君が臆病で良かった
勇者パーティはアレスの居る壇上を登っていく。
「聖騎士が鬱陶しいですね……。どうしますか?ルイ 。先に彼らを片付けますか?」
「そうだね。レスタちゃんとカイルさんは聖騎士をお願い。その間、魔王は僕が引きつけとくよ」
栗栖川の指示と共に、レスタ、カイルは聖騎士に向かって行く。
「なるほど、俺の相手は貴様がしてくれるのか?」
「うん。よろしくね。アレス君」
栗栖川が手をかざし、ワープホールを生成する。
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彼の「次元操作」には大きく分けて2つの能力がある。
1つは次空間を歪ませ、ワープホールを生成することによる「瞬間移動」。
もう1つは次元を歪ませ、その周囲のもの全てを存在しない次元へ吸い込む「消失」。ただしこれには距離、範囲の制限がある。
しかし、その欠点は前者の「瞬間移動」によりある程度のカバーができる。
自らを「瞬間移動」させ、その先で「消失」を用いれば実質、距離無制限に能力が使える。
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栗栖川の現在位置と繋がるワープホールがアレスの側に生成される。
栗栖川がワープホールの先で「消失」を使えばその時点でアレスを消失させることが出来るが……
「なるほど、「奇妙な能力を使う」というのは貴様か」
生成された瞬時に、アレスはワープホールを躊躇なく切り裂く。
剣による斬撃がワープホールを伝い、栗栖川の頬を掠める。
「……さすがに無理かぁ。いやぁこのまま移動してたら僕は真っ二つにされてたよ。君が臆病で良かった」