プロローグ
フォースシーズン開始しました! 再び兄妹たちの活躍を見守っていただけると嬉しいです。
暦の上では秋を迎えても、夏の残暑は長かった。それがようやくマシに思えてきたところで、吹く風は冷たく乾いたものになり、秋を感じる間もなく冬の気配が忍び寄ってくる。
そんな折、高校二年の僕は修学旅行を間近に控えていた。
みんなと同じ制服を着て遠出する最後の修学旅行だ。小学校の時から数えてかれこれ三回目の修学旅行になるけれど、僕に限らず周囲もどこか浮き足立っているようだった。
行き先は沖縄で三泊四日。
日常で経験しない土地の自然や文化を見学するという意味では、定番の京都と比較しても遜色ないだろう。
というか、僕個人が行ってみたいと憧れる土地では圧倒的に沖縄に軍配があがる。
沖縄の美しい海、現地の郷土料理、賑わう国際通り、水族館……そして戦争の傷跡。
楽しみ、学び、思い出にしたいと思う。
…………ところで、僕が普段行動を共にしているのは、お恥ずかしい話、歳下の子たちが多く、一緒に修学旅行へ行けないことを残念に思っている。
「残念というよりも、あなたは後ろめたく思っているんでしょう。大丈夫ですよ。私たちも来年は行くんですから。帰ってきたら楽しい土産話を聞かせてくださいね。可愛い後輩とのお約束ですよ」
一年後輩の雲居香純ちゃんは見透かしたようなことを言って微笑んだ。ここ最近、彼女の雰囲気がさらに柔らかくなったように思う。彼女の苦しみが和らぐのは僕も自分のことのように嬉しい。
「やっと最近ぼっちを脱出したところなんだから、そんなウジウジしなくて良いでしょ。あ、お土産はたっくさんよろしくねっ。後でメモ書いて渡しとくから、書いたもの全部買ってきてね、絶対だからね」
一つ歳下の妹・寺井優雨は通常運転だ。可愛げもなく、強欲で、使えるものは兄でも使おうとするバイタリティー。腹の立つことも多いけれど、こいつはまあこれで良い。いつでも自分らしく在る優雨は僕の自慢の妹だ。
彼女たちに留守を頼み、僕は幼馴染の葉山咲良たちと沖縄の空へと旅立つのだった。
何事もなく恙なく無事に終えることができれば良いけれど。
僕のこういう時の期待はことごとく裏切られるのがお約束らしい。
美しい思い出になるかはさておき、誰かに語って聞かせれば笑ってもらえるかもしれない。
そういう土産話に。
楽しい物語になるかもしれない。
だから、いつものように語ってみようと思う。
彼女のことを想いながら。




