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第15話 イッツィー・ビッツィー・スパイダー

 陽気な音楽が流れる真っ暗な図書館。はっきり言ってずっと聞いてるせいで頭が痛くなってきた。


 そんな図書館に突然現れた全身包帯巻きの女性は静かにライフルを構えながら、ゆっくりと私の方を見る。


「やあライリー」


「あ、はい、初めまして」


 私の口が勝手に挨拶を吐いた。


 何でだろう、緊張してるのかな、それともいつものくせ。


「い…ってる……場合…じゃ……」


 地面に転がる猿渡さんが、かすれた声を絞る。


 そんな猿渡さんの胸を足で踏みつけながら、クローシスさんは猿渡さんの額に銃口を突きつける。


「ミイラ取りがミイラになるとはよく聞くが、この街でそんなミイラを見るとは思わなかったな」


「あの…どちらかと言ったらクローシスさんの方がミイラじゃ……」


「哀れなものだ」


 あ、無視された。


「猫ですら50階から飛び降りようとはしないぞ、何故かわかるか」


「あし…ど…かしな…さいよ」


「死ぬからだよ」


 その声に温度はない。淡々と何一つ感情を込めずに話してる。


「猫ですら死を体験せずとも危険を知る。

 だと言うのに…お前は危険に気づくことすらできない。猫以下どころか家畜以下だな」


 踏まれながら猿渡さんが、怒りと羞恥の間で震えているのが見える。


 私はその姿に思わず前に出かけて、口を開く。


「あ、あのクローシスさん、その…出来れば猿渡さんを…」

 

 銃口が、私へ向いた。


「ひぃ」


「この街のルールを知ってるか」


「え、えーっと…ど、どの」


「生者はこの地に存在してはいけない、そしてそれと関わらず見つけ次第通報する、それがルールだったはずだが」


「いや…それは…その……」


「理由を聞いておこうか、約34時間も同行し、家に招き入れた。………なぜ通報と言う手段を取らなかった」


 声が、物凄く冷たい。


 めちゃくちゃ怒ってる、と言うかこれ怒るとか怒らないとかの話じゃない、クローシスさんの殺意みたいなものが物凄い。


 蛇に睨まれるカエルのようなってよく言われるけど、まさしくそんな感じがする。


「そ、その…えーっと……」


 私は口を開ける。


 だけど言葉が上手く出てこない。なんて言えばいいんだ。


 脳の奥が凍って、生暖かい舌が動かない。


「これで3回目か」


「な、なにが」


「死ぬのは」


 何の躊躇う様子もなく、引き金が引かれる。


 私は咄嗟に腕で頭を覆い、自分の身を守る。

 

 馬鹿みたいな防御。こんなので助かるわけがない、そんなのは分かってる、でも私の体はそうするしか知らない。


「っく…」


 瞼を強く閉じ真っ暗な視界を見つめる、ダメだと諦めた瞬間。


 ――カン。


 そんな音が聞こえて瞼を開けると、私の目の前に鉄の壁のようなものが出ていた。


「これって…」


 その壁に向かって指を左から右へと振ると壁はゆっくりと消えていく。


 もしかして私、無意識でこの壁を作ったの…凄い私。


 と言うかあの人本当に撃ってきた、威嚇射撃とか外すつもりだったとかじゃない、確実に私の頭を狙ってた。


「……こ、殺す気ですか」


「そのつもりだが、なんだ何か問題でも」


「問題ですよ!!」


「面白い事を言うな、一度の死に何の意味がある、死んでもすぐに出てくるだろうに」


「それは…そうかもですけど、だけど痛いのは嫌だし怖いんです」


「すぐにでも慣れるさ」


 そう言いながら何の躊躇いもなく引き金を引く、私は身を守るために腕を右から左に振るい鉄の壁を作り出し弾丸を止める。


 銃声が何度も童謡の間に刺さって、闇の中で跳ね返る。


「も、もう少し話し合いま…」


「話し合う必要がどこにある、お前は違反者で今踏みつけているコイツは不法入国者だ」


「そうですけど…そうなんですけど……」


 銃声が…止まった?


「ふん!!」


 静寂の代わりに、ピュン と糸が弾けるような音が走った瞬間、鉄の壁を突き破りクローシスさんが飛んできた。


「え!?」


 驚くのも束の間、蹴りが私の腹に直撃。私は床を転がり、机の脚に背中をぶつけて止まる。


「ぐっ……いだ!!」


 息が漏れる。背中が痛い。痛すぎる。


 そんな痛みを堪えながら立ちあがろうと床に手をついた瞬間、蜘蛛の糸が飛んできて、手に貼りついた。


「うわっ……糸……!」


 この糸物凄いくっつく、と言うかこれ本当に糸?とりもちかと思うぐらい、全然取れない。


「ふん!!うーん!!この…全然……」


 コト コト コト と足音が私の前で止まる。


 顔の真横からクローシスさんの回し蹴りが飛んでくる、私は頭を下げて回し蹴りを避けると、左手で木刀を作成しクローシスさんの足に向けて木刀を振う。


 今は回し蹴りをするために変な体勢になってる、その状態で避けれるわけがないし、避けれたとしても確実に体勢を崩す。


 そう…思った矢先、クローシスさんは片足でジャンプした。


「うっそ!!」


 そんな体勢でジャンプできる? 


 いや飛べたとしても30cmも飛べるものなの。と言うかまずい。


 クローシスさんは高く飛んだかと思うとそのまま空中で回転し、踵落としの形で落ちてくる。


「うそうそうそうそ、待って待って待って」


 早くこの糸の分子を…


 いや……なんか見た事ない分子構造してるし、分解するのに時間かかりそう…と言うか分解してる時間なさそうだし…だったら


 私は自分を囲むように鉄の壁を作り出し、自分の身を守る。


 これなら…何の問題も……いや待ってさっきこの壁壊されてなかった……け…


「ふん!!」


 バギ!!


 激しい音と共に壁が破壊された、まるで紙を破くみたいにいとも簡単に


 壁のおかげで少しだけ威力は落ちてるように見える……見えるけど、これぜーったいに痛いやつ!!


「ぐ!!」


 ズドンと頭に強い衝撃が走り、痛みが光みたいに頭の中を駆け巡る。


 そこから体全身に痛みが広がる、特に食いしばった歯が全部割れたかと思うほど口が痛い。


「いっだ…」


 私が痛みに蹲っているのも束の間、糸が飛んできて手と足にくっついて床から離れない。


 無理矢理引き剥がそうとしていると、クローシスさんが背中のライフルを取り出しゆっくりと弾丸をこめはじめた。


 私が動けない事をいいことにゆっくりとこめてる…まずい、まずい、まずい…早く糸を取らないと…けど……


「と、取れない何なのこの糸…」


 弾丸を込め終わるとゆっくりと銃口を上げる。


 早くしないと殺される…でも全然糸が取れない、取るより分子を何とかしたほうが…けどこんなの消すには10秒はかかるし……


 いや…違う 糸を消すから10秒はかかるけど、糸じゃないなら10秒もかからない。


「終わりだ」


「ふん」


 糸に張り付いている床の分子を分解し、体が自由になった瞬間、私は銃身を掴んで銃口を上に跳ね上げた。


 ドンッ!


 弾丸は天井へ。


「あっつ!」


 銃身が熱い。でも関係ない。


 私はクローシスさんの股下を滑り抜ける。


「逃すと思うか」


 振り返りライフルの引き金を引こうとした瞬間


「えいっ」


 私はそのライフルに向かって指を向け、引き金が引かれる瞬間に銃身の中に火薬を生成し、銃を暴発させる。


「ぐっ…」


  暴発し、クローシスの腕が大きく揺れる。


「なるほど…」


「こ、これ倍にして返します」


 爆発で戸惑ってる間に、私は糸の分子をそのまま丸コピし、クローシスの全身へ絡め拘束していく。


 その糸を何重にも重ね、蜘蛛が獲物を包むみたいに、繭ができあがる。


 ここまでしなくてもよかったかな。


「その…しばらく大人しくしててください」


 怖いからもう少し糸を作成して徹底的に拘束し猿渡さんの方に駆け寄る。


「だ、大丈夫ですか猿渡さん」


「うー!!うー!!」


 なんか…ずっと静かだなとは思ってたけど、猿渡さん糸でぐるぐる巻きになってる。ミノムシみたいだ。


「ちょっと待ってて、この糸も何となくわかってきたし、今なら」


 猿渡さんに巻きついている糸の分子を削除し、手を伸ばす。


 ほどけた猿渡さんが咳き込みながら手を握り締めゆっくりと立ち上がる。


「ごほ……ごほ……ありがとう……」


 ふらつく体を支えるため、私は軽く抱きとめた。


「大丈夫ですか」


「いてててて、何なのあいつライリーの知り合い?」


「えーっと……この街の警備隊の最高責任者で管理人さんの次に偉い人」


「え、まずないそれ」


「うん…大分まずい、どうしよう」


「いや、どうしようって言われても」


「と、とりあえず拘束してる内にゆっくりとお話を…」


 ガシ!!


「え?」


「なに…今の音」


 私たちは同時に振り返る。


 私の作った繭の中から、黒い…黒い……何だあれ。刃みたいなものが一本、突き出ていた。


 蜘蛛の脚…にも見えなくはない、とても尖った黒いナイフみたいな脚。


「あれ…あんた作った」


「繭は作ったけど、あんな足は作った覚えは…」


 そう言った瞬間、ピキ、ピキキキ と繭の内側から音を立てて、黒い爪のような足がにじり出る。


「ひぃ!!」


「何あれ」


 一本、また一本まるで獣が孵化するように繭から脚が生え、そのナイフのように鋭い脚が繭を切り裂いていく。


「ヽ(ll゜д゜)ノ」

「∑( ◦д⊙)‼」


「やあ」


 全ての繭が引き裂かれ、そこから背中から6本の蜘蛛の足を生やすクローシスさんが姿を現した。


「うっそ」


「次はどうする、お前も足を6本生やすか、それともここで死ぬか」

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