第23話 スカイガーデン
真っ暗だけど星が見えないこの街には、とても冷たい風が吹いていた。
D-タウンより寒いや。……ジャケット羽織ろ。
「う〜寒い寒い」
「まあ冬だからね、寒いならもう少しあったまる?」
そう言いながら猿渡さんは腕を広げる。
「…………」
「…………」
「…………」
しばらく目を合わせていると猿渡さんの顔は見るからに赤くなり、何も言わずに腕を閉じた。
この人こう言う可愛いところあるよね。前面に出せばいいのに。
「ごめん忘れて」
「あ〜あ、スマホあったら撮ってたのに」
「だからいいって忘れなさいよ、と言うかスマホ持ってなかった? テラがなんとかの話したと思うけど」
「それが…いつの間にか消えてたんですよ」
「は?」
私はカバンやポケットの中をひっくり返す。いつからかわからないけど、私のカバンやポケットに入っていた物が跡形もなく無くなっていた。
「ほら見てくださいチリひとつない、スマホも財布もメモ帳も懐中電灯も拳銃も何もかもない」
「そんなことある?ポケットはともかくバッグの中までないなんて」
「ですよね、もしかしたら管理人さんに没収されたのかも」
「没収?いつそんなタイミングあったのよ、私達ずっと縛られてたし、あいつと5mぐらい距離離れてたじゃない」
「でも管理人がやったとしか思えないし……まぁでもスマホとメモ帳以外なら私の能力で作れるし問題ないか」
そう言いながら私は失った懐中電灯と拳銃を作り出すと猿渡さんが「ちょ」と大きな声で叫びながら慌てる様子で拳銃を隠す様に私を抱きしめた。
突然の大声ではちゃめちゃにびっくりした。
「な、なに!?猿渡さんいきなり、心臓止まるかと思ったよ」
「それは私のセリフよ、何当たり前の様にけ…物騒なもん作ってんのよ、消しなさいそれ」
「いきなりなんなんですか、別にそんな変な物作ってないじゃないですか、よくある一般的な拳銃ですよ」
「あのね、日本には銃刀法があるの、拳銃持ってちゃダメなの」
いやいやいや、そんなバカな。
「え!?じゃあ突然人に襲われた時とかどうするんですか」
「襲われないから」
「うそだ!! 見てくださいよ、あの人と人の距離感」
猿渡さんの言葉が信じきれず私は銃口を人だかりに向ける。
「あ〜!!人に向けないでよそれ!!」
今までに見た事ないぐらい慌てながら拳銃が見えないように両手で包み隠す。
「まだ弾入れてないよ?」
「入ってる入ってないの問題じゃないの、もう消しなさいそれ」
「え、え……」
さっきから何を慌てているのかわからないけど、私は言われるがまま拳銃の分子を別の分子に変化させる。
「ふぅ…」
猿渡さんは両手を離しほっと一息を吐きながら冷や汗を手で拭き取る。
「何をそんなに慌てるんですか」
「だからダメなの拳銃は」
「でも…変ですよ、あんなに人と人の距離が近いのに襲われた時の事を何も考えてないなんて、危険な能力者なんて多いし…
あ、もしかして拳銃以外の別の防衛手段があるんですか、どんな手段なんだろう拳銃よりも便利なものなんて」
「ないわよそんなもん」
「え!?うそ、じゃあ襲われた時どうするんですか、大人しく殺されるんですか、そんなのクマに狩られるシャケじゃん」
「あのね、人はそんな簡単に人を襲わないの」
「…………はい?(゜〜゜)」
「いや、そんな信じられないみたいな表情しないでよ、と言うか何その表情」
「(゜〜゜)」
「あのね私当たり前のこと言ってるだけよ、そんな人は人を襲わないし…」
「(゜〜゜)」
「そもそも拳銃なんて触る機会ないの」
「(゜〜゜)」
「能力だって装置で抑制されて……」
「(゜〜゜)」
「………その顔やめなさい」
「( ✹‿✹ )」
「別の顔ならいいか じゃないの、と言うか怖いわその顔、夢に出てきそうだからやめなさい」
「はーい、でも猿渡さんの話本当なんですか、襲われないなんて」
「うーんまぁ…襲われないは言い過ぎかもだけど、基本は襲わないし襲う必要性がない」
「なんだ…すごい違和感があります」
「私もあなたの街に来た時、同じ気持ちだったわよ、まあとにかく拳銃はダメだからね」
「日本刀は…」
「ダメ」
「ならナイフなら…」
「外はダメだって」
「じゃあスタンガンなら…」
「うーん…どうだろう、外で持ち歩いたらダメ…とかだった気がする」
「じゃあどこで使うんですか、家でスタンガン使う状況あります?」
「な…いね、と言うか誰もスタンガンなんて持ってない」
「拳銃もスタンガンもダメなら、どう自分の身を…」
「そんな機会そうそうないから、落ち着きない。とにかく物騒な物作らないでよ」
「え、えーっと…それならバッドなら問題ないですよね、側から見たら野球少女に…」
「こんな所で野球バッド持ってる奴いるわけないでしょ、とにかく武器とか作らないでね」
「わ、わかりました」
なぜだろう物凄く納得できない、街を見た感じ警察や警備ロボットがすぐに駆けつけれる状況に見えないし、あんなに人がいて、あれ全員が善人のわけがない。
それにこの世界には能力規制法がある、人を殺す様な人間がそんな法律を守るとは思えない、だから能力者であっても一方的に殺されるしかない。
それなのに武器を持っちゃダメならどう防衛するんだろう、大人しく殺されるのを待つの?
「うーん…」
「すっごい納得いってない顔してるわね」
「そりゃ…まあ、でもこれが当たり前…なんですよね」
「ええ」
「納得するしか先に進めないなら、無理矢理にでも納得させますよ」
私を一呼吸おいて周りを見る、少しモヤモヤするけどこの光景が当たり前なんだ、そして記憶を失う前の私がずっと見て、日常にしていた世界。
それを受け入れない限り、私は前に進めない。進むんだ私はいつまでもライリーでいちゃダメだから。




