二歳の時だった。


政略結婚ではあるが、セドリックの相手をセフィールとリリアナで選びに選らんだだけあって、夫婦関係は、とても良好である。それというのも、マチルダが官吏を目指している事を知ったリリアナが、セドリックに領地経営のノウハウをセフィールに叩きこませてから結婚させ、更に、跡取りを産んでから官吏試験に見事合格した、リリアナに続く女性二人目の官吏だった。マチルダは有能な夫に領地を預けられるので、心置きなく仕事が出来るし、セドリックも入り婿の立場で、嫁に横から口を出されるのを嫌う性格であったので、お互いの利害が見事に一致していた。そしてまた官吏になってから数年後に娘も誕生している。


パーシヴァル伯爵家は、リクソール家の縁続きの家なので、親族家として付き合っている希少な家でもあった。



最後にゼファー・ミュールズは、中立派のマクドウェル伯爵の弟で、既に分家の子爵位を譲り受けている。年齢は三十歳で既婚者なのだが、性癖が両刀という、男女どちらでも美しければいいというタイプで、セフィールのことをそういう意味でも慕っているのだが、セフィールは勿論相手にはしていないが、仕事上では有能で自分に忠実なゼファーを便利に使っていて、リリアナに敵意をむける訳でもないので、割合、良い部下だとセフィールには思われていた。


リリアナは、セフィールの言うことに忠実なゼファーの事は、セフィールのスパイか、やや敵よりかもしれないという認識でいる。今回の随行もセフィールの指示でついているので、ゼファーには要注意だとみていた。


王都から査察官四人と、護衛官十人の編成で、王都からローゼ領までの道のりを五日掛けて向かっている。リリアナは、もうリクソール家の人間なので、帰郷ではなく旅行で家族で数年前に来たきりだったが、ローゼ家の領主館の人達は、リリアナ達を客としてではなく仕えるべき主一家として接して来る為、その時は受け入れたが、今回は査察団として行くので気を付けて欲しいと、公爵夫人であるローレンシアに頼んでいた。


ルイスとマチルダはローゼ門下家なので、その辺りは癒着を指摘して来ないだろうが、ゼファーは中立派でセフィール寄りの部下である為、少しでも弱味になるような事は避けたかったので、リリアナは出来るだけローゼ家と距離を置きたいと考えていた。


ゼファーとは、今回は敵対関係ぎみだが、普段は領が隣接しているマクドウェル家の親族になる為、物流関係などでも多くの協定を結んでいる関係上、家としては親しい付き合いをしている。ゼファー本人は、リリアナに対して心の中でどう思っているかは別として、リクソール侯爵夫人としては、とても丁寧に接してくれているのだが、いまいち得体がしれない印象をリリアナ自身が彼に対して拭えない為、二人の会話はどうしても上滑りなものになってしまっていた。


リリアナとゼファーが二人きりでは、少々気まずい空気が流れるところだが、ルイスが聞き心地の良い中性的な声で、物珍しいものを見つけては話題を振って来てくれるお陰で、会話は途切れる事もなく、馬車の中の空気もだいぶ軽やかなものになった。


マチルダなどは、領地とその付近を通っているので、そこの地域の見どころや領主貴族の事情にも詳しく、皆は、普段ならば入手出来ない情報に、深く聞き入ってしまった。ゼファーは、流石にあのセフィールに気に入られる人材だけあって、話を引き出すのがルイスとは別の意味で上手いので、絶妙な相槌や、間の良い質問に、マチルダも口がいつもよりも格段に軽くなった。


そうして会話も弾みだし、その地域の特産品などの説明も受けながら、半分旅行のような雰囲気になった。


安全性が保たれた宿に四泊ほどして、ローゼ領に入る頃には、四人で意外と仲が良くなって来たのでは?と感じるほどだった。ルイスはきっとこういう長い出張などには、これからもかなりも重宝されることになるだろう。


♢♦♢


ローゼ領の領主館に着くと、初めてくるリリアナ以外の人員は皆が驚嘆の声をあげた。


「リリアナ様、凄く壮大なお城ですね!」


真っ先にルイスがリリアナに目をキラキラさせて楽しそうに問いかけてきた。


「そうね。隣国との国境を塞ぐように造られているから、とても大きいのよね」


リリアナから見ても高い城壁に囲まれた領主館は、どう控えめに言っても城としか言いようがないので、やや苦笑しながら、ご先祖様が隣国と戦争していた事を匂わせた。


皆で城に入ると、公爵夫人であるローレンシアと、次期公爵であるアンディと多くの使用人達が、監査室一行を出迎えてくれた。


とても丁寧な出迎えに皆が恐縮してしまうが、リリアナだけは、楚々とした美しい公爵夫人と、それに並ぶ堂々とした嫡子のアンディの様子に、実家とはいえ、流石に筆頭を争う公爵家は違うと、他人事の様に唯々感心してしまった。



そうして皆それぞれ客室に案内され、長旅の疲れもあって、一時の休息をとる事になった。


査察に入る場合、本来は宿に泊まりたいところだが、内部を見ることによって得られる情報もあるので、あえて領主貴族の館に泊まって接待を受けることしている。


今回はリリアナの実家でもあるローゼ領なので、あまり本来の意義は果たせないが、リリアナとしては、懐かしい場所でくつろげる嬉しさもあるし、ほかの者達もローゼ公爵家の領主館に興味津々なので、皆が少し浮かれぎみな部分があった。


しかも期待を裏切らない大きな城の中は、絢爛で華麗でかつ趣味が良く、掃除が隅々まで行き届いた広くて過ごしやすい客室に案内された。


客室には飲み物や軽食が既にリビングルームのテーブルに置かれ、寝室にはリネン類や、シルクのバスローブまで整えられており、案内の執事からは「ご入用の物がございましたら、使用人にお声がけ下さい」と、かなり賓客な扱いで、普段動じないゼファーでさえ、公爵家の格の違いに目を瞠った程だった。


それに何よりも、部屋まで案内されるまでの間に飾られていた『ローゼの薔薇』の数の多さと美しさが、流石にローゼ公爵家の館だと思わずにはいられなかった。そのくらい王都では『ローゼの薔薇』は、高級で貴重なものと思われていた。

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