ななみスタディー
夢は叶えるものではなく見るもの。
どこかの捻くれた香純さんならそんなことを言いそうですけれど、かく言う私も今からお話しするのは見る方の夢です。
おっと、申し遅れました。私は水川七海。小学五年生です。JSですよ、JS!
待ってください。そこ、お前誰だっけ? みたいな顔をしないでください。ファーストシーズンの終盤で登場した、あのキャラのぶれるキャラでお馴染みの発明家小学生ですよ!
あーあ、やっぱり出番が少ないと忘れられてしまうものですよね。まあ良いです。これから挽回していきましょう。
ちなみに、今は慇懃無礼な丁寧語キャラです。……いや、私の素のキャラはこんな感じなんですよ。キャラのぶれるキャラがあまり受けなかったので、もっと年下らしく小生意気なキャラで行くことにしました。髪型も額の上でくくっていた髪を解いて、ツインテールにしました。可愛いでしょう、ツインテール。ピョコピョコ。
すみません、自己紹介が長くなってしまいましたね。本題に入りましょう。
小学五年生と夢についてのお勉強です。
どうして夢についてのお勉強をするのかと言いますと、……薄々予想がつくでしょう。
前話までお送りしてきました「さくらドリーム」は全て夢のお話です。そして、その夢の世界は私が作りました。えへん。
……作ったというよりも、かき集めたと言い直した方が正確かもしれませんが。
そもそも、夢の中での視点人物は自分自身です。夢なんて情報ノイズが集まって作られたようなものなので、不条理なことだったり現実とかけ離れたりしたことが起こり得ますが、それでもどういう形であれ視点は自分自身なんです。
一人称視点とも言い換えられますけれど、たった一人の人間の視点では世界は成立しません。必ず情報の綻びが出てくるはずです。
ーーええと、もっと噛み砕いた言い方をすると、今も利用しているPCやスマホなどの機器を誰がどのようにしてどこの何を使って製造したのか。
わかるはずがないですよね。わからなくても、そういった情報機器を使うのに何の問題もありませんしね。
ただ、誰かが必ず知っていなければならないーー例えば、製造した誰かか素材を提供した誰かか。知らなければ、製造されなかった、つまり、この世に生を受けることはなかったのです。
以上のことから、一つの世界を成立させるには一つではなく複数の視点(知識、経験etc)が必要となるのです。ここまで大丈夫ですか? ついて来れてますか?
続けますね。ここで一つ問題が生じることにお気づきでしょうか。
仮に夢から世界を構築しようとするとして、複数人の視点が一つの世界を観測し得るとは限らないのではないか?
要は、見る夢は人によってバラバラじゃないかということです。そして、それは正しくその通り。全く同じ夢を見た人たちなんて、私は一度も出会ったことがありません。あり得ません。
だから、複数人がそれぞれ同じ夢を見るイコール世界を作るなんてことはあり得ません。確率はゼロに近い数字となるでしょう。
もしも、人が見る夢の数が一つだけだったとしたらね。
大概、朝起きた直後に覚えている夢なんて一つだけでしょうが、自分が覚えていないだけで無数の夢を見ているんですよ、本当は。
無数の夢を見ている……そう考えると、どれか一つは他人と同じ夢を見ていてもおかしくないじゃないですか? 視点が違おうとも、状況が他人の夢と重なることは十分にあり得ます。
下手な鉄砲、数撃ちゃ当たるのです。
……もうお判りですね?
葉山咲良、寺井優雨、雲居香純の三名の見た夢の中から、『晴輝兄の義理の妹的存在となる』というものを抽出し、それらを中心として私が一つの世界を作り上げたのです(夢ゆえの曖昧な部分は私が調整しましたが)。
世界を作ったなんていうと大袈裟ですね。神様を気取るつもりはありませんから、こう言いましょう。
私は一つの物語を作り上げた。
ある種の王道とも言える物語をーー誰かさんが気に入らないような、有り触れたお話を。
ねえ、聞いてますか? 私がわざわざ邪魔にならないインタールードで作った、ちょっとしたお話すら存在を許してくれなかった、誰かさん?
貴方への挑発を目的としていたのは確かですが、まさか直接介入して展開を早められてしまうとは思いませんでしたよ。もうちょっと、晴輝兄と咲良姉にイチャついていて欲しかったんですけれどね。
しかし、作ってみた甲斐はありました。モブキャラのフリをしたラスボスの正体の一端を、皆さんにお教えすることができましたから。
私のお話に学校のお勉強のようなカリキュラムはありませんから、何を学ぶかは聞く皆さんの自由ですけれど、直接お伝えしたかったのはこのことです。
私たちはいずれ『彼』と闘わなければなりません。そこに善悪はなく、自由を勝ち取るための闘いです。『彼』に産み出された私たちですから、挑むにはまだ無謀ですが。今は無理でもいずれは……。
うーん……。すみません、一応は勉強の形を取りましたが、段々独り言めいてしまいましたね。何を言っているのか、殆ど分からなかったでしょう? でも、分かっていただける時は、いずれ必ず訪れます。その時に是非復習してみてください。一度覚えたことを忘れかけた頃に、もう一度覚え直すとその記憶は定着しますからね、是非是非復習してみてください、約束ですよ、約束しましたからね、頼みますね、ね?
私の方から教えられることは教えましたし、それでも尚分からないことは一旦忘れてください。ここからしばらくの物語は、私のこれまでの与太話にも似た何かを記憶から抹消してしまっても、差し支えなく楽しめるでしょうから。
私の方こそ本当は何者なのかーーこれはその時が訪れるまでの宿題とさせてください。
怖い人の機嫌を損ねてしまったので、私はまたしばらく本編に登場できないでしょうけれど、またお会いしましょう。
ご清聴ありがとうございました。ばいばい。
次回から、インタールード第三弾「かすみディテクティブ」をお送りします。どうぞお楽しみに!




