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第5話 再会

「……そんな、なんで……ここに……」


「やっぱり、彩香や……なんやあなた、死んだんか?」


「…アリサ……なんで…」


 2人はその場で固まったまま、しばらく言葉を交わさず見つめ合った。


「え?…え? し、知り合い?」


 私の言葉を無視しながら2人は目を見開き、見つめ合う。


「あの…猿渡さん、ねえ、ねえねえ、おーい」


 全部無視するじゃん。


 にしても…な、なんだろう……この空気、まるでドラマみたい。


 とか思っていた矢先、天野さん?がいきなり猿渡さんの顔面にパンチを食らわせた。

 

 バシィッ!! 


 と図書館中に、乾いた音が響き渡る。


「痛っ!」


「痛いやろ。あの時の分や、クソアマ!」


 え、えぇ……


 運命の再会みたいな雰囲気だったのに、会っていきなり殴られるって…この2人どう言う関係。


「あ、あの……?」


「誰やあんた?」


「あ、えーっと初めましてライリーです…」


「ライリー?あんたなんや、彩香の今カノ? こいつやめといた方がいいわ」


「い、今カノって……いやいや、そういうのじゃ……うへへ……」


「キショいわ、彩香も含めて」


「ガーン……」


 え……初対面で“気持ち悪い”とか言われるの、地味に傷つくな。どうせ言われるなら“可愛い”の方がよかったのに。


「なんや 私よりこんなガキがええんか?」


「相変わらず頭の中お花畑ね、なんですぐそっちに持ってくのさ」


「あの…お、お2人は・・もしやそう言う」


「「違うから」」


 息ぴったり。


「そうなんですか?」


「こんな奴誰も好きにならないわよ」


「はぁ何言ってるんやか。彼氏いない歴=年齢のピンク頭が、誰にも愛されてないのはお前さんちゃうんか」


「うっさいわね。ライリーはただの案内人よ。歩いてこの街まで来た私のね」


「……歩いてwここまでww」


 鼻で笑いながら明らかに馬鹿にする様な表情を浮かべる。


「クソワロタりますわww 歩いて来れるわけなくて草、頭でお湯沸かせるんとちゃいます」


「お前ごとに嘘ついてどないすんねん」


 ナチュラルに語尾移っとるやん。


「何言ってるんやか。ここは“死者の国”やで? 生きたまま入るなんて、有り得んわ」


「でも現に入ってる、何か文句でも」


「文句?ないわそんなもん、生きとんのならとっとと出ていけや」


「なに…さっきから喧嘩売ってんの」


「今頃気づいたんか、相変わらず頭悪いなぁ」


 やばいこの2人…滅茶苦茶雰囲気悪い。と言うか凄い居心地悪い、はちゃめちゃに帰りたい。


 けどこのまま帰ったら喧嘩しそうだし…喧嘩したら警察の人来て猿渡さんの事バレそうだし、ここは喧嘩しないようにしないと。


「あ、あの…猿渡さんこの人は」


「昔の知り合いよ」


「……酷いなぁ、友達でもなんでもないんや、悲しいな同じ家で何度も寝た仲なのに」


「同じ家!? 何度も寝た!! そそそそそそれってどう言う…」


「学校寮の同室だっただけよ」


「だけ? ほーんだけかいな、あんたにとっては"あの件”はもうなかった事なんやな」


「まだそれ言う? もう謝ったでしょ、それに焼肉だって奢ったじゃない」


「記憶にないな」


「クソが。都合のいいとこだけ忘れてるこの女、それにしても……気づかなかった。あなた、死んでたのね」


「今知ったんか悲しいな、私の葬式にも来てくれんとわ、酷い女やこと。そりゃ人のもん勝手に捨てますわ」


「そう言うわけじゃ・・」


 捨てた?


「え?猿渡さん勝手に人の物捨てたんですか」


「そやで、この阿婆擦れ私のコレクション勝手に捨てたんや、父からもろた標準原色図鑑全集を」


「そ、そんな大切なものを捨てたんですか、なんてひどいことを最低ですよ猿渡さん」


「私じゃないってそれ冤罪よ」


「あんた以外誰が居るんや」


「そうだけどさ……前も言ったじゃん、あんな重い辞書をわざわざ何10冊も持ってゴミ捨て場に行くわけないじゃん」


「あんなの能力使えば簡単やろ」


「だとしても私が持ってく必要性がないじゃない」


「せやな、だとしても私達以外鍵持っとらへんし、カメラに映ってるのあんただけやった、現状証拠的にあんたしかおらんやろ」


「それがわかってるから謝ったじゃん」


「え?じゃあ猿渡さん捨ててないんですよね」


「捨てるわけないじゃない。冤罪だけど私がやったって五月蝿いから仕方なく…」


「仕方なくはぁ、あくまで自分は無罪やと」


「もう何ヶ月も前の話でしょうが、そもそも彼氏紹介してユニバの券も奢って、彼氏さんとの京都旅行も計画して大成功だったじゃん!」


「記憶にな」


「この女ぁぁぁ……!」


 眉間にしわを寄せながら拳が震えるほど握りしめ天野さんを睨みつける。


 やばいやばい…これ喧嘩始まるわ…早く止めるために話題変えないと。


「……あ、あの天野さん。ちょっと話変わるんですけど、今、彩香さんの“両親”を探してて……会ったりしてないですか?」


「はあ?両親?そんなん知るわけないやんこいつの親なんて。とっくにくたばってるんちゃうんか?」


「そうよ、だから探しに来たの」


「なんや死者の国まで来て親探しとか、馬鹿じゃないの?」


「馬鹿ってなによ!!」


 彩香さんが立ち上がり、手にしていた分厚い電話帳をギリギリと握りしめる。


 その表情は・・ヤバい。あの軽く人を殺せそうなほど分厚い電話帳で何をしようとしているかなんて聞かなくてもなんとなくわかる。


「待って待って暴力はダメだよ!」


 慌てて私は能力を使って、手錠を作成すると手首と机の脚に金属の輪をカチリと繋いだ。


「ちょ、なにこれ!?」


「暴力はダメ! ここ、図書館だよ?」


「あなたいい子やね。でも忠告わ。こいつと関わるの、やめておいた方がいいわよ。根が腐るさかい」


「誰が腐ってるってぇぇぇ!!」


「ダメ! 落ち着いて!! そんな辞書で殴ったら天野さん死んじゃうって!」


「うぐ……それもそうね。……平常心、平常心……」


「吸って〜、吐いて〜」


「スゥ〜……ハァ〜……」


「……はははwww その調子でがんばりや、脳筋ゴリラ」


「誰がゴリラだってぇぇぇ!!」


 ピキッと眉間にシワを寄せ、彩香さんは電話帳から手を離すと、今度は机の足を掴んで持ち上げた。


 固定されているはずの机を軽々と持ち上げた。


「は?……え?」


 な、何だこの人。


 固定されてて持ち上がるはずないのに、机を軽々と持ち上げたよ!?


  えっ、ちょっと何それ。


 物理法則どこ行った!?


 能力でも使ったのかな、取り敢えずはちゃめちゃに危ないし…


「えいっ」


 私は慌てて机の分子を分解し、同じ場所に新しい机を再生成した。


「ちょっと、邪魔しないでよ」


「だからダメってだって、ここで騒いだら、役人が来ちゃうかもよ。そしたら、“猿渡さんが死んでない”ってバレる」


「……バレるからってなによ」


「無理やり追い出されるかも。下手すれば——」


「この街の住人になるかもな」


「……そ、それは困る!」


 正気に戻ったのか猿渡さんは一呼吸置き、冷静になろうとした。


「え?なにホンマに、ご両親探しに来たん?」


「……はいはい、マザコンで悪うございました」


「別に責めてるわけやない。可愛らしいなぁ思っただけやさかい」


「……皮肉にしか聞こえないけどね」


「それはあんなの心が汚れてるからや」


「あの……天野さん。この件、誰にも言わないでくれませんか」


「言う気はないわ。けどな“生きた人間”が長くいたら、必ずバレるわ。バレたら、どうなるかは……」


「……忠告、ありがとう。でも私も長居するつもりはないから」


「そう。なら、次に会うときは…死んだときやね。楽しみに待っててやるわ。言うても2週間後くらいやろ?」


「餅でも詰ませろって?」


「確かにそろそろ正月やけど、そこまで言ってへんで」


「あっそ、ライリーもう行くよ」


「え、いいの? まだ見つかってないけど……」


「どうせ見つからないわよ、直感だけどそんな気がするの。……っていうか、飽きた」


 絶対、後者が本音だ。


「とにかく、こんな奴が居ないところに行くから」


 そう言って猿渡さんは、私の手……いや、服の袖を掴むとズルズルと引っ張り始めた。


 しかも出口と逆方向に。


「……方向、間違えてるよ」


「そやで、出口は白パネル踏んでからやで」


 それでも猿渡さんは止まらない。


 この人、きっと“この場から離れたい”だけなんだろうな。


 そんなに天野さんが好きじゃないんだね。まあ拳から始まる再会だしね。


「だからそっち出口じゃないよ」


 猿渡さんの手を強く握りしめると、小さくため息をこぼしながら、白い床に向かって走り出す。

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― 新着の感想 ―
関西人なのでめちゃくちゃ関西弁で脳内再生されました(笑)
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