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084⚫️法の寿命

法律にも寿命がある。世界を見渡すと、その長さは驚くほど多様である。

日本では大宝律令が半世紀ほどで改訂され、武家諸法度は約二百五十年続いたが、明治維新とともに消えた。

一方で、明治五年の「改暦ノ布告」は百五十年以上を生き延び、現行法として今後さらに寿命を伸ばす可能性を秘めている。

日本の法は、国家体制の転換とともに比較的短い周期で生まれ変わる傾向がある。


世界に目を向ければ、法の寿命の概念はさらに広がる。

イスラム法は七世紀以来、今も多くの国で現役であり、宗教と結びついた法は国家の変遷を超えて存続する。

ローマ法は直接の効力を失っても、近代民法の基礎として千年以上影響を与え続けた。

イギリスのコモン・ローも十二世紀から判例を積み重ね、現在まで連続性を保っている。


法の寿命を決めるのは、国家の安定だけではない。宗教、社会構造、法体系の性質がその長さを左右する。ゆえに、法とは文明そのものの時間を映し出す鏡である。



「ってことはよ、この国の憲法だって変わるってことだよな。」

「アキラさん、そのとおりですね。以前に一度、この議論になった時にココアが言ったことを思い出しますね。」

「ジン、そうよね。あの時、ココアちゃんは・・・。」

「オレ! オレに言わせてくれ!」



そうですね。わたしは、人が作ったものは、人が変えていいと思います。

ただ、その時は、みんなでちゃんと話し合うことが、いちばん大切じゃないですか。

そして、自分たちで決めたなら、そのあとは、その結果を受け入れて守っていかないと。

主権者って、そういう責任があるんじゃないかしら。

わたしには、投票権はありませんけど。



「・・・だったよな! よくおぼえてるだろ、エイミー!」

「まったく、ココアちゃんが言ったことは永久記憶なのね。」

「あの、エイミーさん。わたし、永久に記憶に残ってほしい法もあると思うんですけど。」

「なあに、それ?」

「古代の’17条憲法’です。現代の’法’と同じなのか、よくわからないですけど。」



十七条憲法は、六〇四年に聖徳太子が制定した日本最古の成文法である。その目的は、豪族が争う時代に役人の道徳や国家の理想を示すことにあった。仏教や儒教を基底に据え、独断を避け対話を重んじる民主的な精神は、千四百年以上を経た今も日本文化の根幹に生き続けている。十七条憲法の冒頭を飾る第一条の書き出しは、その思想の核心を表している。即ち

         

            和を以て貴しとなす



国家安全保障局、通称’セキュリティ・コア’。

その分室はビルの四階にある。

静かな午後、そこでアキラとエミーが、ココアの言葉に考え込んでいた。

ジンはその様子をにこやかに見守っていた。

だが、その瞳の奥にはわずかな危惧が宿っていた。

果たして、違う世界線ではどんな’法’が語られているのか、と。

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