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第21話 ライリー

「私はこの街を出たいです」


 私は震える声でそう答える、心臓は今までにないぐらい激しく動いてて、今にでも涙が出そう…でも私は…


 外に出たい、外に出て自分を知りたい、じゃないと私は永遠にライリーのままだ


「私は街を出ます、その結果何が起きようと私は…」


 私の発言を止めるように管理人さんが手を上げ、私は思わず口を閉じる。


「プロメテウスの話を知っているかね」


「………え?」


「私は神を信仰してないが、神話はよく見る、物語としての面白さと古代の人間なりの謎への回答

なぜ人間は知恵を持つのか、なぜ悪い人間がいるのか、なぜ国によって言語が違うのか、なぜ星は輝くのか、そう言う疑問への回答

そして現代科学もそう言う謎への回答だ、そう言う点で神話はある意味科学の始祖と言えるだろう」


「え、えーっと」


 な、なんでいきなり神話の話になったんだろう、と言うかあの世を支配してる管理人さんもそう言う神話の人じゃん。


「管理人」


「すまない私には脱線癖がある、プロメテウスは人間への愛で神々のみが持つ火を盗み、人間に火を与え文明と技術を与えた存在だ

そしてその罪として山頂で鎖によって拘束され、永遠に鷲に肝臓をついばまれる罰を受けた」


「そ、そうなんですね」


 そんな話あるんだ、知らなかったけど…なんで今その話を


「この話は罪を恐れず人間に知恵を与えた英雄の物語だと思うかね」


「え、は…はい」


「感じ方は人それぞれじゃないか」


「そうかもしれないが…私はこう思う、プロメテウスは人間に火を与えなければ何不自由なく幸せに暮らせていただろうし、火を与えれば自身は死ぬよりも恐ろしい目に遭うことは理解していた」


「その…すみません、だから英雄の物語なんじゃ…」


「そうだね。だが私はこの物語の本質は死すら恐れない意思、死んででも曲げない信念、恐怖すら乗り越えるほどの野望と意思の物語だと思っている」


「…………」


「…………」


「結論を言え管理人、また話が脱線して長くなるぞ」


「…はぁ…わかった、プロメテウスの話は命をかけてでもやり遂げたいと思える目的の話だと思っている

きっとプロメテウスは人間を恨んだり、この行動に後悔することはなかっただろう、そう言う目的や信念を持つ事は素晴らしい事だと私は思うよ」


「えーっと…つまり」


「考え直すチャンスは2回あった、だがその2回とも君は外に出る道を選んだ、後悔はないな」


「それは…わかりません」


「ほう」


「でも、後悔しないよう私は進むつもりです」


 しばらくの沈黙が流れる、この選択が本当に正しいとは思わない、きっと答えがわかる日はずっと先だ。――あるいは、永遠に来ないかもしれない。


 そもそも外に出れるのかもわからない、下手したら消されるかもしれない…けど、このまま永遠にライリーでいるつもりは無い。


「……そうか……そうか…ライリー、私は君の意見を尊重してもいい」


「え?」


「少々煩雑でおっくうなんだが、君を外に出す事自体は可能だ」


「本当ですか」


「できんの?私はともかくライリーは幽霊でしょ」


「面白い事を言うね、君達は数分前まで空を飛んで街から出ようと考えてたじゃないか」


「それは…その……」


「一か八かというか」


「だろうね、そうだと思っていたさ。まぁ街を出る事自体は可能だよ、クローシスから逃れればの話だがね」


 それは…実質不可能なのでは。


「今回のような事は異例中の異例さ、君達2人の街の外に出る事を認める、だが先ほど言ったように永遠に街への出入りを禁止する」


「……はい」


「街への出入りね……」


「疑問があるかい」


「まぁ…そのここって死者の街でしょ、その街への出入り禁止って…死んだらどうなるの」


「死の先は1つじゃない、天国か地獄か永遠の無か…そう言う無数の中の1つに過ぎない」


「それじゃあこの街の出入り禁止だけど天国にはいけるの」


「そうかもな、だが一つ言える事はこの街には永遠に来る事はできない、ただそれだけだ」


 管理人さんはそう言うと立ち上がり指をパチンと鳴らすと私達を縛っていた糸が消える。


「…糸が」


 若干きつかった糸から解放されて、体を少し伸ばしていると、管理人さんはポケットから小さな箱を取り出した。


「私は言った言わないの押し問答が嫌いでね最終確認をさせてもらう。猿渡彩香 ライリー 君ら2人はこの街から永遠に出入り禁止だ、いいかね」


「はい」


「まぁ私に拒否権ないけど」


「互いに同意したと判断する。ライリー…君は私の管理対象から外れる、ここから先の事は自己責任だ、君に何があろうが私は君を助ける事はない」


「承知の上です」


「はぁ…いいだろう、これでさよならだ」


 そう言うと小さな箱を床に落とした瞬間、目の前の空間が歪んだ、まるで絵の具をかき混ぜたように目の前の景色が狂い、私は立ってられなくなり猿渡さんの手を握る。


「なに…これ……」


「前が」


 あまりの気分の悪さに思わず目を閉じると、さっきまで無音だったのに、クラクションや信号の音、大勢の人が歩く足音に話し声が聞こえ思わず目を開けると…


「え?」


 そこは図書館ではなく、どこかの街だった。


 真っ暗な街を目がチカチカするような光で照らされ、道路を埋め尽くすような人集りや信号を待つ無数の車。


 見たことのないビルが並び、道路のど真ん中には謎の円錐型オブジェクトがあり、初めて嗅ぐ匂いで溢れている、全ての景色が新しく初めての景色、私の街と全然違う。


 これが…外の世界…


「頭痛い…」


「だ、大丈夫ですか猿渡さん、と言うかここって…ここが」


「ん?…ここって……名駅?って…私達外の世界にきたの」


「ここが…外の世界」

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