010⚫️世界の女性たちよ、立て!
冒険家はなぜ、次々と危険に挑むのか。
美食家はなぜ、最高の味を求め続けるのか。
酒飲みはなぜ、深みにハマるのか。
博打好きはなぜ、全財産を賭けてしまうのか。
そして男はなぜ、次々と浮気をするのか。
これらは別々の行動に見えて、根は同じだ。
ヒトという生き物は、基本的に「いま得ている満足」に長くとどまれない。
特にオトコは、その傾向が顕著に表れる。
手に入れた瞬間に価値が減衰し、
次の刺激を求めて動き出す。
これは道徳や理性の問題ではなく、
生物としての設計思想に近い。
経済学には「イースタリンのパラドックス」という現象がある。
所得が増えても、一定水準を超えると幸福度は頭打ちになる。
国全体の平均所得と幸福度の相関は弱く、
むしろ「他者と比べて自分がどの位置にいるか」が幸福感を左右する。
つまり、絶対的な豊かさよりも、相対的な優位が重要なのだ。
この構造は、男の行動原理にもそのまま当てはまる。
より危険な冒険、より希少な味、より強い酒、より大きな賭け、より新しい相手。
「女房と畳は新しいほどよい」そう豪語する国もあったのだ。
どれも「今とちがう変化」を求める相対的な欲望である。
満足は一時的で、すぐに基準値が上がり、次の刺激を欲する。
幸福の絶対量ではなく、変化量こそが快楽を生むからだ。
もちろん、これは男だけの特性ではない。
だが、課題を孕む現状の社会的役割や進化的背景の影響もあって、
男はより露骨に「飽和しない欲望」を抱え込みやすい。
満足できないことは欠点ではない。
むしろ文明を前に進めてきた原動力でもある。
しかし同時に、破滅へ向かう衝動にもなりうる。
だからこそ!
世界の女性たちよ、立て!
政治をひっぱるのは、’あなたたち’なのだ。
飽和しない欲望に振り回される文明を、
別の軌道へ導けるのは、
’満足の質’を知る者たちである!!
「司令長官、そういう理由で、マリカさんを選んだんですか?」
「むろん、彼女の資質を鑑みてのことだ。いいか、グレッグ大佐。この作戦は極秘だ。しかも、沈着冷静な判断を臨機応変に下さねばならん。適任なのだよ、彼女は。あの操艦技術が、それを証明している。」
銀河連邦テラ・宇宙艦隊司令長官、
山下六十五は、旗艦の一室で静かに語り始めた。




